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≪Creating Tradition≫  作者: 蒼烏
第一章
4/12

3:【蒼剣】クラウド

「あの……」

この世界で初めてのNPCに声をかける。

私は寝たきりの生活だったためVRMMOはこのゲームが初なのだが、聞いた話では決まった言葉で話しかけないと反応してくれないゲームもあるらしい。

こんな中途半端な声かけで反応してくれるだろうか。

「おう、どうした?嬢ちゃん」

傷の男は私の声をきちんと拾ってくれたらしく、優しく声をかけてくれた。私の心配は杞憂でしかなかったらしい。

「武器屋の場所を知りたいのですが、教えていただけませんか」

これでやっとゲームを開始できる。そう思った。

ところが、傷の男は困ったような笑みを浮かべる。

「ーーっと……もしかして嬢ちゃん、この街は初めてか?」

「あ、はい。“アマツクニ”から出てきたばかりで……」

設定を持ち出してみると、意外そうな顔をされる。

「アマツクニ!暗い色合いの髪と瞳は確かにあっちの特徴だが……へぇ、随分遠くの国から来たんだな」

「はい。……来たばかりで、まだこの国の事も良くわかっていないんです、けど」

「成程な。実はこの町じゃ武器は冒険者じゃ無いと売ってくれねぇんだ。実力者に弟子入りとかをして、初めて武器を得て“冒険者”になって外に出ていくんだよ」

……なんですと?

「それって……ひょっとして、一人前になるまでは町の外に出られない、ということですか?」

「ああ。嬢ちゃんもおそらくは【付き添い制度】で入ってきたんだろうが、付添人の冒険者が居ないと外には行けねぇな。加えて、この町の住人は基本的に弟子以外との付き添い仕事は請け負って無ぇ。他の町からの冒険者を待つことは出来るが、嬢ちゃんが外に出たいっていうなら、誰かのとこで修行して冒険者の資格を得てからって話になる」

心の中で鬼畜運営、と毒づいた。これは第一陣プレイヤーには相当不利な条件だ。何せ一人前の冒険者になるためにNPCに弟子入りしなければまともに活動を始めることすらできないのだから。おまけに、この世界を簡単に捨てられる他のプレイヤーと違って私はこれをクリアしない限りまともに暮らすことすらままならない。初期の所持金にも限りがある。1000ユロがこの世界でどれくらいの価値を持つのかは判らないが、いつまでも引きこもり生活ができるわけでもないだろう。

「その弟子入りって、誰にお願いすれば良いんですか」

「何になりたいかによるな。冒険者っつっても依頼や戦闘を主にするもの、各地を巡って商売を行うもの、他国に渡って暮らすもの……殆どの仕事に就くものは皆冒険者の資格を持っている。加えて戦闘系っつっても弓、剣、槌、鎌……と様々だ。中には複数の武器を扱う【武器師】なんてのもいるがな」

何になりたいんだ、と問われ、考える。

私がアバター作成時にこの世界に望んだのは、ファンタジー世界のように魔法や武器で魔物と戦い、大地を自由に駆け巡る自分の姿だ。多分それは商人や旅人ではなくて、私たちのイメージする「冒険者」そのものの姿。戦闘系。加えて私のスキルは【暗殺術】【基本武器操作術:刀】【火魔法】【水魔法】。

刀をメイン武器とし、魔法と組み合わせながら暗殺術による奇襲も行うスタイル。そのためには何よりもまずメイン武器となる刀を極めるところから始まるだろう。

「私は_________可能ならば、刀を使えるようになりたい、と考えています」

「刀ねぇ。アマツクニ固有の武器だから使用者は少ねぇわな」

よし、と傷の男は手を打ち合わす。ぱん、と小気味いい音が響いた。

「じゃあ俺が弟子をとるか」

「はいっ!?」

思わず叫ぶと、何だ、と意外そうな顔をされた。

「弟子入りしなくていいのか?外に出たいんだろ?」

「いえいえいえ、勿論冒険者にはなりたいですけれど、でもそんな簡単に……良いんですか?」

「ああ、いいぜ?丁度暇してたところだ。俺はクラウド。こんなナリだが一応【剣帝】だ。【蒼剣】クラウド、とも呼ばれてるな。弟子はとったことが無いんだが、まぁ俺でよければ宜しく頼む」

傷の男_________もといクラウドさんが手を差し出す。

「來と言います。【見習い術師】ですが刀を使えるようになりたい、と考えています。ご指導、よろしくお願いします」

差し出された手を握り返すと、クラウドさんは心底嬉しそうに笑った。

「やっと見どころある奴を見つけられた」









【剣帝】クラウド。私が、彼こそがたった一人しか成ることのできない最上位職【オリジナル】の一人だと知るのは、まだ先の話。

NPC:クラウド

剣系職の最上位【剣帝】。得意技のエフェクトから、【蒼剣】の異名を持つ。

【剣帝】は各職一人しか就くことの出来ないオリジナル職の一つ。剣系武器のうち5種以上の練度を限界突破させることで転職可能になる(但しオリジナルであるためクラウドがなった時点で就職不可)。

「自分が才能を認めた人間以外に技術を渡す気はない」という理由から、弟子をとったことがなかった。

因みに魔法はからっきし。今年で35歳の独身だが結婚する気は無い。恋愛する暇があったら強くなるだろ常識的に考えて(本人談)。




('ω')

職業は初期職→中級職→上級職→最上級職オリジナル→???とランクアップしていきます。

クラウドさんはオリジナルですね。オリジナルから先は各職一人ずつしか就くことが出来ません。

いずれも能力値に大きな補正がかかったり、特殊技が使えるようになったりするなど強力なものばかりです。

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