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9話 ~フォレスト・ガーディアン~ 森の守護者、あるい貧乳ぼっちエルフ


「おーい、リエル!」


「だ、誰っ?」


 ヴィオにリエルと呼ばれた人物は、岩の陰へ隠れてしまった。


「隠れちゃいましたよ?」


「いつもの事だ。ああいう奴だからな」


 さっきから決まり文句のように“ああいう奴”を連発してるけど“ああいう奴”ってどういう奴なんだ?


「おい、オレだ、ゾーイだ。 リエル、顔を出せよ!」


「ゾーイ? ほんとにゾーイなの?」


「見ろよ、このおっぱいを! こんな魔道士ほかにいないだろ?」


 なんで、おっぱいアピールなんですか?!

 意味が分かんないんですけど。


「ほんとだ、ゾーイだ……」


 確かにゾーイは爆乳だけどさ。

 本当におっぱいで判断したんだ……


 ゾーイと分かったので安心したのか、リエルと呼ばれたエルフは岩場を降りてきた。

 僕にとっては初めて見るエルフ。

 少し尖った耳と緑の髪。

 エルフは美形だと聞いていたが、目の前のリエルも確かに美人だ。


「あれ? ヴァニラに、ロッティまで……それに、あと一人……誰?」


「こいつはフィル。オレの知り合いだ」


「はじめまして、フィルです」


 とにかく挨拶はしておこう。

 挨拶は大事だからね!


「猫耳……族?」


「いや、こいつは違うんだよ。猫耳族じゃないんだ。ちょっと訳ありでな」


「訳あり……?」


「その件でちょっとリエルに頼みがあるんだ」


「頼み? 頼みって……何?」


「フィルはな、本当は16歳の普通の人間なんだ。その魔剣の呪いで――」

「おい、ゾーイ!」


「なんだよロッティ、今リエルに説明するところなんだ。どっかで遊んで来いよ」


「丁度わらわもそう言おうと思っていたのじゃ! ではヴァニラとその辺で魔物狩りあそんで来るぞ」


「何だ私もか? まあ、いい暇だし付き合うか」


 魔物狩りあそんで来るって、ロッティ……

 何やら物騒なこと言ってませんか?


「ええっと、どこまで話した?」


「魔剣の呪い……まで」


「そうそう、魔剣の呪いで猫耳少年ショタになっちまったんだよ、可哀想だろ?」


「えっ? ……そうでもない、かなぁ……」


「そうでもあるんだよ! だからな、呪いを解くためにお前に手伝って欲しいんだ」


 かなり強引だよね、ゾーイは。

 まあ、僕の為なんだけど。


「何を……手伝うの、かな?」


「実は呪いを解くためには――」


 本日三回目、ゾーイによるおっぱい完全制覇コンプリートの説明が始まった。

 ……空が青いね。


「――という事なんだ」


「つまり……オイラにも、その……おっぱいパーティーに参加しろって、事かな?」


「そういう事だな。どうだ、リエル?」


 おっぱいパーティーって言い方は、ちょっとどうなのかな?

 違う意味にしか聞こえないんだけど。


「うーん……でもオイラ、森を守らないと……」


「森なら少しくらいお前がいなくたって問題ないだろ?」


「でも……」


「そんなこと言っても、エルフの里には結構戻ってるんだろ?」


「まあ……そうだけど」


「じゃあ問題ないだろ。それとも何か? オレの頼みが聞けないとでも?」


 強引だ。

 強引すぎるほど強引だ。

 なんなんだゾーイは? パターンが豊富過ぎだよ。

 もしかして魔道士じゃなくて交渉人ネゴシエーターなのか?


「そういうわけじゃ……ないけど」


 もうこの波に乗るしかない。

 

「僕からもお願いします。パーティーに参加してください。あなたが……リエルが必要なんですっ!」


「オイラが……必要? ほんとに?」


「もちろん本当です」


「……わかった。参加するよ。洞窟から荷物取って来る。……待ってて」


 リエルはそ言うと、どこかへ行ってしまった。


「ところで、ゾーイに聞きたいんだけど?」


「何だ?」


「エルフって、みんなこうやって森を守ってるの?」


「はぁ? そんな訳ないだろ! 普通のエルフは、普通に里で暮らしてるさ」


「いや、でも」


「第一、こんな名前もないような森を守ってどうするんだよ! どこにでもあるような森だぞ」


「えっ? じゃあなんでリエルは?」


「だからさっきから“ああいう奴”だって言ってるだろ」


「だからその“ああいう奴”ってのが分からないんですって!」


「なんて言えばいいんんだよ? そうだな、不思議系ぼっちとでも言えばいいのか?」


 不思議系ぼっち……?

 分からないけど、分かる気もする。



「……ただいま」


「それで準備はいいのか?」


「うん……大丈夫」


 戻ってきたリエルは、腰に矢筒、そして背中には弓を背負っている。

 きっと弓使い何だろう。


「改めて紹介するぞ。エルフの里随一の弓使いリエル。そして、こいつがパーティーのリーダー、フィルだ」


「よろしくお願いします、リエルさん」


「よろしく……でも、“さん”はいらない。リエル、でいい」


 まあ、そうだろうとは思ってたけどね。

 今までもそうだったし。


「おい、フィル! また剣が光ってるぞ♪」」


 だから何で、ゾーイは嬉しそうなんだろう?


《貧乳》


 また脳内に、剣からの言葉が響く。


 貧乳か……

 予想通りといえば予想通りかな、小さそうだし。


「フィル! 何だって? なんて言ったんだ?」


「え、ええっと……貧、乳です」


「貧……ぷっ!! 貧乳ーっ?! まあ、無乳じゃなくてよかったな♪」


 笑いをこらえながら言われてもね。

 僕に言ってるのか、リエルに言ってるのか……


「オイラ、貧乳なんだ…………」


「あ! いえ!! 判断してるのはこの剣ですから。この剣の勝手な判断ですから!」


「貧乳……おっぱいが……貧しい……」


 あー、落ち込んじゃったよ……

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