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≪Creating Tradition≫  作者: 蒼烏
第一章
8/12

7:修行開始

【空月】を受け取った翌日から、修行が始まった。朝食後、クラウドさんに呼び出され、顔を洗って気合いを入れ直すと彼の元へ向かう。

「お早う」

「お早うございます」

「じゃ、早速始めるぞ。ついてこい」

どんなモンスターと戦うのだろう、クラウドさんの後ろを歩きながら考える。

「着いたぞ」

クラウドさんが連れてきてくれたのは、教室2つ程の広さの練習場だった。小さな体育館の様な場所で、竹刀と木刀以外は何も置かれていない。他のものは広さを確保するため隣の倉庫に置いているらしい。

「えっ……と、まずは何をするんですか」

「そうだな、始める前に心構えを話しておくか」

ごほん、という咳払いの後、クラウドさんは話始めた。

「いいか、刀……日本刀ってのは他の剣よりも細く、薄い。即ち脆い。それに他の剣系武器が“叩きつけて”攻撃するのに対して、刀系武器は“切る”ことに特化している。それ故に扱いが段違いに難しい。力のままに叩きつければいいって訳じゃ無いってことだ。しかも刀は盾と同時に装備することが出来ないから、敵の攻撃による被ダメージを押さえる工夫も必要になってくる。……さて、質問だ。被ダメージを押さえるにはどうしたらいいと思う?」

「えぇと……攻撃を食らってもダメージを負わない程防御力を上げる、多少食らっても問題ない程HPを上げる、攻撃を受けた端から回復していく為に回復魔法を習得してMPを上げる、攻撃を食らわないよう回避を鍛える、ですかね」

「お見事。嬢ちゃんが言ったように、被ダメージを押さえるのには幾つかの方法がある。ただ、嬢ちゃんは魔法職だ。当然刀一筋って訳でも無いんだろうから、HPや防御力補正のアイテムでアクセサリー枠は消費したくない。その手の補正の鎧は壁役(タンク)向けが殆どで重いしな。とすると、残るのは後者2つだ。回復魔法か、回避。どっちを選ぶかは自分で決めろ」

一瞬の沈黙。思考を回す。

「………回避で、お願いします」

「何故だ?」

「回復魔法に頼れば、MP消費を前提とする事になります。勿論魔法の習得はするつもりですが、MPが尽きたときのリスクを考えると頼りきりは不安です。それに、回復に無駄なMPを消費してしまうと補助魔法や攻撃魔法で戦闘を有利に行うことが出来ません。その点、回避はスキルや魔法頼りではなく自分の感覚で行うのでMP等を消費することなく被ダメージを押さえることが出来ます」

「そうだな。戦闘で最も有利な被ダメージ軽減法だ。だが同時に、この中では最も習得が難しい。それでもいいな?」

こくりと頷く。戦闘で使えることが最優先だ。それにどうせ最強に習うのなら、荊の道の方が得というものだろう。

「……よし。じゃ、これから俺のことは『師匠』と呼べ」

「別に構いませんが……何故ですか?」

「こういうのは形から入った方がやる気が出るってもんだろう」

空気についていけない。良く分からないがそういうものなのだろうか。

「はあ……では改めて、宜しくお願いします、師匠。それと嬢ちゃんは止めてください」









修行を甘く見ていた。まさかモンスターどころか木刀すら握らせて貰えないとは……。

武器無しで、ひたすら師匠の竹光での攻撃を避け続ける。

最初の頃は当たってばかりだった攻撃が、1日かけて漸く少し見極められるようになった。体の動きから次の流れを予想し、最小限の動きで避ける。怯えるのではなく、真正面から受け止める覚悟でに攻撃を見なければ避けられない。度胸との戦いでもあった。

休憩という師匠の言葉でその場にずるりと崩れ落ちる。

「上達が早いな。まさかお前、≪選定者(プレイヤー)≫か?」

「≪選定者≫……?」

「この世界に生まれ育ったにもかかわらず、別世界の記憶を持つ人間のことだ。大神グランテイルに選ばれた者と呼ばれ、技術の上達が早く、神すら凌駕する程の可能性を秘めた者達だと聞く」

「あー……後半は良くわかりませんが、確かに別世界の記憶は持ち合わせてます。プレイヤー、という言葉にも聞き覚えはありますね」

「やっぱりな。こりゃあ鍛えがいがありそうだ」

もう一回、という指示で、立ち上がる。突き出された攻撃を、紙一重で凌いでいく。





-OnlyQuest【Grandtale】が開始されました-



このとき追加された表示に気が付くのは、もう少し後の事になる。












-【回避】がレベルアップしました-

午前中に習得した新しいスキルが順調にレベルアップしていく。

回避の技術はまだまだ一人前とは呼べない拙いものだが、師匠の動きが前よりも格段に見える様になった。

以前は紙一重でよけていた攻撃が、今は少しだけだが余裕をもって躱せる。

師匠が少しずつ手加減を弱めていく度に紙一重でよけるレベルまで戻ってしまうのだが、それでも師匠の本気に近づくのを感じる度に嬉しくなった。




「_______よし、今日はここまで」

修行を終えたころには、もうすっかり日は沈んでしまっていた。

回避のレベルを確認しようと、ステータスを開く。

そこに表示されたレベルを見て、私は顔を引きつらせた。



來(RAI)/妖狐Lv.1

HP 100/100

MP 800/800(100)

《見習い術師》Lv.1


《所得スキル》

【気配察知】

【索敵】

【隠蔽】

【暗殺術】

【基本武器操作術:刀】

【高速詠唱】

【火魔法】

[火球]

[火縛]

【水魔法】

[水球]

[水縛]

【式術】

【先祖返り】

【鑑定】Lv.2

【回避】Lv.10(MAX)



MAX表示がついているということは、これ以上は完全にPS(プレイヤースキル)の域だということだ。

明日からは他の指導も行うと言っていたので、PSを磨きながら他のスキルのレベル上げも行うことになるのだろう。

この世界に身を置いている私にとっては、PSもシステムアシストも大して変わらない数値だけの問題だ。……いや、他のスキルが上限に上がって複合スキルや上位スキルに変換されるとシステムアシストの恩恵は消滅ないし変質してしまうので、PSが高ければ高いほどシステムに頼らず技術を行使できる分有利ではあるのだが。


と、ウィンドウを下に動かしていく。



≪Quest一覧≫


OnlyQuest:【Grandtale】


見慣れない新しい欄に目が留まる。


「オンリー……クエスト?」


おそるおそる、クエストの名前をタップする。

サイトを調べたが、「OnlyQuest」の情報は何処にも載っていなかった。

つまりは、私が、ゲーム内初のクエスト受注者。ごくりと唾を飲む。


表示されたQuest詳細の内容に、目を凝らした。

スキルレベルは高いほどシステムアシストによって補正がかかったり、クリティカル等が発生しやすくなります。但し最高レベルまで上げると、それ以上のシステムアシストはかかりません。

プレイヤースキルと呼ばれる、使用者本人の技術向上によって質を高めることは可能ですが、時間と努力が必要な為スキルレベルMAXを目安にスキルの修行を止めることが多いです。




次回更新は9/25です。


9/10 ステータスに記入漏れがあった為【鑑定】スキルを追加しました

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