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第一章 第十一話 『悪魔からの帰還』

今回も誤字が多いかも知れませんが、後々修正しますのでご了承お願いします。


「王国最強の騎士……『七剣士』……」


 なんて強そうな響きなのだろう。

 俺は途切れそうな意識をなんとか保ちつつ、そんなことを心の中で思っていた。


「その呼ばれ方はあまり好きではないのだがな、まぁいい。今は……」


 ボルクスと呼ばれる青年はポケットに手を入れて一度目を閉じ、そして再び目を開くと。彼の足元に魔法陣が現れ、魔法陣から泥の剣が四本出てきた。


「今は貴様を倒すことが最優先だ。悪党」


 ボルクスが左手を大きく横に振ると、泥の剣はイデン目掛けて襲いかかる。

 

 イデンは大きくジャンプして大きな木の枝に飛び乗る。だが、泥の剣はイデンを追尾する。


「へぇ〜……」


 イデンは笑いながらそう呟くと、猿のように身軽に動き次々と別の木の枝に飛び移る。だが泥の剣は様々な障害物を避けてイデンを追いかける。


 泥の剣がかなりの高性能であることを側から見ていた俺は気づいた。

 だが、どうゆうことなのだろうか。俺がエクリアに聞いた話だとこの世界の魔法の属性に泥なんてなかったはず。

 土魔法の一種なのだろうか。


 俺が目の前の木を見ながら考えていると、イデンは木の枝に飛び移ることをやめて地面に立っていた。


 そして大きく口を開けて叫びながら後ろから並んで迫ってくる四本の剣を見る。


「おぉぉうらぁ!!」


 イデンは四本の剣全部を右足で蹴った。

 所詮は泥のようで簡単に剣を潰すことが出来ていた。あんなに簡単に消すことができるのなら、なぜイデンはあんなに逃げていたのか。

 少々不思議に思っていたが、


 イデンの右足が地面に膝をついたのをみた。イデンが自分の右足の膝を押さえながら立ち上がるが、腰を折りいまいち自由に動けない様子だった。


「これが噂の泥土の剣か。当たった箇所が重くかる効果の剣だよね。便利な能力だねぇ」


 イデンが笑いながらも先程の剣の能力を説明する。だが、先程までの狂気のような顔ではなく怒りまじりの笑顔に見える。


 そんなイデンを見ながら余裕の表情を浮かべるボルクスは答える。


「その通りだ。さらに当たった剣の数によって重みが増す、お前の足はもう歩くことすら難しいはずだ」


「随分と余裕そうだねぇ……たかが右足がうまく使えなくなったところで、あんたよりも俺の方が強い事は揺るがないんだよぉ!!!」


 イデンは無邪気な子供のようにボルクスの元まで走り出すが、明らかに俺と戦ってる時とはスピードが違う。

 重くなった右足がかなり足を引っ張っているのがわかる。


「頭に血が上って冷静さを失ってるぞ。そんな馬鹿みたいに接近しても、勝てると思うのか?」


 ボルクスが落ち着いて向かってくるイデンに語りかけるが、イデンは彼の言葉を無視して走り続ける。

 ボルクスが地面に手をつき魔法陣を出した。


 すると魔法陣から土塊で出来た大きな竜が出てくる。


 俺は木に持たれながら座りつつ、口を開き目を大きくあけて唖然としていた。

 そんな俺とは違い、イデンはその竜を見ても怖じけず逆に笑いながら走り続ける。


「おもしれぇじゃないか!! いいよ、来なよ! 僕の力でそんなものねじ伏せてあげるよぉ!」


 そう言いながら笑うイデンの左手がどんどん膨れ上がる。うでの色も黒色に変色して毛皮のようなものも生えた、手の爪は鋭く伸びる。

 まるで、悪魔のような左手になっていた。


 俺は不気味なイデンの左手を見て奴がただの人間ではないことを察した。


 そしてボルクスが左手を前に出すと、土塊の竜は目の前から走ってくる紫髪の少年めがけて襲いかかる。

 

土塊竜ガイアドグーン


 ボルクスが小さな声で技の名前を呟いていた。そして、土塊の竜が悪魔の腕の掌とぶつかる。


 大きな火花を散らしぶつかる二人の技、その衝撃に俺は思わず顔を腕で隠す。

 その衝撃は凄まじく周りの木や草は吹き飛んでいった。


 そして決着は意外にも早くついた。イデンが土塊の竜をなんとか抑えようとするが土塊の竜の力は想像以上で、イデンは抑えきれず押され始める。


 そして土塊の竜が大きく口を開け、イデンの悪魔の腕を噛みちぎった。


「それは反則じゃないのかなぁ?」


 笑いながらも竜を睨め付けるイデン、そしてイデンの腹に竜がぶつかりそのまま後ろに吹き飛んでゆく。


「ははははは!!! いいねいいよいいじゃないか! 認めてあげるよ、君の強さは本物だぁ!! 面白いねぇ君! またいつか……遊ぼうゼェ!! 泥の剣士、ボルクス・ゲーテヒルナァ!!」


