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輪廻転生から交わる異世界召喚 ~剣と魔王と異世界と~  作者: 紅月
第二章 〜泥の剣士と無力の少年〜
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第二章 第七話 『アルフの日記』


 『アルフの日記』その単語を聞いた途端、俺は何故か目から涙を流していた。

 周りの三人は急に泣き出した俺に少し驚いていた。


 俺も急に涙が出てきた自分に驚きつつも、急いで右手で涙を拭おうとする。


「な、なんだこれ? なんで急に涙が……」


 俺が急いで涙を拭いでいるのを見て、アルダ様は黒いズボンのポケットから白いハンカチを取り出した。


「大丈夫かい? これ、使っていいよ」


 俺がアルダ様の方をみて、軽く頭を下げてハンカチを受け取る。

 お言葉に甘えてハンカチを使って涙を拭っていると、アルダ様は左手の人差し指、中指、薬指を立たせ笑顔でこちらに話しかけてきた。


「ちなみにそのハンカチ、エボード帝国の王子から貰った高級なハンカチだから使ったら三十万キレラ取るからね」


「いや、言うの遅くね?! つーかそんないいもんなら、俺に渡すなよ!」


 ハンカチを持っていた手を床に置いて、とんでもない事を言いだすアルダ様に俺は急いでツッコミをいれた。


 レイアルドとアルダ様は俺のツッコミにうけたようで声を出しながら笑っていて、ボルクスも目を閉じながらも口は笑っていた。

 

 だが、さっきのアルダ様の言葉に聞き慣れない単語があった。

 『エボード帝国』と『キレラ』という単語だ。


 恐らく『キレラ』というのは、この国のお金の呼び方だろう。数字の単位が元いた世界と同じだから、これはすぐに察せた。


 ただ、エボード帝国。これは全くわからないけど、どこかの国の名前なんだろう。


 気になることを質問し続けていたら、いつまで経っても本題が進むないからな。今は我慢だ。


 俺は一礼しながら、手に持っていたハンカチをアルダ様に返した。

 そして、話を戻すように今もなお紙切れを持つアルダ様の手を指差した。


「それで、その『アルフの日記』ってのはなんなんだ? それがいったいどうしたんだ?」


 俺がアルダ様に質問すると、自分のボサボサの髪を触りながらアルダ様は答えてくれた。


「アルフの日記ていうのは、その昔『めぐりの女神、クレナ・アルフ』が書いたとされる未来を予言した書物。そしてこれは、その一ページのカケラだよ」


 クレナ・アルフ。当たり前だけど、知らない名前だ。


 アルダ様は自分の持っている日記の紙切れを強調しながら俺の前に出してきた。


「俺が三日ほど前に一人で、この街『王都クリラ』の地下遺跡を発見しそして見つけたんだ。現在、この紙切れを知っているのは俺とレイとボル。そしてグレ、君だけだよ」


 アルダ様が金色の瞳でこちらを見ながら、指を刺してきた。

 グレっていうのは、まさか俺のことなのだろうか。


 というか地下遺跡……ダンジョンっていったら、モンスター的なのがウジャウジャいるのが定石だ。

 一人で地下遺跡を見つけて攻略するなんて……確か、アルダ様は近衛騎士団団長って言っていた。


 もしかしてアルダ様は『七剣士』に並ぶほどのぶっ壊れ性能を持っているのだろうか。


 俺がアルダ様を見ながらこの人の強さを考察していると、さっきのアルダ様の発言に一つ引っかかる点があるのを思い出した。


 俺は引っ掛かったことを、すぐさまアルダ様に聞いてみた。


「そのアルフの日記って、すごく貴重な物なんじゃないのか? そんなものをなんで他の人達に話さずに俺に話したんだ? 俺は……禁忌の黒刀を引き抜いた……やばいやつですよ?」


 自分が危ない人間だということを自分で言ってしまって何ともいえない複雑な感情だ。


 俺が下を見ていると、アルダ様は歯を見せながら大きく笑うと俺の肩を叩きながら喋り出す。


「俺はね、君を信じているんだよ」


 その言葉を聞いて、俺はすぐに顔をあげた。


 アルダ様は俺の方を見ながら笑い、そして肩から手を離し後ろを振り向く。そして、もう片方の手に持つ紙切れをヒラヒラさせながら歩いてゆく。


「この紙に書いてあったんだ。『七百七十六年、禁忌の黒刀を持つ者がアルクリアの大地に現れる。巨悪の復活、禁忌の黒刀は悪に刃を振るう。そして来たる七百七十七年、全ては』でこの紙は途切れている」


 なんとも微妙なところで終わっている、この途切れ方は犯罪並みだぞ。すっげぇ続きが気になる。

 いや、そこじゃないよな。他にもっとツッコむべきところがある。


 アルダ様が再び椅子に座り、こちらに紙を見せつけながら足を組み話し出す。


「この紙の裏面には何も書いていない。この日記の予言はアルクリア各地の遺跡に散らばっていて、いろんな学者が発見している。この日記の予言が当たることは、この日記をみた何人もの学者が証明している」


 俺は顎に手を置きながら話を聞いていた。先程アルダ様が、俺のことを信じると言ったのはそういうことなのか。


 アルダ様が持っていた水色の紙は突然姿を消し、そしてアルダ様は両手を髪の後ろで組むと、目を閉じながら話始めた。


「そっ、つまり俺が君を信用しているのは予言に書いてあったからだよ。禁忌の黒刀はグレ、悪の刃はクリミナルだと俺は勝手に解釈している。そして、何でこの三人にだけ予言のことを話したのか。今俺が信用できるのはこの三人だけだからだ」


