5話 ~スノーホワイト・パラディン~ 純白の聖騎士、あるいは美乳の残念美人剣士
――むにゅ、むにゅむにゅ……むにゅーっ!
なんだ? でかいマシュマロが顔に当たっている。
同じシシチュエーションがあったような……
デジャヴかな?
「おい、フィル!!」
「あれ? 僕……どうしたんだっけ?」
「目覚めたか」
目の前にはゾーイの胸、いや顔が。
そうか、さっきのはゾーイの爆乳か……
本日二回目、いや転移の時を含めると三回目の爆乳攻撃だよね。
もう少し自分の胸の大きさに配慮するべきだと思うんですけど。
「ティーロワイヤルを飲んで倒れたんだよ」
ああ、そうか。
そういえばそんな記憶が……
「でも、なんで……」
「火酒だな。アルコールのせいだ」
「え、いや、でもあれだけで?」
酒は強いほうじゃないけど、いくらなんでもティーロワイヤルをたった一口で倒れるほど弱くはない。
「呪いのせいかもな。少年だし」
「そ、そんな副作用まで?」
「まあ、仕方あるまい。飲まなきゃいいだけだ」
「酒が飲めないなんて、最悪な呪いだな」
えーっと……
ヴァニラさん、今なんて?
「ヴァニラにとっては、な」
「当たり前だ。酒以外は飲み物とは認めん!」
だから紅茶がティーロワイヤルなのか……
すでに残念美人との片鱗が見えてきたような気がする。
いや、そんな事より……
「お話の方はどうなったんですか?」
「今までの経緯も、呪いを解く方法の説明も終わったぞ」
後はヴァニラさん次第ってことか。
「で、どうする、ヴァニラ?」
「ふむ……呪いを解く条件が魔王を倒すこと。しかも全てのおっぱいの女性を仲間にして……か」
美人の口から“おっぱい”って言葉が出てくると、こっちが恥ずかしくなるな。
「にわかには信じがたいが、ゾーイが言うのならそうなのだろう」
「どうせ暇だろ! 魔王討伐に参加しろよ」
「暇なのは否定しないが……」
……否定しないんだ。
「それに魔王を倒せば懸賞金も入るぞ。酒代で金に余裕がなくなって来たんじゃないのか?」
「確かに貯金が目減りしてきたのは否定はしないが……」
それも否定しないんだ。
「人助けして、暇つぶしになって、懸賞金も入る。最高だろ?」
「人助けか……そうだな! 酒が飲めない体なんて、呪い以外の何物でもないよな」
酒は飲めなくても構わないんですけどね。
「よし! お前を酒が飲める体に戻すために、パーティーに参加してやろう」
いやだから、酒はどうでもいいんですって!
「リーダーはフィルだが構わんよな?」
「別に構わんな。それに、それが呪いを解く条件なのだろ?」
「よし、じゃあ決定だな。フィル、よかったな! 一人増えたぞ」
何だかよくわからないけど仲間が増えた。
「よろしくおねがいします。ヴァニラさん」
「ヴァニラでいいぞ」
「いいんですか? 呼び捨てで」
「構わん。お前がリーダなんだろ? 軍隊とはそういうものだ」
いや、ただの冒険者パーティーなんですけど?
「改めて自己紹介しよう。元王立聖騎士団特別遊撃隊隊長のヴァニラ・アイスだ」
「底辺冒険者のフィルです。よろしくお願いします」
名の通った魔道士に、元聖騎士団の隊長。
そのリーダーが底辺冒険者の、この僕とはね……
「おいフィル。剣が光ってるぞ」
ゾーイの言葉に魔剣に目をやると、たしかに光っている。
それを確かめると同時に、またもや頭の中に声が響いた。
《……美乳》
微乳? いや、美乳か?
頭の中に伝わるイメージから察するに美乳のようだ。
それにフィオナは微乳と呼べるほど小さくなさそうだ。
剣基準なので、その辺は分からないけど……
「おい、剣が光ったってことは……何乳だ? ヴァニラは何乳だった?」
何でゾーイはそこに食いついてくるんだ?
しかも“何乳”って……
「美乳だそうです」
「ププッ! 微乳? おい、ヴァニラ! お前、微乳だってよ」
「えーっと……美しい方の微乳ですよ」
「なんだ……微乳じゃなくて美乳か? ちっ!!」
「何? 私のおっぱいは美しいということか? ふふん♪」
「ふん! オレなんか爆乳だぜ! 凄いだろ?」
「大きいだけでしょ? 私のは美しいんです♪」
もう訳が分からないよ。
大丈夫なんだろうか、このパーティーは……
「ゾーイ! 胸の話は後でいいから、次はどうするの?」
遮らないといつまでも続きそうだ。
「ああ、そうだな……候補はあいつとあいつ、二人いるが、被りそうだな」
被る? 何が?
「あいつとあいつか……確かに被るな」
ヴァニラも?
だから何が被るの?
しかも、あいつとあいつって……誰と誰?
「まあ、そろそろ昼時だし、昼飯的にあいつの所よな?」
「そうだな、ゾーイ」
もう意味が分からないよ……
「んじゃ、行くとするか」
「待て……着替えをしてくる」
さすがに、剣士が剣も持たずにワンピース姿では様にならないよな。
「準備が必要とは、剣士とは面倒なもんだな」
「準備がいらないのはゾーイだけです!」
「そんなもんかぁ?」
「そんなもんです」
「待たせたな」
ヴァニラが準備を終えて戻ってきたみたいだ。
純白の鎧に、純白の剣。
確かにそれは、純白の聖騎士の名に相応しいけど……
「それって……」
「いいだろう♪ お気に入りの装備なのだ!」
お気に入りって……ビキニアーマーがぁ?
何故に下乳から太ももまでが開いてるんです?
しかもその間の部分はタンガ風で、お尻がほぼ丸出しですよ。
「軽くて通気性もいいんだ」
そりゃあ、そうでしょうとも。
「いいんですか、あれで?」
「何がだ? ヴァニラはいつも、ああだぞ」
いつもなんですね。
じゃあ仕方ないですよね……
「じゃあ行くぞ!」
大丈夫なんだろうか、このパーティーは……