20話 ~オール・レディ~ 準備万端、あるいは全部女性
「召喚儀式の道具はこれで全部か、あとは対価は、と……こんなもんでいいかな」
対価って……今何か入れたね。
瓶に入った怪しげなやつ。
「あとは魔人形の材料は……おい、フィル!」
「は、はい?」
「魔人形の素材は何がいいと思う?」
「ええっと……石とか?」
「石って、お前な……」
「普通、魔人形って石とか土とかで出来てるんじゃないの?」
「普通の話なんてしてないだろ」
え、いや……意味わかんないし。
「お前が必要な魔人形は、魔乳か超乳の魔人形なんだよ!」
ああ……はい。
「石とか土でそんなの出来る訳ないだろ?!」
そんなの知らないし。
「水晶もなんか違うしなぁ……どうする?」
どうするって言われてもね。
「なんていうか、こう……ムニュムニュとかプニュプニュとか、ぷるるん的なやつがいいような気がするんだがな」
ぷるるん、ねぇ……
「液体系ですかね?」
「液体は人型にするのがな。まあオレなら出来るけど……でもなんか違う気がしないか?」
確かにちょっと違うよな。
何かないかな?
「そうだなぁ、実際の感触じゃなくてもイメージでもいいぞ。魔法なんてそんなもんだからな」
そんなもんなんですね。
意外と適当なのか?
「じゃあ、アレなんてどうなのかな?」
「何だよアレって」
「何ていうのかな……よく分かんないけど、錬金術とかで使う、あの銀色の液体みたいなやつ」
「錬金術? あんなのはただの詐欺……ああ、水銀のことか」
詐欺? 今、詐欺って言った?
「あれはプルプルしてる訳じゃないんだがな。まあ、イメージ的にはアリだな」
ぷるるん感はたっぷりだけど、違うんだ。
「一応金属の類いだし、普通の液体よりは簡単そうだな。確かどっかにあった気もするし、それにするか!」
……あるんだ。
何でもあるよね、ここ。
「確か……あそこか? フィル、そこの部屋に水銀があるはずだから取ってきてくれ」
「そこ? ああ、ここね」
扉を開けるとそこは倉庫。
何やら得体のしれないものがたくさん並んでいる。
どこにあるんだろう?
あ、あったこれだな。
「ゾーイ、見つけたよ! これでしょ?」
「おう! それだ、それ」
《あれ? そう言えばそこの部屋、結界張ってなかったっけ? フィルが入れてるし、気のせいか……》
「そんじゃ、物もそろったし、戻るとするか! フィル、ちゃんと捕まれよ」
はいはい。
わかってますって!!
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいま、アリス」
相変わらず一瞬で、戻ってきた。
すでにみんな、風呂から上がってのんびりしている。
「ゾーイ、物はそろったのか? ……アリス、麦酒おかわり」
さすがに昼から飲んでるのはヴァニラだけかな?
「あたいにも、もう一杯頂戴ね」
クレオもだった。
「ああ、ばっちりだぜ!」
「それで、いったい何をする気なんだ?」
「そういや言ってなかったな! 使い魔の召喚と、魔人形を作るぞ」
「なるほどな……その方が手っ取り早いかもしれんな」
「何だい? 召喚儀式をやる気かい?」
召喚の話に、他のみんなも集まって来た。
「なに! 召喚だと? いつやるのじゃ? 今か、今じゃな?」
「おいら……見たい」
「ボクも見たいのニャ!」
何だかみんな、期待している様子だ。
「儀式をするのでしたら、準備のお手伝いを致しましょう」
アリスまで急かしてるみたいだな。
「そうか……みんな期待してるようだし、今やる事にするか」
「僕、召喚儀式なんて初めて見るよ!」
そういう僕も、一度も見たことないから、ちょっとワクワクしてるけどね!
「はあ? なに言ってんだよ、フィル。やるのはお前だぞ!」
えっ……
………………
……………………なに?
「今、何て……」
「フィルが召喚するんだよ!」
「いや……ゾーイがしてくれるんじゃ……」
「オレがしてどうするんだよ。フィルに仕える使い魔だぞ? 自分でやらないでどうするんだ?」
「えっ? いや、そうかもしれないけど……」
やった事どころか、見た事すらないのに?
「準備や補助やらは、全部オレがやるから心配すんなって! お前は呪文を唱えればいいだけだ!」
それくらいなら何とかなるかもしれない、かな?
でも……
「呪文って……呪文なんて知らないよ?」
「準備が終わったら教えてやるよ。召喚の呪文なんて簡単だからな!」
簡単ね……
ソーイに掛かったら、何でも簡単になっちゃうんだけど。
しかし……何?
ゾーイに出会ってまだ1日半しか経ってないのに、とうとう使い魔の召喚魔でする羽目になってるし……
一昨日までは平穏な日々だったのに。
何なの、これ?




