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第一章 第一話 『成瀬紅蓮、16歳の召喚』

初の連載投稿開始!!

頑張っていきます!!



「ごめんなさい……またあなたに戦わせてしまうことを……ゆるしてください……私の……大切なともよ」


 声が、聞こえてくる。どこか懐かしく。どこか安心する声だ。だがいつもこの声を聞くと悲しい気持ちになるのは、なぜなのだろうか。



********************



「——またこの夢だ……」


 いつもと変わらない朝。黄色のカーテンの隙間から入ってくる日差しに当てられながらベットの上で上体を起こし、成瀬紅蓮なるせぐれんは呟いた。


 体を伸ばしながら大きなあくびをしていた次の瞬間、彼は隣に置いてあるスマホを見て驚愕する。


「もうこんな時間!?」


 今の時間が午前七時四十五分であることに驚いたのだ。


 いつもは六時半にアラームがなるようにセットしているはずなのだが、今日に限ってなぜかアラームがなっていなかったのである。


「こんの……クソスマホがァァァ!!」


 機会相手に発狂していることに自分でも少々呆れながらも、ベットから降り急いで制服に着替える。


 もう既に遅刻確定のようなもの、少しでも急がなければいけない。そのはずなのに、紅蓮はクローゼットの前に立ち自分の学校の制服を見て少々ニヤける。


 中学生の頃の制服が学ランだったためか、念願のブレザーの制服を着れることが高校二年生になった今でも嬉しいのだろう。


 制服に着替えたのち、朝ご飯を食べている余裕が無いと判断した紅蓮の足はリビングではなく洗面所に向けて動きだす。


 短い床をヒシヒシと音を立てながら歩いていく。


 いつもならばゆっくりと卵かけご飯とお味噌汁を食べながらニュースを見たあと、朝のランニング、筋トレをした後にくる場所。


 3つの鏡の前に立つ、目の前の少年は綺麗な赤い髪をしていて男性にしては少し長い髪が印象な真っ黒な瞳をもつ悪人ズラが立っていた。

 自分の顔が怖い部類だと再確認し舌打ちを零しつつ歯ブラシを取り出し歯磨きを始める。


 歯磨きを終えたのち、「よしっ」と呟き、洗面所を出て左に顔を向ける。


 長方形の床の先にはリビングがあり、その手前の部屋にトイレがあり、トイレと今自分がいる洗面所の隣に紅蓮の部屋がある。


 紅蓮は音の出る床を再び歩き、リビングへ向かう。


 自分の部屋ではなくリビングに学校のカバンがあるというのがまさしく一人暮らしみたいだ。

 紅蓮は自分のカバンと部屋の鍵を、茶色のタンスの1番上の段から取り出し玄関へ向かう。


 玄関には学校用への靴と運動用のシューズしかないためかとても寂しく感じる。


 学校から指定された靴を履き、鍵を外し。玄関のドアを少し開けつついつも通り、紅蓮は呟く。


「……行ってきます」


 少しの間、沈黙が続いた。


 どうして親も兄弟も家に居ない独り身なのに自分は毎日ドアを開ける時、この言葉が口から出てしまうのかいつも考えてしまう。


 そしていつも、答えはわからぬままこのセリフを吐く。


「つってな、なーにしてんだかっ」


 そう言いながら紅蓮はアパートの2階から見えるいつもの光景を見下ろし、ドアを閉めた。



********************



 彼は走っていた。


 転んでしまったらとても痛そうな、硬い硬い地面の上を紅蓮は走っていた。

 一般人とは思えない、さながら陸上の短距離走選手なのかと思われるほどのスピードで走っていた。


 紅蓮にはこれといって得意なことがない。


 勉強はもちろんのこと、他にもなにか得意なことがある訳でもない。


 ただ彼にはとてつもない身体能力があった。


 体力にはそこまで自信がないが、学校の体育の成績じゃ必ずトップを取れる自信がある。


 だが紅蓮は高校では目立つことを避けているため、日常生活ではこの運動能力を使わないようにしていた。

 だが遅刻して目立つってしまっては元も子もないため、紅蓮は仕方なく全力で走っていた。


 走りながら紅蓮は街を見る。東京の街並みを。


 高い高層ビルが建ち並び、道行く大人たちのほとんどは小さき悪魔、スマホに視線が釘付けである。


 そのため紅蓮がどれだけのスピードで走ろうとも、気がつくのは無邪気な少年少女くらいである。

 小学生の頃、下を向かず上を向いて歩いて行こうと先生に教わったが全くもってブーメランである。


 まずは大人から上を向いてもらいたいものだ。


 そんなことを考えていると、紅蓮は自分の足がだんだんと重くなっていっていることに気がついていた。


 今日は朝のランニングを出来なかったせいと思い、その時は特に深くは考えなかった。


 だが、明らかに異常であった。


 自分は体力に自信が無い方だが、まだ走り始めて少ししか経っていないのに既に体力が限界を迎えていた。

 更に言うと、自分の足に鉄球のついた鎖でも巻いているのではないかと疑うほどに足が重い。


 極めつけは、周りである。気がつけば、周りには誰もいない。


 ついさっきまでは、スマホに釘付けだったサラリーマン達。無邪気に友達と話しながら、道行く人々の邪魔になっていた小学生連中。

 交通道路を走っていた車も全て止まり、中は無人である。


 あの東京がおかしなくらい静かで、高層ビルが立ち並ぶだけの風景である。


 まるでこの世界が自分一人だけになってしまったみたいである。


