3話 ~ゲット・ザ・パーティー・スターテッド~ メンバー集めの始まり、あるいはおっぱい収集の始まり
手の中の“ニホントウ”が妖しく光るとともに、僕の頭にある言葉が聞こえてきた。
《……爆乳》
「えっ???」
頭の中に響いた言葉、それは間違いなく“爆乳”という言葉だ。
つまり……どういう事だ?
「フィル、もしかして剣が何か言ったのか? なんて言ったんだ?」
ええと、ですね。
いいのかこれ? 言っても。
「……ば、爆乳、って……」
これって、つまりはゾーイの、こと……だよな?
「あ、そうか、オレは“爆乳”か……。デカいとは思ってんだが、まさか爆乳とはな。ぜいぜい巨乳程度かと思ってたぜ」
え? 何これ?
もしかして、おっぱい判定は剣がするの?
「そういえば言ってなかったな。胸の大きさの判定は“ニホントウ”がするんだ」
と言うよりは“中の人”が判定してるんですよね。
結局は“中の人”の判断だけが大きさの基準って事ですね。
「ところでこの剣には、何か特殊な力とかあるんですか?」
魔王を倒せとかいうからには、何か力があってしかるべきだ。
「あ……ああ、それも言って無かったな」
何だろう、不安しかない。
「その剣はな、魔物は切れないんだ」
えーっと、何それ? 意味ないよね。
「いや、物とかは切れるぜ。魔物とか魔族といった魔に属するものは切れない、というか傷つける事が出来ない」
だから、それだと魔王は倒せないんじゃ……
「その代り、斬ると魔力を吸収する。あと、敵対意識みたいなものも消し去るから、結果的には殺さずに無効化出来るな」
おや? 何だか光が見えてきたような気がする。
「あとは剣の技術もアップするようだぜ! よかったな、底辺冒険者君!」
うっ……
いやね、分かってたとは思うよ。
でもね、やっぱりばれてたと思うとね……
「まあ、それはともかく、仲間を集めなきゃ始まらないって事だぜ、どうする? あてはあるのか?」
「あったら何の問題もありませんよ。そもそも僕に女性の知り合いなんて、ほぼいないですし」
「そうか……そうだよな!」
そこで納得されるのも、ちょっと……
「とりあえず、魔王を倒しに行くんなら強い奴の方がいいよな! 何人かあてはあるから、会いに行ってみるか」
「えっ! 本当ですか?」
強い奴って……
そんな女性を何人も知ってるとか、何なんだ? この人。
「ああ、だが仲間になるかどうかまでは分かんないぜ」
「それは仕方ありませんよ。本人次第ですから」
そもそも底辺冒険者の僕と、パーティーを組もうって話に乗って来る強い女性なんて、いる方がおかしいって話だ。
「じゃあ、早速出かけるか!」
「えっ! 今すぐ行くんですか?」
「当たり前だろ! 早く戻りたいんだろ?」
「いや、それはそうですけど、旅の準備とか……」
「んなもん、いらねぇよ。歩いていくわけでもあるまいし」
「えーっと……歩かないんですか?」
まさかドラゴンに乗るとか?
いや、さすがにドーラは乗るにはちょっと小さいよなぁ。
もしかして、他にもドラゴンがいるとか……
「歩くわけないだろ。俺を何だと思ってんだ? 魔道士だぞ」
いやいや、魔道士でも歩くよね?
「遠出と言ったら転移魔法に決まってるだろ!」
決まってないと思うんですけど。
何その“魔道士は魔道で移動が当たり前”みたいな言い方……
しかも転移魔法って、結構な上級魔法ですよね?
そんな簡単に――
「ホイホイっと」
「……何ですか、これ」
「何って、見たらわかるだろ。魔法陣だよ」
「それくらい僕にもわかりますよ。何の魔法陣なんですか?」
「転移魔法の魔法陣に決まってるだろ。話聞いてないかったのか?」
「いや……転移魔法ですよ?」
「だから?」
だから、って……
転移魔法って上級魔法ですよね?
簡単に描き過ぎじゃね?!
「さて、準備も出来たし、出発するぞ! フィル、オレに抱きつけ」
「だ、抱きつけ?」
「おう! フィルは魔法力低いからな。オレから離れたら、異空間の狭間に漂っちまうぞ」
「いや……でも」
何も抱きつかなくても……
「ごちゃごちゃ言ってないで早くしろよ!」
ムギュギュウゥゥ…………
胸が、ゾーイの胸が。
爆乳が、顔面に……
「|“転移の扉よ、開け!!”(ラ・ポルト・デ・ラ・メタスタス・ウーヴィル・トワ)」
耳からはゾーイの呪文が聞こえる。
しかし、視界は爆乳に奪われたままだ。
僕はゾーイとともに転移魔法で目的地へと飛ばされた。
目的地がどこかは知らないけど……