変わり者高校生達の日常~色恋と色濃い人は別物です~
初投稿作品です。
もう、心臓バクバク・・・・・・
「はぁ、帰るのめんどくさい」
グデーと自転車のカゴに腕を投げ出した。
もう空は真っ暗で、街灯がなければ隣で並走している猫柳の顔も見えなくなる。
「また始まったよ、コウのめんどくさい発言。そのうち生きるのめんどくさいとか、呼吸がめんどくさいとか言い始めるんじゃないか?」
「さすがにそこまでは言わんよ。ただ、最近は朝と昼のご飯食べるのがめんどくさくなってきたな。人間、朝昼抜いても生きていけるってね」
「おまえ、よくそれで生きていけるな。俺は朝昼夜、なんならさらに4食分食べてるな」
「その4食は、朝10時と昼3時のおやつのことだろ?後の2食ってなんなん?」
「夜の10時と朝の3時にきまっとるじゃん」
「決まってねえよ。それに朝の3時ってなんだよ。深夜じゃないのか。そんな生活を送ってるからそんな体型になるんだろ」
そう言いながら、俺は隣で自転車をこいでいる猫柳の頭から足、足から頭と視線を一往復させる。
うん、小学生の時から何も変わってないな。主に体型が。
「おまえも変わってないなー。例えば体形とか体形とか体形とか」
「体型だけかよ。一応変わってるんだぞ、こいつも。体重で言うなら2キロ。4月に測ってからまだ3ヶ月しかたってないのに、だぞ」
おなかのお肉を服越しに摘まみながら猫柳が言う。
「自覚してるならダイエットしろよ。高校まで毎日走って登校すれば1ヶ月で効果出るんじゃないか、たぶん」
「やだ、だるい」
「そう言うと思った」
俺たちは笑い合うと猫柳の入っている演劇部の話へとシフトしていった。
高校生とは、話がコロコロ変わるものなのだ。
翌週、ほぼ同時刻。
「――――そしたらネネからさ、ネコちゃんの脹脛ってよく見たらいい形してるよねって言われてさ、えっ・・・・・・って固まっちまった」
「そりゃ、固まるわ。今まで男子の中ではかわいくて優しいいい子ポジションで、部員の中のまとも枠に入ってたんでしょ?固まらない方がおかしいわ」
片手でおなかを押さえながら近所迷惑にならない程度の声で笑う。
その日は猫柳の入っている演劇部の、普通ではない性癖、好みの人達の話をしていた。
「あぁ、そうだ。ネコ、これちょっと見て」
俺はあることを思い出し、自転車を脇に止めながら猫柳に無料会話アプリを開いてそのスマホを渡した。
そこの欄の一番上にはランコという人から、「今度一緒に映画に行きませんか」という文面が、未読の状態で表示されていた。
「ほう、とうとうコウにも春が来たか」
「残念ながら僕の心は冬のままだが・・・・・・これのことで相談がしたい。どう答えるのがベスト?」
「誘いには基本的に乗る人に聞いたらあかんやろ」
「まさか、俺は人選をミスったのか・・・・・・?」
俺は頭を抱えるふりをしながら言った。
「ドヤァ~」
「そこ、ドヤるな。いやさ、一生異性と付き合う気がないんだよ、俺は。でも、これ行ったらアウトやない?」
「え、何人で行くって言っとるの」
「2人でって言いそうだから開いてないんやろ、このトーク。この前は夜通話してみたいですってきたんやけど、それは断わったんだよ。うちは夜通話厳禁なんですって」
「本当は?」
「アニメアンドゲームの時間がなくなる」
「最低だな!」
「し、仕方ないだろ。危険な匂いがプンプンするんだよ?リア充エンドはお断りなんだよ」
「さぁさぁさぁさぁ、開くのだ、そのトーク画面を。大丈夫、きっとなんとかなるさ」
俺のスマホをゆらゆら揺らしながら、片手で来い来いと手招きをする仕草をする猫柳。
なんか腹立つな。
「あいにく俺はネコと言う名の蛇に騙されてアダムとイブみたいにリンゴは食べないんだよ」
チッと舌打ちが隣から聞こえた。
「ところで、アダムとイブって何?」
「おい、おまえ一応は高校生だろう。アダムとイブってのは、簡単に説明すると、蛇に騙されてりんご食ったら神様に怒られて楽園を追放された最初の人っていうお話」
高校生にもなって知らないとは、とつぶやきながら説明する。うまくいえたかな。この説明が間違ってそうで怖い。
「そんなことより!どうやって断ろう・・・・・・」
「そこはよく誘われるこの私が教えてやろう」
「予定がない人の断り方は、金欠と言うのが一番いい」
「予定がないて・・・・・・行きたくないじゃなくて?」
「ス◯ラ◯ゥーンがやりたかった。悪気はない」
「実体験かよ!でも、まぁ、金欠は確かにいいかも。実際に今余裕ないし」
「そうそう、この前小説まとめ買いしちゃって~とか言っとけば大丈夫」
「小説のまとめ買い、か。そうしようかな」
「人の誘いを断り続けてはや15年。断りニスト8段になりました」
さっきと言ってることが違うような、と思いながら、おぉ~と言っておく。
というか、15年って生まれて数ヶ月で誘いを断ってたのかよ。
「というか、もう腹くくっていけよ。意外と話合うかもしれないぞ」
猫柳が首に親指をトントン当てながら言う。
ちがう、それは首くくれの合図だ。
「俺が求めてるのは色濃い人間なの。色恋は求めてないんだよ」
「ワンチャン色濃い人と色恋沙汰が起きるかもよ?」
隣を見ると猫柳がドヤ顔をしている。
クッ、なんか負けた気がする。
せっかくうまいこと言ったと思ったのに、上塗りされた気分だ。
「まぁ、兎に角今回は金欠って言って断っとくわ。ありがとよ、相談に乗ってくれて」
「いいって事よ」
ちょうど猫柳の家の前だったので話を切り上げ、じゃあな、と言って分かれた。
さらに翌週、猫柳の家の前で。
「そういえば、この前の、ちゃんと断われたん?」
「それがさ、家について風呂入ったらさ、眠くなって返事せずに寝たんだよ。で、次の日になってみてみたらあのメッセージが消されてて。新着で「なんでもないよー気にしないでねー」って入ってた」
「なんだ、つまらん。素直に言ってクソ」
「おい、クソってなんだクソって。こっちはメサクサ悩んでたんだぞ。あ、おい、帰るな、人の話を聞け!」
「じゃあな、また来週。おやすみー」
「おい、待て。待てと言ってるだろう!おい、ネコ!」
猫柳はヒラヒラと手を振ると家の中に入っていってしまった。
どうでしたか?
ほんの少しでも笑ったりしていただければ幸いです。
誤字、脱字、間違った言葉の使い方や表現があったら教えてください。