「どういう……はぁ……ことだ……」


 額から流れる汗を拭いつつ、荒い息遣いをしながら立ち止まり紅蓮が言葉を放つ。

 だが、その言葉を紅蓮以外の誰かが聞くことはなかった。


「あっ」


 何かを閃いたかのように紅蓮が言葉を零すと、自分のポケットから四角い機械を取り出す。

 取り出したのは、先程自分が小馬鹿にしていたサラリーマン達が使っていた小さな悪魔。スマホである。


 今こそその真価を発揮する時だと思い、紅蓮はスマホの電源をつけた。


 すると正常に動いたスマホにとてつもない安心感を抱く。これが現状の頼みの綱であるからだ。

 スマホで急いで百十番をしようとする。


 スマホのことを、人を縛る小さな悪魔と考える紅蓮の心は少々複雑ではあるが今はこれに頼るしかなく、祈るポーズをとりながら電話を発信する——が。


 その電話が繋がることは無かった。


 紅蓮の心はさらに不安が積もり、焦りを隠しきれない紅蓮は険しい顔をしながらスマホを地面になげつけ叫ぶ。


「くっそが!!! なんでだ!! なんで繋がらねぇ!! どういうことなんだ!!」


 家族も友達もいない紅蓮にはこれ以上もう頼るものがいない。


 たった一つの頼みの綱が切られた今、ここからどうすればいいのか。

 もしかしたら、このままここでたった一人で誰にも気づかれず命の炎が尽きていくのか。


 普段ならそんなことバカらしいと考える紅蓮だが、今は状況が状況だ。

 込み上げてくる死への恐怖に体を震わせながら地面に膝をつき、紅蓮は言葉を放つ。


「なんなんだよ…俺が何をしたって言うんだよ…」


 正直もう足が限界なのである。時間が経過する度に足が重くなっていくのを感じる。

 気がつけば足だけではなかった、体全体に誰かが乗っているかのように重くなっていく


 重くなっていく体に耐えきれず、とうとう顔まで地に伏せることになってしまう。


 周りは変わらず、誰もいない。風の音すらも聞こえてるほどに静かだ。

 

 静かな風の中、紅蓮は自分の夢を思い出す。


 自分にそっくりな顔をした青年が、漆黒の胴体を持ち羽を生やした悪魔と戦い最終的にやられてしまう夢だ。


 そして最後に必ずお約束の如く誰かが自分に謝ってくるのである。

 いったいあの声の主は誰なのか、とても心に響く声で聞いているだけで何もかも忘れて落ち着いていられるような声だった。


 すると紅蓮は呟く。


「なんだったんだろうあの夢……誰だったんだろうな……あの声の人……」


 そう呟いた紅蓮の声はどこか寂しく儚く虚無に消えていく。

 そしてもう一度紅蓮が口を開く


「まぁいいか……どうせ俺はもうここで終わるんだし」


 これが最後だと言わんばかりに彼は呟いた。


 そしてその声ももちろん誰の耳に響くことはなく消えていった。

 これで成瀬紅蓮の物語は終わる。もう人生に退屈せずに住む。


 これでもう全部、終わる。


 その時だった。紅蓮の頭に夢の中の女性の声が響いてくる。


「立って? グレン、こっちに帰ってきて。」


 瞬間、紅蓮の目は大きく開いた。夢の中に出てきた女性の声が、後ろから聞こえてきたのだ。


 更に言えば、先ほどまではいくつもの人の体が乗ってるかのように重かった体が元に戻っていたのだ。


 紅蓮は、少しばかりふらつきながら立ち上がる。


 足もとっくに限界を迎えていたはずだったのに、今は逆におかしなくらい軽くなっていた。


 消えた人々、謎の声。


 今までのことに何一つとして整理がつかない紅蓮だか、既に次の目的を決めていた。


 後ろを振り返り、前を見る。何の変哲もないゴミが散らかっている汚い路地裏の奥から光が見えてくる。


 これまでの事を考えると、明らかにその先にあるものは吉か凶でいうときっと凶である。ろくなことではない、紅蓮は頭の中では分かっていた。


 だが、紅蓮の足は進む。その光の元へと。ゆっくりと近づいていく。

 近づくほどに光は増していく。紅蓮は光に耐えきれず目を閉じた——



********************



 誰かの話し声が聞こえてくる。その話の内容に赤髪の少年が出てくることからすぐに自分のことだと察する。

 音が聞こえてくる。聞いたことがある音だった。なんだろう電車か?


 普段は耳障りとも聞こえる音が今は心底聞こえてて嬉しい。


 なんであの光に向かってしまったのか、後悔しつつも、俺は閉じた目を再び開く。


 言葉が出なかった。


 空に電車が飛び、見たことのない竜のような生物に乗りかかる騎士。杖を持つ魔法使いの集団。

 

 そして、ここから見える景色。昔絵本で読んだ古いヨーロッパのような街並み。


 今までの出来事に何ひとつとして答えを見つけていない俺だが、ここにきて一つだけ答えを見つけた。

 

 これは、


「これは……異世界召喚かぁぁぁ?!!?」


 大きく口を開け、青い空にめがけグレンは叫んでいた。

一話書くのにも結構な時間がかかりました…

小説を書くのは初めてなもので色々とわかりずらいところがあれるかもしれませんが、教えていただければ幸いです!

2日に一話投稿できればなと思っているのでよければ続きも読んでいってください!

第一話はプロローグのようなもので第二話からグレンくんの異世界での冒険がスタートします!

次回はグレンくんとと新たな人物たちとの出会いが待っておりますので良ければ待っていてください!

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