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この輝けない日々 弥勒の決死圏シリーズ#02  作者: 柿ノ木コジロー
第2章 こちら新米リーダー・サンライズ
15/32

04

 その日もとっぷりと暮れた頃。三人は約束の店にいた。


 モモちゃんのテーブル席に座ると、

「とりあえず生三つ、あと速効セット」

 ローズマリーは慣れたように店員に告げ、おしぼりで手を丁寧に拭く。

「暑っちいよなあ、まだ」

 隣のゾディアックに話しかけている。ゾディアックはまずおでこを拭いていた。

 彼は口数が少ない。ローズマリーの言う事にいちいち返事はするが、あまりサンライズに直接話しかけることがない。

それでも飲むのは嫌いではないらしく、ここに来るまでの足取りは軽そうだった。

 間もなく、ビールが運ばれてくる。

「カンパーイ」

 ジョッキを打ち合せ、三人はほぼ同時にぐっと傾ける。

 サンライズもかなり喉が渇いていたようだ、きんと冷えた金色の液体が喉を駆け降りてゆく。

 ぷはー、三人で揃ってジョッキを置いた。顔を見合わせ、笑いだす。

「やっぱ、コレですね~」

「生ですね~」

「生き返った~」

 それから生を数杯お代わり、日本酒にまで手をつける。


 そこからは下らない話で色々盛り上がった。

 ゾーさんはむっつりスケベで、飲めば飲むほど、人格が変わってくる、二次会には必ず不思議な名前のお店が登場する、ヴェンガ、ベソ、ピロポ等々……必ず可愛らしいオネエサンが迎えに出てくれて

「あら~マッキー(ゾディアックの会社名は牧原だった。でも本名は星野。まぎらわしいカイシャだ)、ひさしブリィねぇ、シャッチョサ~ン」

 と優しくしてくれるのだと。

「オレが見つけてきたわけじゃない、紹介してもらっただけだ」

 急に酔いが回ったらしい、ゾディアックは大声で弁解しているが、その声に張りが出てきた。

「でも好きじゃんかよ~、そゆ店がぁ」

 笑っているローズマリーはもう少し硬派に、ワンショットバーがお好みらしい。

「ホントはね、ホントはひとりでしみじみ呑むのが好きなの、オレは」

「1人じゃねえだろ、オンナとだろ」

「ま、たまたまそこにいればね誰か」

「たまたまじゃねえよ、カウンターで釣り上げてんだろ、いつもさあ」

 そんなふうに言い合っている二人を、サンライズは呆れながらも笑顔で見比べている。

「サンちゃん、次何飲む?」

 急にゾディアックが聞いてきたので、サンライズは

「ちょっとメニュー見せてくださいよ」

 腕を伸ばそうとして、痛めた肩をつい動かしてしまう。

「痛ってえ」

 だいじょうぶ? と口々に連れが言っているが、それほど深刻な声音ではない。

「全く、何で新人さんにそんな危ない仕事振ったんだろうねえ。ドンパチなんて俺らでも関わりたくないのにさあ」

 まるで他人事のような口調でローズマリーが言って、ぽん、とサンライズの肩を叩く。

「ってえなあ!」つい素に戻ったサンライズにゾディアックが笑いながらも、ローズマリーを押しのけた。

「ロージー、オマエほんとイケメン面して非道いこと平気でしやがる、ごめんサンちゃん」

 そう言いながら肩を抱こうとするので

「ちょ、ちょっと止めて下さいよ!」

 サンライズは座ったまま壁際まで追い詰められた。

「ホント、痛いんですってばまだ」

「舐めてやろうか、すーぐ治るからぁ」

 ゾディアックは飲むと本当に性格が変わるようだ、妙にベタベタしてくる。

「サンちゃんけっこう可愛い顔してるよー、コンタクトにしなよー」

「やめてくださいよー、オレ、そんなケありませんて」

「オレもだよ、いいよ目覚めよう、二人でさー」

「イヤですよ!」

 そんな二人を今度はローズマリーがニコニコしながら見守っている。

 騒ぎが少し収まるとこう言った。

「サンちゃん、もうギプス取ってもいいんじゃない?」

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