表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

第一章 第三話 『無能力者』

今日、二回目の投稿。本日はこのくらいにしておこうかなと思います。


 大きな家に囲まれた広場、大きさでいうとサッカーのコート半分くらいだ。

 真ん中に噴水がありその噴水の周りには椅子が東西南北に一つずつ置いてある。


 数人の子供達が楽しそうにかけっこで遊ぶ中、輪に混ざれずに一人で本を読んでいる少年がいる。


 本を読みたいのなら家で読めばいいのに、いちいちここに来て読むという。明らかに遊びに誘われるのを待っているのだろう。なんて可愛い男の子なんだ。


 そんなことよりも、


「どうしたんですか?」


 噴水の周りの椅子に座っている俺を、金色の髪を風に煽られながら上目遣いでこちらを見る美女。身長は俺よりやや小さい。161cmというところだろうか。


 彼女の名前はエクリア。


 先程、路地裏で男に絡まれているところを助けた結果、その恩返しとして俺の手の手当てをしてくれていた。


「いや、美女と二人きりになるという誰もが望む展開が俺の人生に訪れるとは思わなくてな」


 お世辞とも取れる言葉を、少し顔を赤に染めながら顔が合わないように右にいるガキンチョ共を見つつ彼女に伝える。


「その言葉、素直に受け取っておきます。ありがとうございます」


 最初はツンツンしたツンデレかと思っていたが、意外とそんなこともなかった。

 彼女の態度が少し悪かったのは、一緒に同行していた友達と喧嘩してしまったせいだったらしい。


 ショートパンツに黒のタイツを履いていて、上着は白いフードが付いている長袖。

 少々ボロボロではあるがそれさえも色っぽく感じられる。


 とてもスレンダーな体で、よく鍛えられているのがわかる。そして服の上からでもわかる胸囲が実に驚異的である。


「はい、終わりましたよ」


 と地球温暖化すら防げるのではないのかと思う程の壊滅的なギャグを考えている間に、俺の手の治療が終わったようでエクリアが笑いながら俺の手をポンッと叩き立ち上がる。


 そして彼女は「よいしょっ」と呟きながら俺の隣に座ってくる。

 俺は、びっくりして少しばかり距離を置いてしまう。


 エクリアはそんなこと気にせず俺に話しかけてくる。


「ごめんなさい、私が治癒魔法を使えたらね。もっと丁寧ですぐに終わったんだけどね」


 包帯グルグル状態の俺の手を見ながら、エクリアは申し訳なさそうにしている。

 だがそんなことはどうでもよく、俺が気になったのは俺が知らない単語。


「治癒魔法?」


 思わず首を傾けエクリアの方を見つめ聞き返してしまう。

 

 エクリアも不思議そうな顔をして「そうですが?」っと返してくる。


 恐らくこの世界では魔法があるのは当たり前なのだろうが、残念ながら俺のいた世界ではそれは夢のまた夢。


 だが、今魔法を使えることがハッキリと確定したため俺の心は踊り出している。


「悪りぃ、俺のいた国じゃ魔法がないのが当たり前だったからさ。よければ魔法について教えてくれないか?」


 手を合わせて、俺はエクリアに向けて頭を下げる。


「そうなんですね。確かに見たことない服装してるし、かなり独特の文化を持っていたんですね」


 エクリアが少し皮肉まじりに返す。まぁだが魔法について教えてくれるのならこの程度、どうでもいいことだ。


 エクリアが綺麗な人差しを上に向けて、説明のポーズをとる。俺は彼女の一言一句を聞き逃さまいとジーッと見つめていた。


「まず魔法には『七大属性』と呼ばれる七つの属性があります」


 七つもあるのかと少し驚く。


 俺の中では五つの属性、火、水、草、土、雷だけだと思っていたからだ。


「火、水、風、土、雷、氷、光の七つです。そして人々には一人に一つ以上、必ず『適応属性』というものを持っています」


「『適応属性』?」


 自分は小説をたくさん読んでいた方ではないが、この単語を聞いたのは初めてであったため思わず言葉をこぼす。

 エクリアが「はい」と頷きながら答えると説明を続けていった。


「『適応属性』というのはですね。例えでいうと、水の『適応属性』を持っていなければ水の魔法を使うことはできない。 と、いうものです」


 なるほどと言わんばかりに俺は首を上下に揺らす。とてもわかりやすいからである。


 つまり、


「使いたい魔法があったとしても、その魔法の『適応属性』がなければ発動することが出来ず。逆に言えば、自分が持っている『適応属性』の魔法しか使うことはできねぇってことか……」


 元々、細い目をさらに細くして口元に手を当てながら言う。自分でも言ってて、かなり面倒くさいルールである。


「その通りです。さらに言えば、この『適応属性』は生まれた時点で決まるので——」


 まだ話を続けようとするエクリアの話を途中で遮り、先程までとは違い大きく目を開き驚いた顔で返す。


「生まれた時点で?! なんだその運ゲー要素!」


 話を遮られて少し不機嫌そうなエクリアは、こちらをちょっと愛嬌のある怒り顔で見てくる。


 俺は少し視線を逸らし「すまん、すまん」と二回謝り彼女に話を続けてもらうように頼んだ。


「『適応属性』は後々増やすことはできません。生まれた時点で決まった属性しか使えません。誰もが一つ、多い人でも二つ、『適応属性』を持っています。ちなみに治癒属性は光属性の魔法です」