 吐血しながらイデンは叫ぶ。だが、彼の断末魔は悲しくも竜が土を這いずる音にかき消される。


 そしてイデンと土の竜は周りの木などお構いなくそのまま遠くへ吹き飛んでいった。


「す、すげぇ……」


 俺は気づけば声が出ていた。

 声が出てしまっても仕方ない。それほどまでに今自分の目の前で起きたことに驚いた、自分をボコボコにしていた敵をこうも簡単に倒してしまったのだから。


「さて」

 

 ボルクスが黄色の瞳でこちらを見ていた。そう、確か彼ら王国の騎士達は自分のことを探していたのだった。


 ボルクスが俺の体と大剣を見ながらこちらに話しかけてきた。


「黒の大剣に赤髪の男、服装は別におかしくはないが着替えただけだろう。悪いがお前を拘束させてもらう」


「やっぱ、そうくるのか……そんな気はしていたがな」


 俺は少々呆れながらも笑顔で返した。


 ちょうど空を覆っていた雲が晴れて月が森を照らす。

 周りには技の衝突によって吹き飛ばされた木々が倒れていた。大剣は未だに俺の隣に倒れており、俺の足元にはフィーユの首が少し離れたところにユーリの首が転がっていた。


「ごめんな……」


 瞳から涙が溢れつつ二人に謝る。俺がもっと早く行動していれば、早く二人と合流していればこんなことにはならなかったのかもしれない。


 心に後悔がありつつも、俺は二人の女性のことを思い出し黒髪の触りつつ月を見上げるボルクスに焦りながら話しかける。


「金髪で緑色の瞳をした女の子と、水色の髪の女の子がどうなったか知らないか?!」


「自分がそんなボロボロな体してるくせに、他の人の心配できるとは案外余裕だな」

 

 こちらに一瞬目線を移し、再び目線を月に戻しながらボルクスは言葉を返してきた。

 俺の問に対して答えになっていない、俺は再びボルクスに問いかけようとするが。


「リエラ様とそのお付きの人のことだろう。安心しろ、先に村の敵を全滅してきた。二人は無事に保護されているさ」


 ボルクスのその言葉を聞き二人が無事なことを確認すると、どっと疲れが押し寄せてきた。

 俺は一息つくとそのまま目を閉じそうになってしまうのを耐え、ボルクスに話しかける。


「おい、殺されないならなんでもいい。拘束するなら早くやってくれ。俺もう疲れて眠っちまいそうなんだよ」


 俺がボルクスにそう言うとボルクスは視線をこちらに向けて「了解した」と言いこちらに向かってきた。


 だが、俺は彼がこちらに来るまで耐えきれず目を閉じてしまい地面に倒れてしまった。


「もう倒れてしまったか。こんなに辛そうな顔で寝るものを拘束するのは少々心が痛むが、仕方ない」


 グレンの側まで近づきボルクスは呟きつつ、グレンの体に向かい手を差し伸べる。魔法陣が現れ、魔法陣の中から手錠と拘束具が出てくる。

 

「グレーンさーん!!」


 遠くから声が聞こえてきた、声の主はエクリアだった。彼女は遠くから大きな音が聞こえてきたことに気づき、ここまで様子を見にきたのだ。

 そして彼女は木の下で倒れるグレンの姿を目視し、グレンの元へ走ってきているのだ。


「良かった、無事だったんやね!」


 そしてエクリアの後ろから水色の髪をなびかせたリエラとその護衛達が走ってきていた。


 二人がグレンの近くまで来ることに気づいたボルクスは地面に右手をつけて、エクリア達の前に土の壁を作り出した。


「——!! どうゆうことですか? ボルクスさん」


 エクリアはまるで、グレンの元に来させないために壁を作り出したボルクスに対して壁越しに強気で言葉をかけた。


「これは私なりのお二人への気遣いです。恐らくこの少年も起きていたら、あなた達がこちらに近づくことを拒むと思いますから」


 ボルクスが言った通り、グレンも起きていたら彼女達がこちらに来ることを拒んでいた。

 それもそうだ、なぜならここには彼女達と少しの間ではあるが一緒にいた子供達の無残な姿があるのだから。


 エクリアはボルクスの言ったことを察したかのような表情をして黙り込むが、リエラにはそんなことが分からずボルクスに問いかける。


「いったいどうゆうことよ! 答えなさいボルクス!!」


 ボルクスが一つため息をついた。リエラが相変わらずのうざさで、ちょっとめんどうくさいのだ。


 リエラの質問に答えてしまうと、傷つくのはリエラ自信だ。だからボルクスはあえて話を変えてリエラに話しかける。


「リエラ様、わかっていますよね? あなたが国王とした約束は本日まで、我々と共に王都に来てもらいますよ」


「うっ……」


 リエラはぎくっとした表情で言葉に詰まる。

 恐らく壁の向こうで自分の想像通りの表情をしているリエラがいることを察するボルクス。


 そして拘束したグレンを担ぎ上げる。


 部下の騎士達にイデンを捜索するように命令し、リエラとエクリア、そしてグレンを連れたボルクスは。

 月が照らす暗闇の中を馬車で駆け抜け、王都へと帰還する。

今回は結構会話のスピードが早かったかも知れません。とりあいず第一章はこれにて終了です。

次回からは第二章です!

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