29話 ~パーティー・オブ・ザ・パーティー~ パーティーのパーティー、あるいは風呂までの時間
「いや、まだだな」
ゾーイのその一言。
そう、例のあれしかない。
「やはり出発前には、盛大な酒宴が必要だな」
あれ?
てっきり例のあれかと思ったけど、違ったみたいだ。
「で、その後に……風呂だ」
……ああ、やっぱりね。
ゾーイがやらない訳が無い。
しかし“裸の付き合い”とかどこかの習慣なんだろうか?
ゾーイはどこの出身なんだろう?
「ということで、夕方までは自由行動だ。各自好きなようにしてくれ……って、これはリーダーたるフィルの台詞だな」
リーダーって言ったって、僕はただの飾りで実質のリーダーはゾーイだしね。
「僕がリーダー、ゾーイがサブリーダー、ってか参謀でいいんじゃない?」
で、リーダーは黙って構えているだけでいいと……
「おお! いいな、それ。そういう事にしよう」
誰も異論は無いみたいだ。
文句を言うのはロッティくらいだろうけど、元々そんな感じだしね。
「一旦、家に帰るのニャ」
「そうねぇ、あたいも店に行ってみるみようかしら」
ニケとクレオは家に戻るみたいだ。
「あ、あの……」
「なに? エマも家に戻るかい? 別にかまわないよ」
母親が夕方には戻るらしいが、今は弟君が家に一人でいるから心配なのだろう。
「それもそうなんですけど、フィル君! ひとつ質問が……」
「質問? 何かな?」
「ゾーイさんの言ってた、お風呂って、何の事ですか?」
来たね、その質問。
「ああ、それね……パーティーの結束を深めるとか何とかでさ。みんなで一緒にお風呂に入るんだ」
僕も一緒にね……
「そうだったんですね。そういうのが一般的なのかしら?」
そんな訳はない! ……と思うけどね。
エマは冒険者登録をしてあるけど、それは薬草を売る為に便利だからだ。
魔物を倒しに行くパーティーに参加したことはないのだろう。
僕も無いけど。
「では私もいったん帰って、母が帰り次第戻りますね」
エマもそう言って、ニケやクレオと一緒に街へと戻って行った。
帰ってきてからどうなる事か……
アリスは宴の準備、ヴァニラとロッティは武器の手入れを始めた。
リエルはとっくに部屋に籠っている。
「フィルちゃん、ワタシもちょっと戻ってもいいかしら?」
「いいけど、呼び戻すにはどうすればいいのかな?」
「名前を呼べばすぐ来るわよん♪ じゃあちょっと行って来るわね」
赤い煙とともにグレモリーはどこかへ消えてしまった。
一応、グレモリーも魔王だけど、部下とかいるんだろうか?
様子を見に行ったのかな?
「メル、ちょっと体をチェックするぞ」
ゾーイはメルのチェックを始めるようだ。
いくら水銀で出来ていても、魔人形は魔人形だからね。
どこか問題がないか調べるつもりらしい。
さて……僕はどうしよう。
とりあえずソファに座って、一休みでもしよう。
「明日には魔王討伐に出発か……」
思えば3日前までは普通の生活だった。
スライムを狩ったわずかなお金で、のんびりその日暮らし。
それが今や、大所帯のパーティーを率いて魔王討伐に行くことになるなんて、人生何があるか分からないよな。
ゾーイに会わなければ、ゾーイが森に来なければ……
いや、僕が結界無効の体質じゃなければ、今頃もスライムの森でスライムをちまちま狩っていたはずだ。
どっちが幸せなのかなの……
…………
……
「おい、フィル! 起きろよ、もう夕方だぞ」
……
…………あれ? 寝てたのか……
目覚めるとそこにはゾーイの爆乳があった。
このシチュエーション何回目だ?
なんだかんだ言って、疲れがたまっていたのだろう。
どうやらソファで寝てしまったようだ。
いつの間にか、毛布も掛けられている。
「明日から魔王討伐に出かけますので、風邪を引いてはいけないと思いまして」
さすがメイドだ。
アリスが気を使って掛けてくれたみたいだ。
「もうみんな戻っているし、酒宴の準備も出来てるぞ!」
みんなすでに戻ってきていて、僕が起きるのを待っていたようだ。
あまりに起きないので、ゾーイが起こしたみたいだな。
「ごめん、みんな! 早速始めようか」
テーブルには、アリスの作った豪華な食事が並んでいる。
もちろん酒宴と言うだけあって、麦酒や葡萄酒、様々なお酒も用意されていた。
僕は飲めないけど……
「じゃあ、乾杯しようか」
みんなには葡萄酒、僕にはオレンジジュースが注がれる。
「では、無事魔王を倒す事を祈って……かんぱーい!!」
ゾーイの音頭で乾杯で酒宴は始まった。
みんなアリスの美味しい料理を食べ、酒を飲む。
何度も言うが、僕はジュースだ。
「食ったし飲んだし、英気は充分養ったな」
お腹も満腹になった頃、ゾーイが突然立ち上がる。
「次は恒例の、全員で風呂だ!」
立ち上がった時点で分かってたよ。
全員ね、全員。
もちろん僕も含めて、ですよねぇ……
「一応言っておくが、フィルもだぞ」
知ってます。3回目ですから。
「えっ?! フィル君も一緒なの?」
「リーダーなんだから、当たり前だろ」
そう……知らないのはエマだけなんだよなぁ。




