1章 ー夢からの使者ー
「ふぅ~」
痩せた男がつぶやいた。
「なんかもうペットボトルおしっこも慣れてしまったな…。これ500mlのやつだと溢れてしまうんだけど…。」
もう風呂にも当分入って無い様子で、シャツが真黄色に汚れている。
「タカご飯ここに置いてくわね」
「お弁当飽きたよ」
「今度はハンバーガーを買ってきてあげるから」
「おぉやった。」
「(いつまで、あの部屋にご飯を持っていかないといけないのかしら)」
「じゃぁ、仕事に行ってくるね」
タカは部屋に閉じこもってテレビゲームに夢中で、動き出すのはもっぱら夜だ。
この年の男なら中学校に通っているはずだが、学校にはまったく行ってないようだ。
「今日は夜、TVでゲームウェイブがあるんだよな。その為に寝よう。」
「…………。」
あれ?
「…お母さん?」
「誰も居ない。お母さん???」
「お母さん???」
一人で自宅にいたタカは、闇の組織に自分が狙われているような不安に襲われる。
「お母さんに会いに行かないと、危ない」
タカは母の勤める駅前のショッピングセンターまで自転車を飛ばした。
中に入ると警備員にこう尋ねた。
「お母さんはどこですか?」
「おかあさん?」
「○子です」
「そんな人は居ないよ(なんだ?この子は?)」
「やっぱり!みんなグルになっている!ここに母が居ないはずは無い!」
「クッ(警察に行くしかない…)」
タカはショッピングセンターを出ると駅前の交番へ向かう。
「どうされました?」
「助けてください!!!狙われているんです」
「誰にですか?」
「殺されてしまう!」
「わかりました。自宅はどこですか?電話番号は?今、家の人が来てくれるからね」
「なんで助けてくれないんですか?」
「(こういうの居るんだよなぁ…)」
恐怖に震えるタカ。職場に連絡が行き母親が来たようだ。
「母さん!!」
「どうしたの!?タカ?」
「警察が助けてくれないんだ」
「ちょっと病院で見て貰ったほうがいいのではないでしょうか?」
「(この子どうしてしまったの?…)すみません…申し訳ありません。」
つづく