18話 ~スペシャル・レクチャー~ ゾーイの特別講義、あるいは隣ではトランプ大会
「お帰りなさいませ、ご主人様」
シャングリ・ラへ戻るとアリスは昼食の支度をしていたようで、キッチンから出てきた。
「ただいま、アリス。ロッティとリエルは?」
「ロッティ様は、お帰りになっております。リエル様はずっとお部屋に……」
「そ、そうなんだ」
「ところで新しい方が増えたようですが、ご紹介願いますか?」
「そうだね。じゃあロッティとリエルも呼んでもらえるかな?」
「かしこまりました。しばらくお待ち下さい」
そう言ってアリスは奥へと消えていった。
「あれが傭兵メイドのアリスかい? 案外普通だねぇ」
普通……ではないです。
「おお、クレオ。久しいな」
「クレオと……だれ?」
「紹介するよ。新しい仲間のクレオとニケだ」
「アリス以外は知った顔なんだけどねぇ……まあいいわ。あたいはクレオ、踊り子よ。よろしくねアリスちゃん」
「クレオ様ですね。こちらこそよろしくお願いいたします」
「ボクはニケ。ハーニアの路地裏に住んでる冒険者の端くれなのニャ」
ニケが冒険者の端くれなら、僕は何なのさ。
端っこ以下かな?
「ニケ様もよろしくお願い致します」
「本物の猫耳族か……わらわはシャルロット。ロッティと呼んで構わぬぞ」
「オイラはリエル……フィルのお姉ちゃん、みたい」
「ニャッ? 全然似てないのニャよ!」
正直、猫耳だってだけだよね。
「ではご主人様、ちょうど良いお時間ですので昼食に致しましょう」
「おお、久々に歩いたから腹が減ったな」
ゾーイは歩かないからね。
その割に太ってないのは何故なんだろう?
栄養がおっぱいに行きまくってるんだろうか……
「酒はあるのかな?」
「もちろんございますよ、ヴァニラ様」
ヴァニラは酒さえあればいいのだろうか?
「ところで、フィル」
「な、何かなゾーイ?」
「お前はいろいろ知らな過ぎだ。飯を食ったら、オレが特別講義をしてやるからな」
「あ……はい」
面倒だけど魔王の話とか、聞いておいた方がいいよね……
「では、これから特別講義を始めるぞ!」
ああ……僕だけなんだ。
そりゃそうだよね。
「なんか二人で始めちゃったわね。あたいたちはどうすればいいの? 暇潰しにトランプでもする?」
「それがいいのニャ」
「大富豪でもどうじゃ?」
「大富豪……違う……大貧民」
「どっちでもいいじゃない、呼び方なんて! ヴァニラとアリスはどうする?」
「トランプか。たまにはいいな」
「わたくしは片付けが……そうですか、そこまで言うのなら参加させて頂きます」
あらら。
トランプ始めちゃったよ。
「おい、フィル。聞いてるのか?」
「は、はい!」
「まず魔王の説明だな。魔王ってのはだな、数が決まってる訳じゃないからな。魔王認定されれば魔王と呼ばれる。人数の制限はないぞ」
「その魔王認定ってのは誰が――」
「今いる魔王は13人。人間に対して明らかに敵対しているのは……6、いや7人だな」
いや、だから魔王認定は誰がしてるのさ?
「そのうちの1人が、このハーニアの近くにあるハースの森の、さらに西にある森に棲んでる奴がいる」
それはいいけど魔王認定は誰が……
「そいつを今回の魔王討伐の対象にしようと思うが、どうだ?」
「え……いや、どうだと言われても……」
「では、そいつで決定でいいな。たしか名前は……なんだっけヴァニラ?」
「は? ああ、魔王の名前か? たしかドールじゃなかったか?」
ええっと……ヴァニラさん?
何、その恰好?
いつのまにかヴァニラの姿は、ビキニアーマーではなく、ただのビキニに成り果てている。
そして、他の5人も……
「なんで、みんな……下着姿に?」
なぜか全員、下着姿でトランプをしている。
「ただトランプしててもつまらないのニャ。クレオの提案で負けたら服を脱ぐことにしたのニャー」
「貧民は1枚、大貧民は2枚脱ぐのじゃ」
「よし! 上がりだ」
「ヴァニラ……大富豪、おいら富豪」
「次はわらわじゃ、平民か、しかたないのう」
「ボクも平民なのニャ」
「わたくしが貧民ですか。仕方ありません1枚脱ぎます」
えっ?
もうブラとパンティーしかないよね?
マジ……
「あたいが大貧民かい? 仕方ないねぇ♪」
いや、クレオももう2枚しか着てないんだけど。
大貧民って……
素っ裸じゃないですか!
「ポイポイってね♪」
って……脱ぐの早過ぎなんですけど。
「おお、じゃあせっかくだ。仲間も増えたことだし、そのまま恒例のお風呂で交流とでもいくか!」
ねえゾーイ、それいつから恒例になったのかな?
出来たら教えて欲しいんだけど?
あと、魔王認定を誰がしているのか、もね!




