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この輝けない日々 弥勒の決死圏シリーズ#02  作者: 柿ノ木コジロー
第2章 こちら新米リーダー・サンライズ
14/32

03

 デスクに帰り、ふと隣の島を見ると、チームリーダーのローズマリーがデスクについていた。

 今がチャンスかも、と近づいて声をかける。

「すみません」

 何か書いていたローズマリーは、ぱっと顔を上げると

「はい?」

 ニュートラルな表情で、こちらを見た。

「出張の経費報告書、返されたんですが書き方をよかったら教えてくれませんか?」

 彼は嫌そうなそぶりも見せず、どれ、とサンライズの持っていた紙を受け取る。

 ちょっと見た目は、チャラチャラした印象のリーダーだった。

 髪は肩まで届くワンレングス、というのだろうか、キザったらしく斜め前で分けている。前側だけ脱色しているし、何の業界の人か、というかなり怪しい感じがする。

 スーツも、何となくどこかケバい店の従業員といった感じで派手な印象があった。

 それでも、今はまじめに彼のレポートに目を通してくれている。

 しかし、読んでいるうちに「へえ」と感心したように笑いだした。

「これ、タイだよね。現地に何週間いたの?」

「ええと、水曜に入って翌週木曜までなんで、9日間かな」

「ミッションアクションは?」

「ええと……実際に動き出してから、ですよね。それは月曜からでしたが」

「え? たった4日でこれ?」ローズマリーは椅子から跳び上がった。

「変ですか?」

 何を驚いているのかが判らない。

「これ全部計画書に載せてたの? 移動とか」

「いえ……色々と変更が発生して」

 だよねえ、だよねえと変に感心している。

「これじゃあ総務は納得しないや。でも面白いねえ」

 たまたま近くに通りかかった別のチームリーダーを呼びとめる。

「ちょっと、ゾーさんこれ見てやってよ」

「ん?」

 象さん? とサンライズはまじまじとその男をみる。

 呼びとめられたのは、のんびりした面長にやや垂れた目と大きめな鼻が特徴的、素朴そうな男だった。彼は黙ってローズマリーが差し出す紙を見た。

 しばらく黙って読んでいたが、急に相好を崩し、ぷぷぷ、と吹き出した。

「何だよこれ」だろ? とローズマリーが言って、二人で腹を抱えている。

 すごく気分悪いんですが、と紙を取り返そうとした途端、ローズマリーが涙を拭いてこちらを向いた。笑いの発作は収まったらしい。

「すまん、サンライズ君。悪気はなかったんだけど、久々にこんな傑作を見た」

 ゾーさんと呼ばれた男も真面目にうなずいていた。

「噂には聞いていたけどね、本当にこれでやってたなんて、想像もしてなかった」

 ローズマリーは傍らの男を彼に紹介する。

「この男は、ゾディアック・リーダー」

 だからゾーさんか、差し出された手を彼は空いている手で握った。

「じゃあ今夜モモちゃんでお祝いね」

 ローズマリーがうれしそうに言う。

「お酒、いけるんだろ? サンちゃん」

 何だ急にそのサンちゃんというのは? サンライズは眉を少し寄せる。

「少しは、飲めるけど……お祝い?」

「初ミッション成功祝い」

 じゃあ決定ね! 六時に下のロビー集合、ピアノ置いてあるとこ、いい?

 結局飲みたいだけのようだった。


 それからは急に親身になったローズマリー、ていねいに書き方の説明をしてくれた。


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