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間もなく、春日はようやくの誘いに乗って飲み会に姿をみせた。
すでに十二月の半ばになっていた。
忘年会という名目で、ローズマリー、ゾディアック、春日(その頃にはサンライズもためらいなくハルさん、と呼んでいたが)、そしてサンライズの四人がモモちゃんに集結する。
気のおけない仲間どうし、やっぱりとりあえずは生ビール。そして速攻セット。
「じゃあ、乾杯ね、ひとり一言ずつ」
ローズマリーは、いつものようにすでに上機嫌だ。
「久々のカメ、いやハルさん登場を祝して」
はい次ゾーさん一言、と振られたゾディアック、
「ピロポを最初に開拓した彼を祝して」(ハルさんが少し気まずい笑みをサンライズに向けた)
そしてサンライズに回ってきたので
「ええと……この三人と飲み会に来ている不運を祝い」いやそれは呪いだ、とローズマリーが茶々を入れる。
そして春日ことハルさんが高々と宣言した。
「このしょぼい連中の全然輝けない日々を祝して、かんぱーい」
がきっと、四つのジョッキが宙でぶつかる。
ウーロン茶しか飲めねえ、と言っていた春日はジョッキ生で乾杯したあといきなり店員に
「ここ、ジンないの?」
と訊ねた。
「ウォッカでもいいや、ビンで持ってきてよ、あとレモンと塩」
「信じらんねえ」ローズマリーもあきれている。
「サンちゃん、見てよコイツさ、ザルどころじゃあねえ。底のないオケなんだよ」
「おけ!」
OKサインで応えつつ、彼はやってきたウォッカのビンを抱え込んだ。
「冷えちょる冷えちょる、サンちゃん、飲み比べやるぞノミクラベ」
酔ったおかげか、すでにサンライズのことをサンちゃんと呼んでいる。
「やめろサンちゃん、ソイツと心中するぞ」
ゾディアックが慌てて春日からビンを取り上げる。「お客さ~ん、おひとり様一杯まででお願いしますよ~」
結局、どれだけ飲んだか分からなくなった。
春日は、前評判通りのウワバミだった。
二次会にカラオケに行って、その後ローズマリーの行きつけのバーに行ったらしいがどんな場所のどんな店だったか、サンライズにはほとんど覚えがない。ラーメン博物館の前を三回程通ったところまでは、記憶に残っていた。それとも博物館が三つに分かれたのかも知れなかったが。