 この話を聞いた後、俺はとあることに気づいた。これはもしやそういうことか、と。

 俺が不敵な笑みを浮かべるのを見てちょっと動揺するエクリア。


 俺は笑いながら呟く。


「なるほどなぁ……」


 これはどう考えても、自分が全ての属性。『七大属性』全ての『適応属性』を持っている展開だと。

 そういうチート並みの能力があっての異世界召喚だからだ。


「なぁ、俺の『適応属性』ってわからないの?」


 恐らくそうくるのではないかと思っていたエクリアは、鼻で笑いながら後ろの噴水から水を少し手にすくった。


「この街、ウォースタウンは『アルクリア王国』の中でも一番発展している街でいろんな国の商人が来るんです」


 水を両手で救いながらこの国やこの街の説明をしてくれる。


 俺が魔法を知らないことから、この国のことも全く知らないことに気が付いたのだろう。

 全く、君のような勘のいいガキは嫌いだよ。


「この噴水の水。『神聖水』と呼ばれる他の国の産物で、この水に両手をかざすと適応属性によって水に変化が起きるのです。さぁ、グレンさんどうぞ両手をかざしてください」


 全く良くできている子だと笑顔でため息をこぼしつつ、俺は彼女がこちらに向けている新聖水の上に両手をかざそうとする。


 一体何が来るのか、俺は水をじっと見つめる。


 すると自分の手が震えているのがわかる。正直自分としては雷の魔法を使いたいため外れるのが怖いのである。

 リセマラなしの一発勝負。神に祈りつつ俺は両手をかざした……



*****************



「どういうことだ……?」


 オレンジ色に輝く夕暮れに当てられながら俺は声をこぼす。

 俺が思っていた複数の結末とは違う結末を迎えたのである。


 俺は目の前にいるエクリアの方に視線を向ける。


 だが、目の前の彼女にも何が起こっているのかはわからない様子だった。頬には汗が流れており口を大きくあけ唖然としていた。


 俺は新聖水に手をかざした。だが、何も起きなかったのだ。


 何度も手をかざしたが、一度も水に反応はない。


「ありえない……こんなこと……動物や獣人達に適応属性が出なかったことなら聞いたことがあるけど、人間が出ないことがあるなんて、誰にでも出るはずなのに……」


 もうすでに答えが出ていた。俺には答えがわかっていたんだ。

 そう適応属性が出るのなんてこの世界では当たり前なのだ。この世界では。


 ならなぜ、自分に適応属性が出ないか。それは、自分がただの人間だからだ。


 勝手に小説と同じようなセオリーがあると思いこみ、何か特別な力を持っていると思っていたが……そんなことはなかった。


 自分は普通の世界に生まれ、普通の人生を歩んでいた、普通の人間なのだから。



*****************



 少しの間、二人の間に沈黙が続く。


 エクリアは隣にいる少年にどう声をかければいいのかわからずもじもじしている様子。


一方グレンは想像以上のハードモードに下を向かざるを得ない。


 元の世界の人間は全て消え異世界にきたものの、何の力も何の情報も未だに得られていない。

 グレンはなぜ、自分だけが世界に取り残されこの世界に呼ばれたのか。何もわからないのだ。


 自分はこれから、たった一人でどうすればいいのか。不安が胸を痛めつける。


「……!」


 瞬間、なにかを感じ取ったかのようにグレンが下に向いていた顔を前へと向ける。


 急に動き出したグレンに、ずっと話を伺う機会を疑っていたエクリアが驚く。


「ど、どうしたんですか?急に」


 エクリアがグレンに問いかける。だが、グレンは聞く耳を持たず前を見すえる。


 グレンの眼前にあるのはとある魔剣士が作った巨大な壁である。

 この壁があるおかげでこの街は魔獣からの襲撃を守っていた。だが、


「なにか……来る……!!」


 グレンが言っていることに対してエクリアは首を傾けることしかできない。

 だが彼の目が嘘をついているようにも思えないのである。


 エクリアが見つめていた少年の前髪は右に十分の八、左に十分の二の割合で分かれていた。目元が隠れてしまいそうな長さがちょっと気になる。

 

 だが彼女が見ていた少年は突然立ち上がり、彼女の手を取り壁を背に走り出す。


 エクリアは半ば引っ張られる形で走っている。グレンが力強く握っているせいか、少し痛そうな顔をしながらグレンに問いかける。


「なんですか?! どうしたんですか!?」


 グレンは足を止めることをせず汗を流しながら、ひたすら走り続ける。

 そして、エクリアの質問を無視して逆に彼女に問いかける。


「お前の友達、どこにいるんだ!? 何とか連絡取れないか? 急いで、高台を目指すように伝えるんだ!!」


 急いでいるせいか少々早口のためなのか、彼が何を言っているのかわからない。


 ただ、彼の質問に一つだけ彼女は答えた。


「一応連絡手段ならあるけど……ほんとに一体どうしたんですか?」


 足を止めるエクリアと急いで高台を目指すグレン。


 彼らは出会ってほんの数時間だが、お互いがお互いをある程度は信用できる程の関係になっていた。

 だが、今の二人の感情は全く持って噛み合っていない。


「とりあいず急がなきゃいけないんだ!! あの壁からはなれ……」


 グレンがエクリアを説得しようと足を止める。


 そして何が起こるのか説明しようとしていたその時、壁の方から大きな音が聞こえた。


 エクリアが後ろを振り向くと、この街を二百年間守り続けていた巨大な壁が消えていたのだった。


 そしてちょうど日は沈み、近くの森に生息している赤き瞳をもつ魔獣達がこの街に侵入してくる。


 その魔獣達の群れの中に一人、黒いマントを纏い。紫色の髪を足まで伸ばした、傷だらけの顔をした少年がいた。


 少年とグレンは目を合わせ、そして恐ろしい笑顔でこう言った。


「やぁ、また……会えたね」

やはり物語って書くの難しいなぁ……

読みにくいところもあるかもしれませんが、全力で頑張っております。

次回はついに戦闘シーンを書きます…緊張するぅ…

よければ、感想、評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