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27話 ~オーディナリー・ガール~ 普通の町娘、あるいは普通の普乳

 一時間後……

 弟君の体の茸は、ひとつふたつと枯れ落ちていく。


「お姉ちゃん……キノコ……取れてくよ」

「うん……うんっ!」


「すぐに全部取れるぞ」


 茸はどんどんと落ちていって、あっという間に弟君の体からは茸が無くなった。


「こんなにすぐに……」


「オレの特製だからな! その辺の魔道士の薬とは効き目が桁違いなはずだぜ」


 他の魔道士の薬の効き目は知らないから、較べようがないんだけどね。


「あとはこれを飲めば終わりだ」


 今度は小瓶に入った液体を渡した。


「これは?」


「回復薬だ。オレ特製のな!! 使わなくても一週間もすればよくなるんだが、今回はそういう訳にはいかないからな」


 回復薬を飲んだ途端、弟君は見るからに回復していき、茸の生えた跡も消えて行った。

 さすがゾーイの特製回復薬だ。

 その辺の回復薬とは効果が全然違う……たぶんだけど。


「凄い! あっという間に茸の跡が消えたわ!」


「お姉ちゃん! ぼく、元気が出てきたよ♪」


 弟君は完全復活したようだ。

 これでこのの仲間入りはほぼ確定したようなものだけど……


「これで完了だ! 約束は果たして貰うが、まさかお前たち親がいない訳じゃないよな?」


 弟君はどう見ても10歳程度なのだ。

 ましてやゾーイの薬で完全復活したとはいえ、親がいなければ、弟君を一人置いて魔法討伐に参加させるわけにはいかない。

 そういう僕も、見た目は10歳くらいなんだけどね!


「いえ、父も母も仕事に出ているだけです。いつもは母は家にいるのですが、少しでも弟の治療費を稼ごうと働きに出ています」


「そうか。それなら問題はなさそうだな」


「魔道士さん! わたしはどこへで何をすればいいのでしょう?」


「お姉ちゃんどっかいくの?」


 お姉ちゃんは今から魔王討伐に、って……

 よく考えたら、その“お姉ちゃん”の名前も聞いていなかったよ。


「ちょっといいかな? 今更だけど君、名前なんて言うの?」


「ぼくマイケル!」


「いや、弟君じゃなくてね」


「あっ! 名前も言ってなかったですね。わたし、エマです」


 こっちも名乗ってないけどね。


「そういやこっちも名乗ってなかったな。オレはゾーイだ」

「ボクはフィル」

「グレモリーよ」

「アタシはメルなの」


「ええと……ゾーイさんとフィル君、グレモリーさんとメルさんですね。では改めて、ゾーイさん! わたしは何をすればいいのですか?」


「魔王討伐だ」


「ええっ?! 魔王……とう、ばつ? そんなのわたしが? わたし……冒険者の登録はしてますけど、薬草取りくらいしか出来ませんよ?」


「問題ない。スライムしか狩れない奴もいるしな」


 すいませんね、スライムしか狩れなくて。


「えっ?! そんな人が魔法討伐に参加するんですか?」


「参加どころか、そいつがリーダーだ」


「えっ? ええっ?! リーダー??」


 あー、すいません、なんかすいません。

 いやほんと、マジですいません。


「目の前のフィルこいつのことだけどな」


 怪訝な顔の、エマの視線が僕に向けられる。


「フィル君のこと? どう見ても弟と同じくらいの15歳未満みせいねんですよね? 猫耳だからドワーフでもないし……」


「フィルは15歳未満みせいねんでも猫耳族でもないぞ。人族の16歳の立派な冒険者だ」


 Fランクが立派かどうかは別として、だけどね。


「もう分からないことだらけで、何が何だが……しかも何故、わたしが?」


 エマが頭を抱え出してしまった。


 それはそうだろう。

 いくら冒険者といっても、それは薬草を取って売るための便宜性の為に登録しているにすぎない。

 しょせん、ただの普通の町娘なのだ。

 それが突然、見た目が猫耳少年ショタの冒険者をリーダーに、魔法討伐に参加しろと言われたら、僕もそうなる。 


「よし! 順を追って説明するぞ。……実はフィルのこの姿は、魔剣の呪いなんだ。その呪いというのがだな――」


 本日最初、そして最後の最後になるであろう、ゾーイによる魔剣の呪いの説明が始まった。



「――という事でだ。普乳であるエマが必要なんだよ」


「えーっと……つまりフィルの呪いを解くために、わたしが必要だということですね」


「そういう事だ。すでに魔王を倒すには充分すぎるメンバーだから、エマは同行するだけでいい」


「わかりました! 弟の病気を治してもらった代わりなら、それくらい何の問題もありません」


「よし! リーダーはフィル。そして、パーティーの決め事は守ってもらうぞ」


「はい」


「ただし! エマが本当に普乳かどうか判断するのは、その魔剣だ。普乳でなければ残念だが……用はないな」


 そう……

 普乳でなければどんなに強かろうが、何の意味はない。

 逆に普乳であれば、エマのようなにその辺の町娘でも何でもいいのだ。

 だって、すでに魔王を三回倒せるほどのメンバーが揃っているのだから……


「魔剣の判断、ですか?」


「ああ。今に魔剣が光る。その時フィルの脳内に、エマのおっぱいの種類が伝わるんだ」


「はあ……そうなんですね」


「ほら、光ったぞ!」


 腰の魔剣が光り出す。

 聞こえてくる声は、たぶん普乳なはずだ。


《普乳……おっぱいコンプリート》



「フィル、どうだった? 普乳か?」


「はい。エマは普乳でした。これで……」


「おっぱい完全制覇コンプリートか」


 やはり普乳で間違いなかった。

 魔剣やゾーイの言う通り、これでおっぱい完全制覇コンプリート、あとは魔王を征伐するだけだ!



「普乳、普乳って言われるのも、ちょっとね。そりゃあゾーイさんたちみたいに大きくはないけど……」


 エマが何やらブツブツ言っている。


 いいじゃないか、普乳で!

 大体にして、今いるのは比べるのが間違いなメンバーだしね。 

 微乳も貧乳も、無乳だっているんだ。

 それに比べたら普乳なんて立派な方だよ!


 なんて、言葉に出しては言えないけどね。


「改めて、よろしくね、エマ!」


「こちらこそよろしく、フィル君」


「冒険者登録してるみたいだけど、ランクは何?」


 まあ、薬草取りだけみたいだからFランクだと思うけど。


「たしか、Eランクよ」


 え? Eランク??

 僕より……上?


「こりゃいいや! スライム狩り専門スレイヤーがFランクで、薬草取りがEランクだとよ」


「スライムスレイヤー? Fランク?」


「ああ。スライムスレイヤーはフィルの異名だ。で、そのスライムスレイヤーさんはFランクなんだそうだ」


「Fランク……ですか。でも異名ってかっこいいですね! さすがにわたしにはありませんから」


「そうか、そりゃあそうだよな。普通は異名持ちといったらCランク以上だしな」


 すいませんね、Fランクのくせに異名持ちで。

 第一、異名っていうより蔑称だから……


「わたしだったら何になるでしょう」


「普通だし普乳だからなぁ……普通の町娘オーディナリー・ガールってとこだろうな」 


「何か素敵ですね」


 普通なのにかっこいいな。


 まあ、僕は普通以下のFランクだから……ね。

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