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Replica  作者: 根岸重玄
登校騒乱編
67/286

復活

 


 2036年6月7日午後5時20分


(――わっちは何をしておる)

『……精神体(せいしんたい)――修復、完了』

(――気を失っておったか)

至急応答(しきゅうおうとう)せよ――エリザベート=ナイトウォーカー』

(これは、『闇の眷属(けんぞく)』の声じゃな)

肯定します(アファーマティブ)――現在、当機構(とうきこう)自立型搭載人格(サブユニット)敵性(てきせい)個体(こたい)交戦中(こうせんちゅう)

小夜(さよ)がわっちの代わりに?)

肯定します(アファーマティブ)――戦況(せんきょう)敗色(はいしょく)濃厚(のうこう)原形(げんけい)維持(いじ)すらままならず』

(なッ!? 時間はもう夜じゃろ?)

肯定します(アファーマティブ)

(わかった。早くわっちに代われ)

否定します(ネガティブ)――当機構(とうきこう)のリソースにその余裕(よゆう)はありません。

 貴殿(きでん)の助力を願います』

(どうすりゃいいんじゃ)

『不明――不明、情報(じょうほう)不足(ぶそく)

(うぬらしくもない。(あせ)っておるのか?)

肯定します(アファーマティブ)肯定します(アファーマティブ)肯定します(アファーマティブ)

 このままでは個体名:小夜(さよ)が破壊されてしまいます』

(くっ、かか。よかろう。わっちも(かつ)ての大怪異(だいかいい)の成れの果て。

 理解(りかい)のできない恐怖(きょうふ)こそがその本質(ほんしつ)よ。

 (すく)ってやろうじゃないか。宿主(やどぬし)もろとも)

『――お願いします、どうか私の姉妹を助けてください』


 2036年6月7日午後5時23分


 ここにきて、目の前で起こった奇怪(きかい)現象(げんしょう)伏見(ふしみ)の動きは止まる。


「やってみるもんじゃのぉ」


 金髪(きんぱつ)(きん)(がん)の美女ことエリザベートは両手を(にぎ)ったり開いたりしながら調子を確認(かくにん)している。

 現在の身体年齢は20代前半といったくらいである。


「ところで、参ったとすら言わせんのは、ちと流儀(りゅうぎ)(もと)るのではないか?

 “不滅(ふめつ)英雄(えいゆう)”よ」


 そういってエリザベートが伏見(ふしみ)睥睨(へいげい)する。


(だれ)だァ、神聖(しんせい)一騎打(いっきう)ちに水を差しやがるのは」

「く、かか。一騎打(いっきう)ちと思っていたのはうぬだけよ。

 小夜(さよ)は『闇の眷属(けんぞく)』の総力(そうりょく)をもって貴様(きさま)(つぶ)すと言わなんだか?

 わっちも『闇の眷属(けんぞく)』の能力の一部じゃよ。

 で、あれば何の問題もないじゃろ」

「いや、そんなことは言ってなかったが。

 まァいいぜ。で? 実際どォ逆転(ぎゃくてん)してくれんだァ」


 伏見(ふしみ)不敵(ふてき)にもエリザベートを挑発(ちょうはつ)するが、エリザベートは傲岸(ごうがん)態度(たいど)を改めることはない。


逆転(ぎゃくてん)? ()なことを、わっちが表に出てきた時点で既に逆転(ぎゃくてん)ならしとる。

 小夜(さよ)(いじ)めてくれたツケは払ってもらうぞ?

 そうさな、(あらた)めて名乗ろうか。

 ()(あゆ)む者、吸血(きゅうけつ)(しゅ)頂点(ちょうてん)異界(いかい)大怪異(だいかいい)――エリザベート=ナイトウォーカー、以後よろしくのぉ」

「――随分(ずいぶん)とまァ、大物の登場(とうじょう)じゃねェか。

 人類(じんるい)(しゅ)の敵、『討伐令(とうばつれい)対象者(たいしょうしゃ)が、どういう了見(りょうけん)でまだ生きてやがる!」

「あっ、やっべ。今のなしじゃ。

 わっちは通りすがりのただのエリちゃん!!

 よろしゅうお願い申し上げるのじゃ」

「通るかッ! んなもん!」


 伏見(ふしみ)がエリザベートとの距離(きょり)を一瞬で()め、エリザベートに殴りかかる。

 それをエリザベートは(かる)く片手で受け止める。


「んお!?」

「まず、認識(にんしき)を正そうか。小夜(さよ)とわっちをごっちゃにされては(かな)わん。

 この状態のわっちの体は特別製(とくべつせい)でな。

 ベースである『闇の眷属(けんぞく)』を『漆黒(しっこく)(つばさ)』でコーティングしておる。

 貴様に毀棄(きき)できない魔導書(まどうしょ)破壊(はかい)する(すべ)はあるのか?

 ないのであれば、そもわっちを傷つけること(あた)わぬぞ?」


 エリザベートはそのまま伏見(ふしみ)の腕を高速(こうそく)で回転させ、伏見(ふしみ)の腕を容易(たやす)()じ切る。


「くッ、《正常稼働(オールグリーン)》」


 伏見(ふしみ)がそう(つぶや)くと、エリザベートの手元に残っていた伏見(ふしみ)の腕が消え、伏見(ふしみ)の腕が現れる。


「なるほどのぉ。貴様(きさま)のそれは『再生』ではなく、欠損(けっそん)を元に戻す魔術なのか」

「だったら、どォなんだ。確かに、俺はお前を傷つけられねェのかもしれねェ。

 だが、それはお互い様って感じだが?」

「それはそれでよかろう。わっちの目的は時間(じかん)(かせ)ぎ。

 千日手(せんにちて)はむしろ望むところじゃ」

「……確かに、お前の言う通り、立場が逆転(ぎゃくてん)しちまったようだな」


 それはエリザベートが伏見(ふしみ)に向けた言葉であった。

 逆転ならとうに()んでいると。


「何か誤解(ごかい)しておるようじゃが」


 そういうと、エリザベートは伏見(ふしみ)嗜虐的(しぎゃくてき)に笑いかける。


「わっちは千日手(せんにちて)で終わらせるつもりなど毛頭(もうとう)ないぞ?

 言ったろう? 小夜(さよ)(いじ)めたツケを払わせるとな。

 少なくとも、同じ目には合ってもらうぞ。“不滅(ふめつ)”」


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