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部活ですよ!  作者: 依向
3/6

始まる少し前ですよ

 時間は少しさかのぼる。早朝、生徒会執行部の部室には3人の人影があった。


「なんだ、これは」


 教室を半分にしたくらいの部屋を占領する横長の会議机に一人、一番上座に座る男子生徒がおもむろに目の前の書類を示す。


「何って、部費の申請」


 しれっと返したのはツインテールの小柄な少女。そう、先程いたいけな新入生の少年を蹴り飛ばした少女である。彼女は今、自身が所属するある『部活』の件で執行部を訪れていた。


「速ぇよ!提出開始は22日、部員数が確定してからだ!」


「えー。早い方がうれしいでしょ、こういうの」


「早すぎても邪魔なんだよ!しかも何で今日なんだ。俺は滅多にない生徒会長様たちのおでましの準備で忙しいんだよ」


「忙しい時の方がどさくさに紛れて通りやすいかなって、来央きおが」


「嘘つけ。お前の勝手な思い付きだろ。とにかく却下だ。帰れ」


「うわっ、ひどい!言いつけてやる」


「明らかに非はお前だよ!!この申請も部員2人しかいないくせに高すぎるんだよ!」


「いいじゃん、ケチ」


「おじいちゃんのお小遣いじゃねえんだよ。部員増やしてから言え、こういうのは」


 男子生徒が書類を突き返す。少女は不服そうにそれを見ていたが、素直に受け取った。


「…うー、分かった」


「そうか、分かってくれたか」


「……」


「……いやに物分かりがいいな、今日は」


 顔を落とした少女に、男子生徒は訝しげにその顔をのぞく―――――――


「はぐわっ」


「いーもん、決めた!今から勧誘してくる!」


 なんだこれ。顔を、全力で、弾かれた。


「ぐっ……」


 普段から少女の拳には気をつけていたはずなのに、不意打ちでこれか。


 気付けば少女は部室のドアを引き、腰に手を当てて宣言する。

 

「絶対に新入部員入れて、部費通してやるんだからね!!」


 内容はともかく素晴らしくスマートな捨て台詞を残して少女は出ていった。


「……」


「……部長?」


「…水無瀬みなせ、どこ行ってたんだ」


 少女の出ていった方を見やる女子生徒。その手には盆に乗ったお茶が。


「少し時間がかかったので間に合わないと思ってましたが、やっぱりですね。どうぞ」


 はい、と渡されたのは湿布。


「切りましょうか?」


「…いい」


 湿布と茶を受け取って、男子生徒――――――生徒会執行部部長、遠山直行とおやまなおゆきはため息をつきながら茶をすすった。


高崎たかさきの知り合いじゃなかったらな…」


「遠い目しないでください。今から入学式ですから」


「帰っていい?」


「縛ってでも連れていく」


「……」


 さすがに市中引き回しはご勘弁願いたい。一息ついて遠山は空になった湯のみを女子生徒―――――水無瀬梓美みなせあずみに返す。


「ああ、もう。新年度からこれかよ…」


「今から叫んでおけば?どうせこれからも何度もやるだろうし」


「不吉なこというなぁ!」


「ほぼ確定事項でしょ」


「ううぅ……」


 いつも過保護の対極にある副部長様のお許しが出たのだ。遠慮なくそうさせてもらおう。


 きっとまた始まる胃痛の日々に立ち向かう糧として。


「…っ!」


 息を吸って、そして、





「片岡あああぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!!!」




 響き渡る切なる叫び。それは学園の空を舞う鳥達すらも落とせる(とか)。天上学園の朝の名物、生徒会執行部部長の、怒声である。



 全ては少女のせい。でもね、少女のお陰で、きっと。これからの日々は輝きだす。


 とりあえず、近所迷惑☆(テヘッ)

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