第二章 第二話 『禁忌の黒刀』
誤字があるかもしれませんが、後々修正していくのでご了承ください。
俺が目を覚ますと、そこは美しいステンドガラスに囲まれた部屋だった。
そして目の前には階段の上にある玉座に偉そうに座る口の周りに髭をはやした水色の髪を逆立てた男性がいた
赤いマントに身を包み頭には小さな王冠を被っていた。
「絶対王様だろ!!!」
俺は声を大にして叫んだ。すると、なんだが体が自由に動かないことに気づいた。
俺は下を向き、白い床に座る自分の姿を見る。大きな太い木の棒に縄で縛られていた。
なんで縛られているのか、俺がいったいなにをしたのか。まるでわからないが、恐らくこの王様からその理由を聞き出せるのだろう。
「よぉー、目覚めたかグレン少年」
左側から聞いたことのある声が聞こえてきた。俺は声の方をした方を見ると案の定、病衣に身を包んだ紫髪のおっさんが立ちながらこちらに手を振っていた。
「ミヴァのおっさん。これどーゆーこと?」
俺は額から汗を流しながら手を振るミヴァのおっさんには問いただす。
「悪いねぇ〜、できることなら俺は自由にさせてあげたいんだけど。そうゆうわけにもいかないんだよ」
ヘラヘラしながら答えるミヴァのおっさんは右に視線を移動させる。
俺もミヴァのおっさんが向いた方向に視線を移動させた。
そこに立っていたのは白衣のポケットに手を入れた濃い青色の髪の女性が俺の方を睨めつけていた。
「や、やぁアイリスとてもいい目つきだね。俺は君のそのツリ目、とーってもキュートだと思うぜ」
少しでも鋭い目つきを優しくしてもらおうと、俺が片目を閉じつつお世辞全開で彼女のことをブチ褒めたたえる。
すると、アイリスの目つきはさらに鋭くして歯を食いしばりながら「ちっ」といいつつこちらを睨め付ける。
「ひぃっ…!!」
怖すぎるその目に俺はついついビビってしまい汗を滝のように流しながら反対側に顔を動かす。
反対側にいたのは腕を組みながら俺を笑顔で見るパツパツの真っ白のTシャツをきた、赤髪の短髪オールバックの老け顔の男性。
さらにその男性の右横に、ステンドグラスに持たれる男がいる。
エクリアよりも少し黒味がかった金髪で、右側の前髪は逆立てているのに左側の前髪は下ろしている。薄紅色の瞳だ。
指にはたくさんの指輪が付いていてその一つ一つが輝きを放っており、赤い横線が入った白いマントの下に黄色のYシャツを着ている。
いけすかない笑顔でこちらを見ている。絶対俺が嫌いなタイプの人間だ。
「いったい誰なんだこいつら……」
俺は全く知らない二人を見ながら言葉を呟いた。すると、後ろから扉の開く音が聞こえてきた。
俺は後ろを振り返ろうとしても、拘束されているせいでギリギリ振り返ることができない。
どうにか振り返ろうと険しい顔で奮闘していると、俺の横に黒い大剣が飛んできた。
「——アマガラス……!!」
俺は言葉をこぼした、アマガラスの剣には謎の水色の鎖がついている。
「なんだこの鎖、おい! アマガラス! 聞こえてねぇのか!? アマガラス!」
俺が必死に呼びかけるが、どれだけ呼びかけてもあの腹が立つ喋り方で返事を返してこない。
「無駄だ。どれだけ呼び掛けようと、返事を返すことはない」
俺の後ろから聞いたことのある声と、そして足音が二つ聞こえてきた。
そして二つの足音は俺の横を通り、俺の目の前に立った。
一人は見た事がない青年だったが、もう一人は見たことのある人物だった。
「お前が何かやったのか……! 答えろ、ボルクス!!」
目の前に立つのは、この前見たものと全く同じ服装を着ている黒髪に青メッシュが入った紫色の瞳に二重の青年。ボルクス・ゲーテヒルナ。
そしてもう一人、白い髪に白い肌、そしてオレが思い描く美青年の顔立ちに右の目元に一つホクロがある。服装は、ボルクスと全く同じだ。
そんな美しい見た目とは裏腹に燃え盛る赤い瞳。なんだが羨ましくなるほど主人公感の強い人物だ。
「落ち着け、俺はただその剣に封魔の鎖をつけただけだ」
ボルクスが俺の問いに対して答えた。封魔の鎖、案の定知らない単語だ。
だが、封魔の鎖。言葉からして魔法の力を封じるようなものなのだろう。
アマガラスが先ほどからなにも喋れないのもこの封魔の鎖のせいなのか。そして恐らく、俺の手錠。これも魔力を封じるものの一種なのだろう。
「いったいなんなんだ。お前らは多分、国のお偉いさん達なんだろ……そんなあんたらがどうして俺なんかを捕らえるんだ……」
俺がここにいる七人全員に問いかけるように叫んだ。少々威圧的な態度で目の前に立つ二人の男性を睨め付ける。
「汚い言葉使いだな。我々が貴様を不審に思い警戒しているのはそれだよ」
右にいる、いけすかない金髪の男性が答えてきた。だが彼の言っていることの意味が俺には全くわからない。そのため、俺は頬に汗を流しつつも、右に視線を移してすぐさま言葉を返した。
