21話 ~クリムゾン・デヴィル~ 深紅の艶魔、あるいは魔乳の魔王
「準備は……こんなもんだな、っと!」
なんか怪しいものがいろいろ並んでるし、黒いニワトリがグロい事になってるし……
「フィル! これから呪文を教えるから、ちゃんと覚えろよ」
やっぱり僕がやらなきゃないのか。
でも……
これで僕も、使い魔の契約者になれるって事だな!
「呪文はこうだ。“エロエロエロクサイッス、エロエロエロクサイッス、我は求め訴えたり”これを三回……簡単だろ?」
思ってたのと、ちょっと違う気がする。
いや、だいぶ違うような気がするけど……
「後は魔法陣の前に跪いて、呪文を唱えるだけだぞ」
「じゃあ……この辺でいいかな?」
とりあえず祭壇側に向いて、魔法陣の前に跪いてみた。
「そこでいいぞ。それから、っと……」
ええっとですね……
何で僕の肩に爆乳を乗せてるのかな?
「あの……ゾーイ? これは……」
「ん? ああ。フィルの魔力じゃしょぼい使い魔しか召喚出来ないからな! オレの魔力を伝えるんだよ」
「で……なんでおっぱいなんです?」
「おっぱい? 体を寄せてるだけだぞ!」
「……そうなんだ」
どうやら位置的に、肩におっぱいが乗ってるだけのようだ。
「よし、準備はいいな! フィル、呪文を唱えろ。三回だぞ!」
えっ? もうやるの?
「フィル、凄いのを期待してるぞ!」
「ヴァニラはまさか、おっぱいの事を言ってるんじゃなかろうな」
「凄い、おっぱい……」
「期待してますよ、ご主人様」
「何が来るのかニャー」
「失敗はしないようにね♪」
みんな勝手な事を言ってるな。
変な期待はされてるし……
「じゃあ、やりますよ。ええっと……“エロエロエロクサイッス、エロエロエロクサイッス、我は求め訴えたり”――」
教えてもらった呪文を三回唱える。
ゾーイの爆乳を肩に乗せながら……
「おっ! いい感じだな」
ゾーイの声で顔を上げると、魔法陣から赤い煙が湧き出してきた。
赤い煙は魔法陣の中央に集まり、徐々に人型になっていく。
見ているうちに、それは唐突に実体化し、美しい女性の姿となった。
「アタシを呼んだのはお前かぇ?」
えーっと……何?
使い魔なの? 人じゃなくて?
「あ……はい」
深紅の髪のセクシーな女性が出現した。
真っ赤な革のビスチェのような物を着ていて、露出度はビキニアーマー級だ。
そしてなにより、色気が凄い。
踊り子のクレオより遥かにエロい雰囲気を醸し出している。
「あんたがねぇ……そんな魔力があるようには見えないけどねぇ」
あるように見えないのではなく、無いのである。
「残念ながら、お前を呼び出した魔力はオレのもんだ。そいつに魔力なんてほとんど無いぞ」
そういうのってバラしていいの?
じゃあ帰りますとか、ならないのかな?
「あら、やっぱりそうなの? まあ、そんなのよくあるしねぇ」
よくあるんだ。
みんなやってる事なんだ。
「まあいいわ。ところで対価は何で、何をいつまでどうすればいい訳?」
「えーっとですね……」
「フィルの使い魔になって、魔王討伐パーティーに参加する事。期間は魔王を倒すまでだ。対価は……これだ」
ゾーイは家から持ってきた瓶を目の前に差し出した。
中には心臓らしきものが入っている。
「それは……もしかして、ドラゴンの?」
「そうだ。ドラゴンの心臓だ。契約するならこれをやろう」
ドラゴンの心臓がどれほど珍しいのか、はたまたどんな用途があるのかは僕には分からない。
分からないけど、使い魔の彼女が目を輝かせている所を見ると、対価としては充分なのだろう。
「あともうひとつ、お前が魔乳か超乳であることが条件だな」
「……なにそれぇ? まにゅう? ちょうにゅう??」
「おっぱいの種類、まあ大きさだな」
「あら! おっぱいなら負けないわよ!!」
たしかに言うだけのことはある。
爆乳のゾーイより大きそうだ。
これなら魔乳か超乳くらいはありそうだ。
いや、使い魔だから魔乳なのかな?
「全てのおっぱいをメンバーにして、魔王を倒しに行かなきゃならん理由があるからな」
「そうなの? でもねぇ……ドラゴンの心臓も欲しいけど、魔王討伐でしょ? 魔王の誰を倒すのよ」
「西の森の魔王、ドールだ」
「ああ、そう。でも、困ったわねぇ……」
「何が困るんだ? 別に、お前がそこまで強い必要は無いぞ」
「周りは全部パーティーのメンバーなんでしょ? これなら確かにドールなんて三回は倒せそうね」
やっぱり三回倒せるんだ。
「じゃあ何が困るんだよ!」
「だって……ワタシも魔王なのよねぇ」
え?
今……何とおっしゃいました?
「魔王だって? もしかしてお前……深紅の艶魔グレモリーなのか?」
「あら、ワタシも案外有名なのね」
「当たり前だろ、魔王だぞ! しかし、なんで……」
「なんでって言われてもねぇ……暇だったからよ♪」
魔王って、暇なら使い魔として召喚されるものなの?
しかもその理由が“暇だから”って……
意味が分からないよ。
「うーん……まあいいわ! 契約しましょ♪ 別にドールとお友達って訳でもないしねぇ!」
魔王が別の魔王の討伐に参加するとか、いいのかな?
まあ、いいんだろうね、本人がそう言ってるし。
「そう言う訳で、よろしくね! フィルちゃん♪ ワタシの事は呼び捨てでいいわよ。あなたの使い魔なんだから♪」
ちゃん付けって……まあいいけど。
「じゃあよろしく、グレモリー」
僕の挨拶と同時に魔剣が光り、頭の中に例の如く声が響いた。
《魔乳》
うん、知ってた。
「魔乳か、フィル? 魔乳なんだろ?」
いつもの如く、ゾーイは楽しそうに聞いてくる。
「そうだね、ゾーイ」
とりあえず、あとは超乳と、普乳か……
「じゃあ作るのは超乳だな!」
次は超乳の魔人形作りらしい。




