6話 ~ランチ・アット・キャッスル~ お城で昼食を、あるいは昼時を狙った訪問者
結局、行き先は不明のまま、転移させられた。
しかも、またゾーイの爆乳に顔を埋めて……
思ったんだけど、ゾーイってワンピースの下は何も着けてないんだよね。
しかも服の生地薄いし……
「城……ですか?」
目の前に建つのは、大きくはないが城のようだ。
「見たらわかるだろ、城だよ」
見て分からないから聞いてるんですけどね。
「でも、城って……仲間集めですよ?」
まさか今度は、現役の騎士とか言い出すつもりじゃないよね。
「今度のターゲットは……姫様だからだよ」
「ひ、姫ぇぇ??」
「ドワーフのな!」
「えーっと、つまりここは……」
「ドワーフのお姫様のお城さ!」
元聖騎士団隊長の次は、ドワーフのお姫様ですか?
もう、好きにしてください……
「さて昼飯をごちそうになりに行くぞ」
「丁度いい時間だしな」
どちらかと言うと、二人とも昼飯メインなんですけど。
城門の前には、兵士の姿の少女が二人いる。
「少女の兵士ですか?」
「はぁ? 何言ってんだ、フィル」
「いや、どう見ても少女ですよね?」
「ドワーフの城だって言っただろ。ドワーフは、あれで大人だ」
そういえば、ドワーフって小さいんだった。
男性は小柄なだけで髭もあるらしいけど、女性は大人でも少女の風貌のままなんだっけか。
知り合いにドワーフなんていなかったしなぁ……
「「何用だ!」」
「ロッティに用があるんだ、通せよ!」
「ロッティ……姫様をそう呼ぶとは無礼な!」
「貴様ら何者だ!!」
「さては、お前ら新人か? しかたねぇな……エレーヌでいいから呼んで来いよ」
「エ、エレーヌ様を……近衛隊長を呼び捨てとは、益々もって無礼な!!」
「チッ! 面倒くせぇ奴らだな。いっそ眠らせるか?」
いやいや……
仮にもお城ですよ? 相手はお姫様ですよ?
当たり前の事じゃないですか。
「何事だ! 何を騒いでいる?!」
「……誰か来ましたよ」
「おう! エレーヌ。久しぶりだな」
隊長も女性なんだ。
もしかして、近衛隊は全員女性なのかな?
「これはこれは、ゾーイ様とヴァニラ様。お久しぶりです」
「こいつらが通してくれなくてな……」
「そうでしたか。すいません、新人なもので」
「まあいいや……通るぞ!」
「あっ! お待ちください。そのお連れの方は……」
僕の事か。
そうだよな、知らない奴だし。
「男性ですよね?」
「こいつが女に見えるのか?」
「ご存知かと思いましたが、この城はシャルロット様専用の城、男子禁制――」
「知ってる」
男子禁制なのか。
だから近衛兵も女性だったんだ。
「だが、見ての通りのガキンチョだ。問題ないだろ?」
ぜんぜん見ての通りじゃないんですけどね。
「いや、しかし……あっ!」
ゾーイがエレーヌを睨んでいる。
どう見ても脅してるようなんですけど。
「ま、まあ……ゾーイ様のお知り合いでしたら……問題ないです」
完全に、無理やり通ってるよね。
もはや門番の意味を成してないんですが、いいんだろうか?
「ところでロッティーはどこにいる?」
「丁度お昼なので、只今お食事中です」
「食堂だな、分かった。勝手に行くから付いてこなくていいぞ」
「わ、分かり……ました」
言っても無駄たと思っているのだろう。
エレーヌは僕たちが城の中へと入るのを、諦め顔でただ眺めているだけだった。
「おーっす!」
お姫様の食事の邪魔をしてるってのに、その挨拶ですか……
「おっ! ゾーイじゃないか。どうしたのじゃ?」
「ちょっと相談があってな」
「相談? ヴァニラまで連れて、わらわに何の相談なのじゃ? それに……なんだその小僧は」
小僧って……僕、だよね。
今、見た目は10歳くらいだし、該当するのは僕しかいないし……
でも、お姫様に小僧って言われるは、さすがに心外だ。
どう見ても今の僕よりもっと下にしか見えないんですが?
目の前のドワーフのお姫様、シャルロットは大きな金色の瞳で僕を見つめている。
年の頃は5、6歳といったところか。
ツインテールに結った金髪がキラキラと輝く美少女だ。
いや、美幼女と言うのかな?
「相談と言うのはな。そう……この猫耳小僧の事なんだよ」
小僧から猫耳小僧にヴァージョンアップ、っと……
まあ、仕方ないね。
小僧だし、猫耳だし。
「その小僧の事で、何故わらわに相談するのか分からんが……まあいい。今、丁度昼食を取っていたところじゃ。まだなら一緒にどうだ?」
「そうだな。せっかくだからご馳走になるか」
白々しいにも程がある。
「何だフィル。何か言ったか?」
「いえ、何も……」
心の声が漏れたかな?
「リリィ。この者達の食事の用意を」
「かしこまりました」
シャルロットの後ろに控えていた女性は、奥へ下がっていった。
もしかしたら人払いも兼ねているのかも知れない。
「それで、相談とは何なのじゃ?」
「その前に! ちょっといいかな?」
どうしたんだろう?
ヴァニラが急に割り込んできた。
「何じゃ? ヴァニラ」
「その葡萄酒を貰ってもいいかな?」
ありえない……
それって今聞くことなのかよ…………