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11話 ~スイートルーム・ウィズ・メイド~ 専属メイド付きの部屋、あるいは「ご主人様と呼ばせて頂きます」


「いらっしゃいませ。“シャングリ・ラ”へようこそ」


 高級感だだ漏れの玄関。

 ずらりと並ぶ女性従業員。


 うん、僕の思っていた宿屋とは全く違うな。

 予想はしてたけど……


「いらっしゃいませお客様。わたくし、当シャングリ・ラの副支配人でオリビアと申します」


 女性で副支配人とか凄いな。


 しかしこれだけ女性がいるなら、ここでおっぱいが全部揃うんじゃないか?

 でも魔王討伐なんて、誘っても無理だよな、普通は。


「お客様方は冒険者のパーティーとお見受けしますが、当シャングリ・ラはご覧の通り高級――」

「金ならあるぞ」


 ゾーイがオリビアに金貨の入った袋を渡した。


「お金もそうですが、冒険者の方ですと少なくともSランクの方がお一人は――」

「オレはSランクだぞ」

「私もだな」

「わらわもじゃ!」

「オイラ……Aランク……」 


 僕はFランク。


 いや、それより何でみんな冒険者の資格持ってるの?

 しかもSランクとか。

 あ、一人Aランクだけど……


「ついでにロッティこいつはドワーフの姫だぞ」


「えっへん!」


「ドワーフの、姫様?!  ……た、大変失礼いたしました!」


 すべては権威……そして金。

 世の中の縮図を垣間見た気がする。


「では、どのようなお部屋をご所望でしょうか?」


「そうだな……全員で泊まれるような部屋はあるのか?」


 全員で、って……まさか僕まで一緒の部屋とか?

 まさか、だよね。


「ございますとも♪ 離れにSランク冒険者様御用達の“専用メイド付スイートパーティールーム”がございます!」


 えーっと……

 パーティーって“部隊パーティー”だよね? “宴会パーティー”じゃないよね?

 しかもメイド付きって、何それ?


「専用キッチンに大理石の大浴場、宴会パーティーも出来るリビングダイニングとツインの寝室が五つある特別室でございます」


 うーん……

 宴会パーティーも出来る部隊パーティールームかな?


「なお只今ならSランクのメイドをご用意できますが、いかがでしょう?」


「そうしてくれ」


「それで、お値段の方がメイド代を含めて一泊……ゴニョゴニョ……となっておりますが」


 オリビアがゾーイに耳打ちしてるけど、いったい幾らなんだ?


「何だ、そんなもんか……これで何泊か出来るな。預かっておけ」


 ゾーイはどこからか金貨の袋を出して、オリビアに渡している。

 オリビアが袋を覗き込んでいるけど、見ただけで相当な枚数が入ってるのが分かる。

 あれが銅貨じゃない限りは、かなりの金額なはず……


「こ、こんなに? あ……いえ、確かにお預かりいたしました」


 まあ、当たり前だよね。

 花屋に金貨を渡す人が、袋に銅貨なんて詰め込むはずないよな。


「では、担当のメイドがお部屋まで案内いたしますので、そちらのラウンジでお待ちください」


 何やら奥の方に、VIPなラウンジが見えるな。


「お飲み物をサービス致しますが――」

葡萄酒ワインだ」


 いや、答え早過ぎじゃないかな、ヴァニラは……


「え、あ……で、では当ジャングリ・ラ自慢の自家製葡萄酒ワインをご用意いたします。皆さんもそれでよろしいでしょうか?」


「それでいいぞ」

「かまわん」

「オイラも……」


「あ、僕はオレンンジジュースで!」


 葡萄酒ワインなんて飲んだら、一口で倒れちゃうし。






「大変お待たせ致しました。お客様の担当をさせて頂きます、アリスと申します」


 目の前に青い髪と青い瞳の女性が現れた。

 青いメイド服を着ている。

 メイドだから当たり前だけど。


「それではお部屋の方へご案内いたします」


 スカートが短いのは仕様なのだろうか? 

 胸がはち切れそうなのは、仕様ではないと思うけど……


 ゾーイの爆乳ほどではないけど、ヴァニラよりは大きいかな?

 そうなると巨乳か豊乳といったところか。


 ……不味い! 

 非常に不味いぞ。

 女性を胸で判断しはじめている自分がいる!

 気を付けないと、危険だな。


「こちらの扉は魔法陣によって、離れに直通しております。このカードを差し込むと、自動で離れに繋がります」


 変な事を考えているうちに、魔法陣の書かれた扉の前で説明が始まっていた。

 転移魔法を上手く使っているのだろう。

 アリスがカードを差し込むと、扉が自動で開き、その向こう側には離れの建物があった。


「このカードは離れの鍵にもなっております。このままわたくしが持っていてもよろしいですか?」


「面倒だ、お前はオレたちの専属なんだろ? 持っていてくれ」


「かしこまりました。ご確認致しますが、魔道士様がリーダーでよろしいのですか?」


「いや、違うぞ。リーダーはそこの猫耳の小僧だ」


「そうでしたか。それは失礼致しました。申し訳ございませんが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


 うーん……

 僕がリーダーだと知っても全く驚かないとは、さすがSクラスのメイドだ。


「フィルです。よろしく」


「よろしくお願いします。では、こちらがお部屋になります」


 離れの中は、副支配人のオリビアが言っていた通り、大きなリビングダイニングが広がっている。

 奥にはキッチンも見えるし、扉もたくさん見える。

 扉の向こうに寝室やお風呂があるのだろう。


「それではお食事のご用意をさせて頂きますので、皆様はどうぞお寛ぎ下さい。ほかに何か御用は――」

「酒だ。酒が欲しい」


「かしこまりました。先程は葡萄酒ワインをお飲みになっていたようなので、麦酒ビールでもご用意しましょうか?」


「ああ、それでいいぞ」


 まったく……もう。

 ヴァニラの頭の中は酒しかないのか?


「あと、先ほどお伝えするのを忘れておりました。こののちよりフィル様を、ご主人様とお呼び致しますのでご了承ください」


 ご、ご主人様ぁ?


 マ………………マジですか?!

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