22話 ~インバリッド~ 結界無効、あるいはパーティーも無効?
「でもフィルちゃんって、なかなかおもしろい能力持ってるのねぇ」
おもしろい能力?
何の話?
もしかして、おっぱいを呼び寄せる能力とか……
それは無いな。
そんな能力があるなら、ゾーイの頼らなくても集まってるよな。
「フィルの能力? 何の事だ?」
「あら、ワタシを呼ぶほどの魔力があるくせに、あんた、フィルちゃんの能力を見抜いてなかったのねぇ」
「フィルに能力なんてあるか?! ……って、アレはそのせいか?」
もしかして、何?
アレって、何?
何か心当たりでも……
「アレが何なのか知らないけど、フィルちゃんの能力は“結界無効”よぅん♪」
結界無効って……
「なに、それ?」
「そのまんまよ! フィルちゃんには結界が役に立たないの。本人も気が付いてないみたいだし、能力っていうよりは体質なのかしらねぇ」
つまり僕は、結界が効かない体質ってことなのかな?
ということは、ゾーイが言ってたアレって、もしかして……
「フィル! アレもコレも全部おまえのその“結界無効”のせいじゃねぇかよ!!」
ゾーイの結界内に進入出来たのも、魔剣を抜けたのも、僕の体質のせいだったんだ。
「オレの結界が、そう簡単に綻ぶなんてある訳ないと思ってたら、そういうことかよ」
まあ……そういうことだよね。
「全部オレのせいにしやがって……」
「あ……いやぁ」
「フィル! お前がオレのせいだって言うから、魔王討伐の仲間になった挙句にメンバー集めまで協力させられてるんだぞ」
不味い、非常に不味い。
パーティー解散の危機かも。
「おいおい、ゾーイ! 私を引っ張り回しておいて、いまさらやめるなんて言うつもりじゃないだろうな?」
「いや、それはだな……」
さすがヴァニラ、いいこと言ってくれます!
「そもそもが、フィルが毎日来ている森に、貴様が家を移したのも悪かろう!」
「まあ、そういう考え方も……無くもないが」
ああ、ロッティが天使に見える。
無乳だし。
「でも、ゾーイ……契約したんだよ、ね?」
「いや、あれは契約とまでは……」
いいぞ、リエルも天使のようだ。
貧乳だし。
「互いに条件を飲んだのですから契約ですよ、ゾーイ様。契約は絶対です!」
「うっ……」
さすがアリス! 傭兵だけのことはある。
「せっかくここまで集まったのにもったいないのニャ」
「あたいの暇潰しを無くする気かい?」
そうそう。
ニケもクレオもそう言ってるし。
「分かったよ、続けるって! そもそも……オレはやめるなんて一言も言ってないぞ」
よし!
これで魔王討伐は継続できそうだ。
ゾーイがいなければ爆乳が消えるだけでなく、これから作る予定の、超乳の魔人形すら出来なくなる。
いくら魔乳が揃っても、爆乳と超乳がいなければ意味ないんだよな。
普乳は何とかなりそうだけど……
「なんだかアタシ、いらない事を言ったみたいだねぇ?」
グレモリーはちょっと都合が悪そうにしている。
「いや、僕の体質が分かっただけでもありがたいよ。知ってるか知らないかでだいぶ違うからね」
「あら、そう? そう言ってもらうと助かるわ」
「知ってたら、魔剣なんて触りもしなかっただろうしな!」
いやマジですいません。
ほんとにね……
「今更言っても仕方ないだろ、ゾーイ! それより魔人形はどうするんだ?」
「ああ、それがだな――」
さすがゾーイと付き合いが長いヴァニラだけある。
上手く話を逸らしてくれた。
「――ってことで、水銀で作ってみようと思う」
「水銀で魔人形だとっ! 大丈夫なのか?」
「何とかなるだろ? 一応金属の類いだし」
「しかし水銀とはな。 たしかにプニュプニュした感じは、超乳っぽいな」
「だろ? まあ、フィルが言い出したんだがな」
何でもいいから言えって言ったのはゾーイだよね?
「とにかくこれから準備して、始めるぞ!」
ああ、すぐはじめちゃうんだ。
「ゾーイ様、魔人形作りはちょっと待っていただけますか?」
「なんだアリス? なに問題でもあるのか?」
「はい……そろそろ夕食の時間ですから」
なるほどね。
確かにそんな時間だし、お腹もすいてきたよな。
「おいら……お腹すいた」
「ボクもなのニャ」
「わらわもじゃ」
おっぱい小部隊もそう言ってる。
「そうか……じゃあ飯を食ってからゆっくりやろうか!」
という事で魔人形作りは夕食後になった。
しかし僕が“結界無効”の特異体質だとはね……
気を付けないと色々ヤバいから、知ってよかった。
けど、どうやって気を付けるんだ?
僕は結界なんて分からないぞ。
……どうすればいいんだろう?




