16話 ~ボス・エックスキャプテン~ 二人の元隊長、あるいはセクシーな元隊長たち
「まったく、朝っぱらから誰だい? あたいに用事ってのは……」
「姐さん、“素”が出てますって」
「うるさいわね、リアーヌ! こんな時間に来る奴なんて、どうせ客じゃないんだから構いやしないよ!!」
あのう……
めっちゃ聞こえてるんですよね。
しかも朝っぱらからって、もう昼も近いんですけど?
「済まんな、客じゃなくて」
「ああ、まったくだよ、って……あれ? 何だ、ヴァニラじゃないか」
「相変わらず“素”は下品だな」
「何よ! なんなら“あ〜ら、いらっしゃ〜い♪”とでも言えばいいのかい?」
「それはそれで、別な意味で下品だな」
「なんなのよ、もう! ヴァニラったら、さっきから元上司に向かって、あんまりじゃない! まったくもう……」
うーん……
よく分からない女性だな。
会えば分る?
いや、ぜんぜん分からないよ。
「ねえ、ゾーイ。この……クレオって女性、本当に元聖騎士なの?」
ゾーイにそっと聞いてみた。
「言っただろ。元聖騎士どころか、ヴァニラの前の遊撃隊長だって」
「それはそうだけど……」
「しかもその前は王立諜報部の腕利き諜報部員だぞ」
「諜報……部ぅ?!」
「しぃー、声がでかいよ! まあ、今は聖騎士ってより性騎士っぽいけどな」
せ、性、騎士ぃ?
「聞こえてるぞ、ゾーイ」
「ちっ! 相変わらずの地獄耳だな、クレオ」
「ゾーイこそ相変わらずのエロ爆乳だな!」
「エロいのはお前の恰好だろ。毎度毎度へそ丸出しの恰好しやがって」
「踊り子なんだから当たり前だろ? それにお前の隣だってそうじゃないか」
「なんで私に振るんだ? いいだろ、ビキニアーマーくらい着たって……」
正直、どんぐりの背比べなんですけど……
ブラ風トップスに透け透けスカート、ベリーダンサーの姿のクレオ。
露出度なら負けず劣らずのビキニアーマーのヴァニラ。
ボディラインくっきりの薄手タイトフィットの黒ワンピのゾーイ。
みんな美人でスタイルもいいから、目のやり場がね……
特にクレオは踊り子だけあってお色気も満点だ。
長いピンクの髪に、ピンクの瞳セクシーさをアップさせている。
そして、肝心のおっぱい……
ゾーイの爆乳よりは小さいけど、ヴァニラの美乳よりは大きい。
アリスの巨乳よりもちょっと小さいかも。
ちょうどまだ空いてる、豊乳の席がピッタリだと思うんだけど?
あれ?
何だか僕がおっぱい判定士みたいになってきたような……
「これ……どうなるのニャ?」
「……どうなるんでしょうね?」
「止めないのかニャ?」
「僕が止めれると思います?」
「…………」
「……でしょ?」
放っておくしかないでしょ。
「……それで、二人そろって、いったいあたいに何のようなんだい?」
「実は、魔王を倒しに行こうかと思ってな」
「魔王を倒しにって……ヴァニラとゾーイで、かい?」
「いや正確には、後ろの猫耳二人と――」
「お前、ニケとかいう娘じゃないかい? 確かそこそこ強いって話だけど……もう一人の小僧っこは、見たことないわねぇ」
「その二人と、ロッティにリエル、それにメイドのアリスだな」
「ロッティにリエルもいるって? それにアリスって、あの傭兵メイドのことかい?」
「そうだな」
「ヴァニラ……あんたまさか、あたいにそのパーティーに参加しろって言うんじゃないだろうね?」
「その“まさか”だな」
「ニケとそこの小僧はともかく、ヴァニラにゾーイ、ロッティにリエル、挙句がアリスだよ! あたいがいなくても魔王を3回は倒せるメンバーじゃないのさ」
「3回は大袈裟だな。……何にせよ、あと4人足りないんだよ」
「4人? そんなに戦力を揃えてどうする気だい? まさか魔王13人を全員倒す気じゃないだろうね」
え? なに???
今、なんて言った?!
魔王が13人って……言いました?
「あのう……魔王が13――」
「揃えたいのは戦力ではない」
「じゃあ、なんなのさ!」
「“おっぱい”だ。必要なのはおっぱいなのだよ」
「………………はあ? おっぱいって……何言ってんだ、ヴァニラ」
「ここからはオレが説明しよう!」
いや、ゾーイ。
今聞きたいのは、魔王が13人いる事なんだけど。
「実はだな。この猫耳小僧は呪いのせいで――」
ああ、説明はじまっちゃたよ。
しかたない、後で聞くことにするか……