「どうゆうことだ……」
「なぜこれほど怪しまれることをしているくせに、なぜ貴様は自分が捕らえられたことに疑問を持っているんだ? そこに対して我々は警戒しているのだ」
怪しまれること……?いったいなんのことなのだろう。俺には全く見当がつかないのだ。これまで異世界に来てからしたことを俺はゆっくりと思い出す。
すると目の前の玉座に座るおっさんがついに口を開き言葉を話した。
「王家に伝わる禁忌の黒刀、別名『トランスソード』。その黒刀を引き抜く者はこの世界に災いを招くものだと言われている。そしてその黒刀を貴様は発見し、あろうことかそれを我が者のように扱った。そんな男を我らが放っておくわけがなかろう」
目の前で偉そうに座るおっさんが椅子に手をかけながら話しかけてくる。
禁忌の黒刀……世界に災いを招く?馬鹿馬鹿しいこの剣は形を変える以外は特に取り柄もない刀だ。そんな話をまともに信じるなんてこいつはどうかしている。
俺は彼らにまとめて説教混じりに怒ってやろうとしたとき、目の前にいるボルクスが手帳を取り出した。
「国の機密機関を使って貴様の適応属性、出身地、経歴、洗いざらい調べたが、全てが不明だった。禁忌の黒刀を引き抜いただけではなく、誰一人として貴様の素性を知る者はいなかった。これだけ怪しい貴様をなぜ、国の平和を守る我々が捕らえないと思うのだ?」
言われてみれば確かにそうだ、禁忌の黒刀については本当に知らなかったが、この世界に俺のことを知るものは一人もいない。そして、俺もこの世界について全く知らない。
これだけ怪しい条件が整っているのに……俺はなぜ自分が捕まらないと思っていたのだろうか。
「くっ……」
額から汗が流れ始める、いったいどうすればいいのだろうか。いっそのこと今までのこと、異世界から召喚されたことをここで言うか……?
「今すぐ答えろ。貴様はいったい何者で、なぜ禁忌の大剣を引き抜けたのだ。全て正直に答えろ。もし正直に答えていないと私が判断した場合は……分かっているな?」
目の前の王様が俺に対して目で威圧をかけてくる。恐らく判断を誤った場合、俺はすぐに首チョンパだ。
素直に答えるか……いや、異世界から来たなんて逆に怪しまれるだけだ。俺は首を振りながら自分の考えを否定する。
俺は深く思考する。今この状況でいったいどうすればうまく生き残れるのだろうか。何度も思考し頭の中でイメージする。
どれも最後に死への未来に辿り着くだけだ。俺は焦る。下を向き、汗が床に落ち始めるほど焦る。周りから感じる威圧感に潰されそうになりながらも、俺は諦めず思考する。
「おい、早く答えろ。いつまでも待ってるわけにはいかない、残り一分いないに答えろ」
「ま、まて!! もうちょっとだけ考えさせて——」
「五十九、五十八、五十七、五十六……」
痺れを切らしたボルクスが、俺の返答を無視してカウントダウンを始めた。ボルクスの顔は気のせいか怒りが混じっている。
いや、そんなことよりも今は考える事がある。どうすればいい。どうごまかせばいいんだ。
俺は歯を食いしばり深く考える。だが、脳が足りない俺じゃろくな答えが出てこない。
「十一、十、九、八、七……」
もう時間がない。俺は覚悟を決めて本当のことを話すことを決意し、口を開く。
「俺は……異世界から——」
ついに覚悟を決めて彼らに話す俺だったが、俺の言葉を遮るかのように後ろからどでかい声が聞こえてきたのだ。
「ちょぉーーーっとまったぁぁぁ!!!!」
全員と、俺の視線が声のした方を向く。だが、俺は縛られていたからまたもやギリギリ見る事が出来なかった。
「話は全部聞かせてもらっていたわ」
なんだか聞いたことのある声だ。この声は……確か。
俺が考えだした瞬間俺の横を新たに二人の女性が通り過ぎてゆく。
そしてその女性は玉座の前に堂々と立ち、こちらを振り向いた。
そこにいたのは水色の髪に金色の瞳をした女性、リエラだった。のだが、自分の知っている彼女の服装とはかなり違っていた。
ボロボロのフードのついた長いローブとは違って、綺麗なガラスの靴に自分の髪とお揃いの色をしたドレスを着ていた。
そして彼女の隣には輝く綺麗な金髪にエメラルドの瞳。女性用のタキシードに身を包んだエクリアの姿があった。
「エクリア……リエラ……どうしたんだ? その格好……」
エクリアは床に座る俺を見ながらにっこり笑い、隣にいるリエラが右手を前に出して口を開いた。
「私は、彼の……グレン君がこの国にとってなにもしない無害の存在。いや、きっとこの国とって利益になる存在であることをあなた達に証明するわ」
そう言うリエラの顔は自信満々の笑顔をしていた。
今回は戦闘なしの王室でのお話です。
次回はリエラとエクリアも話に絡んできます。
次回は明日四時に投稿します
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