表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
≪Creating Tradition≫  作者: 蒼烏
第一章
5/12

4:己の武器

私が術師を選択したのは、魔法職が普通の戦闘をすることが出来るのに対して物理攻撃職は魔法を用いた戦闘を行うことが出来ないからだ。βテスター達のデータによると(【Creating Tradition Online】内からでも専用掲示板にアクセスができる)、職業レベルを上げ職業のランクアップを行う事で魔法・物理の両方の適正を持つ職業に転職できるらしいが、それでも初めから魔法を扱っていた者と比べると技術に差が生まれてしまう。折角この世界に来たのだから、どうせならトッププレイヤー位の強さは持ちたい。

とはいえ、魔法職にも勿論デメリットは存在する。魔法職が物理攻撃を行う場合、適性が無いと判断され、職業ボーナスのダメージが加算されないのだ。例えば剣系職業の初期職【見習い剣士】ならば与えるダメージに+5%、STRに+3の補正が付く。STRは武器を使用する際に必要となる「要求値」と直結するので、武器のSTR要求値が自分のSTRより高かった場合はその武器を扱うことが出来なくなるのだ。

しかもSTRやAGTが隠しパラメータ扱いされているこのゲームでは、STR値が足りなくて武器が持ち上げられなかったとしてもいくつ足りていないのかまでは判らない。補正はあればあるほどありがたいと言えるだろう。

今の私は術師、INTが+5%、DEXが+3。つまり何が言いたいかというと。



日本刀って、そもそも私に持てるものなの?

「さあ、好きなのを選べ」

相棒を選ぶ、とクラウドさんに連れられ町の中心から少し外れた建物に入ったのは数分前の事。周囲の家々の倍はありそうなこの建物は、「この町での」クラウドさんの拠点らしい。何でも、あちこちを移動するため多くの町に拠点を持っているのだそうだ。

地下に降りると、そこには幻想的にライトアップされた日本刀が多数展示されていた。地下は外観とはうってかわって和風の部屋になっている。靴を脱ぎ、案内されるままに最奥に進むと、数本の刀が私を待っていたかのように置かれていた。

「今の嬢ちゃんには過ぎた武器だが、これを扱うことを目指して修行すれば少しはモチベーションってのも上がるだろう?」

ごくりと唾を飲む。刀、つまり打刀と呼ばれる最も一般的なサイズの日本刀。その数は三振り。

一振り一振りから感じられる雰囲気は全く異なる。


左端の刀は鈍い銀の光を映す、ふくら枯れた鋭い切っ先が特徴的。木目のような板目肌の一振りだ。

じっ、と見つめているとポーン、と耳元で音が鳴る。


-【鑑定】スキルが習得可能になりました‐


スタートダッシュラリー:スキルを発見しよう をクリアしました

ボーナスポイントを3入手しました


【鑑定】習得必要PT3/残PT3 習得しますか? YES/NO


視界の端に現れたウィンドウが、目まぐるしく情報を更新する。

速いって!

都合よくラリーとやらでポイントがもらえたので、躊躇うことなくYESを押す。

ステータスに【鑑定】が追加された。その状態で先程の刀をもう一度見ると、今度は刀のステータス情報が開示されるようになっていた。



【打刀:銀狼(写し)】

耐久値:???/???(MAX)

攻撃力:50

追加効果:ダメージ増加:獣Ⅲ クリティカル補正Ⅰ

レアリティ:5

要求値:STR??? DEX???


嘗て災厄と呼ばれた魔狼を打ち取ったとされる霊刀の写し。獣の魔物に対して特に高い攻撃力を発揮する。


-【鑑定】がレベルアップしました-


続けて他の刀も見てみる。

中央の刀は青白く輝くほっそりとした打刀だ。小切先の板目肌で、感想は美しい、の一言に尽きる。三日月の刃文があってもっと長さがあれば、完全に天下五剣の三日月宗近だ。ところで打刀が使われるようになったのは室町時代であったように記憶しているのだけれども、小切先とは平安に多くみられる形ではなかっただろうか?


__________まぁ、ゲームということで気にしない方向で行こう。




【打刀:空月うろづき

耐久値:???/???(MAX)

攻撃力:35

追加効果:MPドレインⅠ 無力化無効Ⅴ MP消費Ⅱ

レアリティ:5

要求値:STR??? DEX???


刃に触れた者の霊力を奪う霊刀。使用者の霊力を身に纏い、霊体すらも切り裂くと言われている。




敵からMPを奪う刀。術師との相性も良さそうだ。MP消費の文字が気になるけれど。MPを奪ってMPを消費するとは此れ如何に。

でも、殺生石でMP値に補正が入る私には使いやすいかもしれない。




最後に見る右端の刀は他の二振りとは異なり、黒く、太い。空月のほっそりした見た目とは対照的に、力強く、どっしりとした印象を受ける。幅が広く大切先であるためだろう。まるで光を吸い込むかのように殆ど輝きを映さないにもかかわらず刀身には傷跡も、曇りも何一つ無い。





【打刀:閃喰せんじき

耐久値:???/???(MAX)

攻撃力:60

追加効果:光属性吸収

レアリティ:5

要求値:STR??? 


光を喰らうと言われている妖刀。溜め込んだ光を変換し、己の糧とする。その真価は闇夜に発揮される。





この刀には他の二振りのように複数の追加効果がついていない。代わりに三振りの中で最大の攻撃力と、光属性吸収の文字。レベルが書かれていないということは、固定効果、ということだろうか。

闇夜に真価を発揮するのは暗殺術と相性が良いと言える。だが昼間の活動を中心としていきたいと考えているため、十全に力が発揮できないのはあまりいただけない。メインはあくまで刀。サブの為にメインを犠牲にしては本末転倒だ。




「これにします」

少し悩んでから、中央の刀を選択する。

それを聞くと、クラウドさんは少し驚いたように眉を上げた。

「【空月】か。……嬢ちゃんも、茨の道を行くな」

「あまり良い選択じゃないですか、これ」

「いいや。空月が選んだんだ、自信持っていいと思うぜ」

その言葉に少しばかりの違和感を覚える。空月「を」ではなく、空月「が」選んだ?私が刀に選ばれたような言い方だ。でも、その言葉は心の中に留めておく。あえて追及することはせず、差し出された刀を受け取った。


-【打刀:空月】を入手しました‐



早速インベントリから空月を選択して、装備してみる。


‐要求値を満たしていません‐


予想以上の重みが体にかかり、刀を抱きかかえたまま尻餅をついてしまう。

「うわぁっ!!?」

「ははは、今の嬢ちゃんには装備できねぇよ。まぁ、その刀を扱えるようになったら一人前ってとこだな。ひとまずそれを装備するのを目標にして頑張んな」

「うぅ……はい……」

私がこの相棒を扱えるようになるには、まだまだかかりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