ぽっちゃりでも魔法少女に変身したい!
私はぽっちゃりが好きです……
エリカは今日もぽっちゃりしていた。
ムチムチに張った制服は既に新鮮さを失いボタンは何時弾け飛ぶか分からない不発弾と化していた。
──ぷにっ
「きゃっ!」
腰周りの肉を摘ままれ振り向くと、そこにはクラスメイトのタケルが意地悪そうに微笑んでいる。
「ちょっと! 何するのよ!!」
「エリカ様は今日もムチムチなさっておりますな!」
「うっさいわね! セクハラ発言で然るべき所に訴えるわよ!?」
「おー怖い怖い……」
颯爽と駆け逃げるタケル。エリカはプンスカと怒りながら己の肉を恨んだ。
「どーせ私はデブですよ……」
──ドォォン!!
「キャァァァァ!!!!」
その時、近くの廃ビルが木っ端微塵に爆発し近隣住民の悲鳴が木霊した!
「な、何!?」
「うぉぉぉ! 地球人を殺すぅぅ!!」
砂煙から醜い咆哮と共に姿を現した異形の生物!
頭はコブラ、体はゴリラ、足は鳥とチグハグを極めていたが、その目付きは本物で、騒ぎを聞き付け駆け付けた警察官を容赦無く殴りつけている。
「やだ……怖い…………」
その恐ろしい行為に足が竦むエリカ。
──ちょんちょん
「!?」
肩を突かれ振り向くと、そこには見知らぬ高校生らしき少女が立って微笑んでいた。
「ねえねえ。プリティラビットって知ってる?」
「えっ!? ええ……一応は」
こんな時に何事かと戸惑うエリカであったが、少女はエリカの応えに更に微笑み、兎の耳型ヘアバンドを取り出した。
「はい。これでプリティラビットに変身できるから、あの怪人倒してくれないかな?」
「え? え??」
「私、今日は計画年休で休みなんだよね。今日休まないと年休足りなくて労基に怒られちゃうの♪」
少女が何を言っているか、中学生のエリカにはさっぱりだったが、怪人をチラリと見るとその手にはタケルが捕まっていた!
「―――タケル!?」
首を絞められ苦しそうなタケル。警察官は残らず地面に倒れていてタケルを救える者は誰も居ない。
「理由も出来たみたいね。じゃ、後宜しく♪」
少女はバッグをクルリと振り回しスキップしながら去って行った。
「私が……プリティラビットに?」
「……ぐぇぇ……死ぬ……」
「グヘヘ! 地球人は死ねぇ!」
魔法少女になるのは子どもの頃の夢であったが、今の体型ではそれも叶わぬ夢。しかし、苦しむタケルの姿がエリカの迷いを吹き飛ばす!
「―――変身!!」
ヘアバンドを着けると、エリカは眩い光に包まれた!!
―――パツパツに張った制服が無くなりムチムチの素肌が露わになる! 可愛い兎の耳はエリカの頭と一体化し、白を基調とした可愛らしいドレスに身を包む! 赤いハイヒールに兎の尻尾。キラリと笑顔を決め、プリティラビットがここに降臨!!―――
「来たな? プリティラビットめ……」
怪人はプリティラビットを見るや否やタケルを放り投げ指の骨を鳴らした。
「タケル!!」
「ゲホッ! ゲホッ!」
タケルは咳き込みながらも、突如現れた魔法少女に驚いた。
「すげぇムチムチ!!!!」
「……!?」
エリカは変身した己の姿を見て、瞬間湯沸かし器の如く顔を赤くした。変身ドレスはパツパツに膨らみ、恥ずかしさの極みに達していた! しかし魔法少女に変身したせいか、不思議と直ぐに落ち着きを取り戻す……。
「怪人め! 今すぐ自分の星に帰りなさい!」
「……貴様を殺してからなぁぁ!!」
殴りかかる怪人! プリティラビットは素早く身を躱し怪人の背中に跳び蹴りを繰り出した!
「我に毒は効かぬ……!!」
ヒールの底に仕込まれた毒針。怪人は背中を摩りながら余裕の顔をした。因みにエリカはヒールの底に仕込まれた毒針の事は知らない。
「喰らえ!」
大きく口を開け牙を剥き出しにする怪人! その時怪人が後ろから羽交い締めにされた!
「なっ!? 誰だ!!」
「ムチムチは国の宝だ……!!」
「タ、タケル!?」
「今だプリティラビット! トドメの『濃縮劣化ウランバズーカ』で怪人を倒すんだ!!」
「わ、分かったわ!」
チャッとバズーカを取り出し、ウインクした可愛らしい兎のマークが施された弾をこめる。怪人に焦点を定めトリガーを……引く!
「可愛い兎は正義の印! 轟け!! 濃縮劣化ウランバズーーーーカ!!!!」
──チュドーン!!
「ぐわあぁぁぁぁ!!」
怪人は核の炎に包まれ地獄へと落ちた…………。
「殺ったわ♪」
満身創痍のタケルはバズーカの反動で地面に転がり、プリティラビットは慌ててタケルの傍へと駆け寄る。
「だ、大丈夫!?」
「へへ、死ぬ前にムチムチなプリティラビットが見れて……俺は幸せだぜ……」
(こいつにもトドメをさしてやろうかしら?)
こんな時でもムチムチを指摘するタケルに嫌気が差したプリティラビット。しかしよく見るとタケルは全身傷だらけで、放っておくと本当に死んでしまいそうだった。
「アンタ……俺のクラスメイトに負けず劣らずのムチムチだな。俺よ……ムチムチの女の子を見ると凄え興奮しちまうんだ……」
(変態?)
ちょっと引くプリティラビット。
「最後にもう一度プニプニしたかっ……た…………」
「タ、タケル!?」
タケルは意識を失い、揺さぶるも起きる気配が無い。その時都合良く救急隊員が駆け付けタケルは病院へと搬送され一命を取り留めた。
――数日後――
──ぷにっ
「きゃっ!」
腰周りの肉を摘ままれ振り向くと、そこにはクラスメイトのタケルが例の如く意地悪そうに微笑んでいる。
「ちょっと! 毎回毎回何するのよ!!」
「エリカ様は今日もムチムチなさっておりますな!」
「うっさいわね! 痴漢行為で然るべき所に訴えるわよ!?」
「おー怖い怖い……」
颯爽と駆け逃げるタケル。エリカはプンスカと怒りながらも、タケルの性癖にまんざらでは無い顔をしていた。
「ま、私の体で興奮してるんだから、許してやらないこともないか♪」
エリカは魔法少女なり、少しだけ大人になった気がした…………
読んで頂きましてありがとうございました(*'ω'*)