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第0章 ことのはじまり

物語を書く前に。


裕福、というのは、お金がたくさんあることではないと思う。

平凡なサラリーマンの家庭に生まれた私はそう思う。

こう言うと大抵「めぐまれているから」と一蹴される。

結構だ、と思う。


私は自分の家が決してお金持ちでないことを知っているし、度重なる選択ミスと怪我で自分の収入は途絶える寸前だ。


恵まれているということは、物質や値段の問題じゃないと思う。

私は底抜けに間抜けだ。

それはバカになるくらい愛されて育ったからだと思う。

恵まれている、というなら、私は親の愛情に恵まれていると感じる。


残念ながら愛情は隣に並んでいる人と比べられるようなシロモノではない。

自分の親の愛情は、自分にしか向けられないからだ。

「〜ちゃんは〜してもらってるのに」とか思いがちだが、自分の親には自分の親にしか作れないケーキのレシピがあって、それは自分には美味しかったとしても他の子には合わないこともあるだろうって事だと思う。


私は、自分の親がつくる魔法のレシピなら、なんでも美味しかっただけだ。


この親子間の味覚(愛情)を、時に0距離で、時にとても離れて整理したり第3者的に眺めたりするのは、実は子供の仕事の方が多かったりする。

それで、人と比べても無意味な問題だと悟った時、違うものを受け入れて認める準備ができるハズなのだけど。


どうしてか、時に攻撃を仕掛けてしまう人達がいる。


認めていて議論をすることと、その人の存在自体を否定するのとでは、土俵も結果も違う。

皆、愛情を手に入れたいのは同じなのだが。


色の対比で白と黒があり、空間の対比で光と暗闇がある。


悪事…という言葉があるくらいだから、それが悪いことだと解っているはずなのにしてしまうのはどうしてだろう。


では闇が平らかになり、光がすべてにあたったら?


悪いことを働く人が、かけひきをする必要が、全く無くなる世になったら?


一体どうなるのだろう。


裕福は、余白がある状態。

ブータンの人々は、もしかして、それを知っているんじゃなかろうか。

 

 第0章 事の始まり

 

  神々は話していた。

  人間を滅ぼそうと。

  もう彼らに救済を与えるべきでは無いと。

  これ以上慈しむべき魂が、傷つけられるのは見て居られぬ。

  どうか自分たちの手で人の世を終わらせるべきではないか、と。



  一番幼かった少女の神がこう言った。


  「彼らの中にはそれでもまだ人の世を愛し、原点に戻ろうと

   自然へ向かう者達もおります。

   私は彼らの願いと希う心から生まれました。

   どうか、私を彼らと共に土の上へ立たせてください。」

 

  神々の中の、一番の長生きの長が言った。

  

  「そなたは、あの愚か者どもの恐ろしさを知らぬ。

   与えるものからは奪い、慰めるものを貶め、

   導くべく差し出す手を切り落とすのじゃ。

   わしは、そなたが屠られるのを見てはおられぬ。」


 


  他の神々も口々にそういった。

  しかし少女神は自らを信じ、森へ、土へ向かう人間が居ることを

  見過ごすわけにはいかなかった。

  彼女自身が希望であるが故、また、その希望を捨て去ることにはゆかなかった。



  神々は彼女の心をとがめ、人を滅ぼすことが終わるまで

  彼女を神殿の泉の部屋へ閉じ込める事に決めた。 

  彼女は泣きながら、彼女を求める希望の命を思った。




  ―― 一刻の猶予もない。

  

  彼女は泉の精を眠らせ、神々の隙を見て希望たちの土へと降り立った。

  漆黒の夜だった。


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