 アルダ様が閉じていた目を開き、レイアルド、ボルクス、俺の顔を順番に見る。

 するとずっと綺麗な正座をしていたレイアルドが、眉を少し寄せ目を瞑りつつ笑った。


「できれば、そういうことは先に教えて欲しかったのですがね。時にグレン君、なんでアルダ様は僕ら以外にこの日記のことを教えないと思う?」


 レイアルドは目を開きこちらをみて質問してきた。


 俺もレイアルドの方を見ながら考える。


 アルダ様が俺達だけに教えて、他の人に教えない理由。

 正直言ってさっぱりわからない。


 アルダ様がコミュ障だからか?アルダ様は他の近衛騎士団のメンツや家族と仲が悪いのか?


 レイアルドがずっーとこっちを見てくる。早く答えた方が良さそうだ。


 俺は一息ため息をついて、レイアルドから目線を逸らし腕を組み大きな声で答えた。


「うーん……わからん!!」


 俺が自信満々に問題を放棄すると、レイアルドは手で口を抑えつつ小さく笑った。


「そうだよね、そもそもわかるはずないよ。実はね日記のカケラを見つけた人物達は皆、クリミナルに襲われているんだ」


 またクリミナル達か。なんであいつらは日記のカケラを見つけた人物達を狙っているんだろう。

 俺は組んでいた腕を離し右手で顎を抑えた。


 でも、それを聞いたところで。アルダ様が他の人達に日記のカケラを話さない理由にはならないと思うのだが。


 その瞬間、俺の頭に何かが閃いた。


 俺は右手を顎から離して、下を向きながら目を大きく開きつつ小さく呟いた。


「まさか……内通者?」


 そう俺が呟くと、アルダ様は笑いつつ指パッチンをしながら俺の言葉に答えた。


「その通りだよ」


 よく、漫画やアニメで見たことのある展開。まさか本当に内通者がいるなんて。


 だがそれなら納得がいく。


 ボルクスやレイアルドに教えるのは、古くからの友人だから。俺に教えるのはアルフの日記にクリミナルと敵対するような描写があったから、俺のことを信用しているんだ。


 いやだがそれでもやはり、もっと教えるべき人物達がいるのではと思い俺は顔を上げてアルダ様の方を見た。


「いや、それでも流石に家族や七剣士が内通者ってことはないでしょうし。せめて王様にだけでも教えた方が……」


 俺がアルダ様にそう言うと、壁にもたれてずっと黙っていたボルクスが腕を組みながら口を開き始めた。


「甘いな……七剣士や王族、もしくは使用人が内通者の可能性だって捨て切れないんだ。可能性がある限りは絶対に誰も信じてはいけない。決してな」


 ボルクスが綺麗な二重の目を小さくしながら俺の方を見て話していた。

 俺もボルクスの顔を見る、彼の目は強く覚悟を決めた目をしていた。


 誰も信用してはいけない。じゃあ、エクリアやリエラのことも信じてはいけないということなのか。


 少し動揺する俺を見て、アルダ様は手を組み今までの明るい表情とは違い、真剣な顔でこちらに歩きながら話しだす。


「いいかい? 君に信用できるほどの大事な人がいても、誰にも言っちゃいけない。本当に大事なら、守りたいのなら隠しとうせ。バレてしまえば危険に遭うのはその人かもしれないんだ。だからこそ、守りたいのなら騙しきるんだ」


 アルダ様は俺の顔に近づき、恐ろしい顔でこちらを見てくる。

 恐らくこの人は、俺がエクリアとリエラと仲がいいことを知っているんだろう。こんなの半ば脅迫みたいなもんだ。


 いやだがアルダ様の言う通りだ、どこから情報が漏れるかわからない。


 クリミナルがなんで日記のカケラを持つ者を殺すのかはわからないけど、今は絶対に喋っちゃいけない。もしバレたら俺を助けてくれた二人まで酷い目に遭ってしまうからだ。


 俺が決意を固めた表情でアルダ様を見ると、アルダ様はいつもの明るい表情に戻り、近づけていた顔を後ろに引くと人差し指をたてて話を始めた。


「そこで、一番大事な話なんだけど。俺は自分の野望のためにクリミナルがとても邪魔なんだ。そして、君も何かしらクリミナルとは因縁があるんだろ?」


 今までのは全て前置きで、この取引が目的ってわけだな。

 確かに俺の目的はクリミナルとの接触だ。この人は人の心をよく読んでやがる。


 俺は立ち上がり、アルダ様の顔を半ば睨みつつ話しかける。


「それで、何をすればいいんですか?」


 アルダ様が「ふっ」と笑うと目を小さく開きつつ俺の質問に答える。


「ボルクスと一緒に、『スモーディアタウン』に行って欲しい。俺の予想では、恐らくそこにクリミナルの幹部が現れると思われるからね。そいつを……倒してきて欲しい」


 スモーディアタウン、そこが俺の新たな目的地。アルフの日記のことで俺を脅迫し、自分の邪魔なクリミナルを排除したいってことか。


「おもしれぇ、やってやるぜ」


 俺は拳を握り、そして更なる絶望が待つ街へと向かう決心をした。

今回結構わかりにくかったかもしれないです!話の内容!

わかりにくかったら簡潔にまとめたのを出そうと思うので良ければ感想評価!お願いします!

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