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不安症の毎日

掲載日:2026/05/24

「ああ、もうこんな時間か」


 掛け時計を見ると、3時20分だった。


 今日の学校は寝不足で辛いだろうけど、もう少しで映画見終わるから――。



 どれくらい経ったんだ?


 時計の針は、12時を指していた。


 おかしい、俺はまだこの映画を見ているんだ。6時間以上の映画なんて俺は知らない。


 目を見開いて、振り返った。誰もいない、いつも通りのリビングだ。


 視線を戻すと、そもそも時計の針が停止していることに気づいた。


 時間が止まった?


しかし、映画は流れている。じゃあ否定された。


 裏世界か。 


 あるわけない……とも言えない。


 確か、電波時計だったはず。通信が悪いだけかもしれない。


 きっとそうだ。


 杞憂であることを祈って時計を見つめる。


 突如、針はありえない速さで回り始めた。それに俺の脳もフル回転する。


 映画は早送りになっていない。


 体が急激に老けたわけでもない。


 なら大丈夫か。


 恐らく針は4時前に止まる。3時40分からそこまで経っていないと思うからだ。


 2時を超えた。


 映画の続きを見てもいいが、見届けてからでもいいだろう。


 あらゆる最悪の可能性を想像してしまうのだ。


 3時を過ぎる。


 止まるよね?


 4時を超えた。


 え?


 焦燥がぞわっと体を撫でた。


 針は高速で回り続ける。


 幸いにも映画は異常なし。あと12分で終わるけど、さっさと私室に行こう。


 テレビの電源を消して、洗面所に向かう。


 歯ブラシに歯磨き粉を付けて、階段を上がり。


 私室のドアを開けて、ベットに座った。


 詰めていた息を吐いて、スマホで動画サイトを開く。


 因みに洗面所の鏡には、当たり前だが自分しか映らなかった。



 はは、この動画おもろいわ。


 ウォークインクローゼットからは誰も覗いていなかった。





 スマホの時計は4時50分を指していた。


 そろそろ寝ないと、通学中に事故りそう。


 つまり、歯ブラシを戻しに洗面所にいく必要がある。下に行かなければならないのだ。


 ――大丈夫、大丈夫さ。ただ時計が壊れただけだ。いつもと何も変わらない。


 しかもこの家には家族が居る。1人じゃない。


 シェルター兼私室を出て、階段を下りた。


 やっぱり、洗面台横のドアが開いている。その先は真っ暗なリビングだ。


 時々、誰かが居る気がする場所。


 俺は洗面所に入ると、鏡を見ないようにぺーをする。


 口を濯ぐ。


 目を閉じるのも怖いので、強制的に鏡が視界に入る。


 誰もいなかった。


 階段に足をかけると、自分の服がすれる音がする。


 音が二重になっていないか耳を澄ませた。


 いや、ドタドタと猛スピードで階段を駆け上がってくるかもしれない。


 あれ、今聞こえなかった?


 首筋が静電気を帯びたようにピリピリして、歩が早くなる。


 私室のドアから漏れた光が俺を歓迎してくれているようだ。


 ドアを開けると、飛び越えるように中に入ってドアを閉めた。


 ベットに座り、ゆっくりと閉まるドアを見つめる。


 手がはみ出してくることはなかった。


 電気を消して、布団を被った。


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