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37勝手目 でしょうね!(2)

「沖田の髪の毛なんかいつ取った? DNA鑑定の結果って時間がかかると聞くが……」

「秋田に行った時です。あの時、頭を撫でたでしょう?」

「覚えてない! てか本当に兄妹なの!? このちんちくりんと!?」


 洋も洋斗も大パニック。似てるね、兄妹だったりしてねと言っていた洋斗は信じられないと紙を透かした。偽物じゃないと言ってるのに、しつこい人だ。


 一方の洋は守にちゃんと調べるようにパソコンを開かせ、兄妹なんか嫌だと駄々をこねる。


「ボスの言ってた"おにいさん"って、"お義兄さん"ってことぉ!?」


 状況が出来ると飲み込みが早い洋斗は、頭を箒のように荒ぶらせながら聞いてくる。


「はい。お義兄さん?」


 あぁそうだ、これからは愛想良くしなくては。部下という立場より、義理の兄だと思いながら生活した方が都合が良いでしょう。


 周りを固めた方がいいと言いますしね。そして固め切った後、守をコロ……あ、負かせばいい。いけない、油断すると殺気が強くなる。

 

「土方ァ! アタシこんなのと兄妹なんてヤダァ!」」

「こっちからすれば"でしょうね"って感じだがな……」

「あんなふうに眉毛太くなったらどうすんだ!」

「急になるわけないだろ」


 やれやれと困っているフリをしてニヤけてるんでしょう。そして洋斗は顔を青くし、あさっての方向を向いて絶望している。


「なんだろう……洋さんと兄妹なのは腑に落ちるのに、すごい面倒な事になりそうな気がしてとってよこあいよぉ……」


 面倒な事とは仕事なのか。それとも別な事か。そういえばと思い出し、洋斗に大切な事をもう一つ教えてあげなくては。


 今度は別な紙を取り出し、洋斗でもわかる神霊庁と書かれた封筒を渡す。


 中の紙には「異動辞令」が入っている。内容は特別経理部ごと移動し、かつ、洋斗はよっぽどの事項がない限り、東京本庁の出入りを控えるようにという命令付き。


「そういうわけで、東京には帰れませんからね。神霊庁の厄介者と血縁者とわかれば、洋斗も同じ対象です。大人しくこっちで暮らして、新撰組に居ましょうね」

「ほら面倒くさい! ボクは戦争に巻き込まれるんだッ!」


 戦争とは何の事やら。当人はパニックをおこしても、周りは証拠がなくても兄妹と言われれば納得してしまう。


 信頼のおける洋斗とネリーを引き連れ、東北へ移住する。目的は多々あるものの、兄妹を監視するという理由であれば、また一緒に住む事が出来る。


 周りが騒がないような暮らし方で準備したし、後は皆に首を縦に振らせるだけ。振らなくても、振らせますけどね。


 炊飯器も無駄にならないし、一石二鳥だ。金があって、さらに人脈と金のある親が味方にいるのなら、利用するものは利用する。


 結局は金だ――という言葉が、今は強い味方に感じる。



「咀嚼の回数も一緒なのね……」


 沖田と洋斗が兄妹である事を告げられた翌朝、2人は不機嫌そうな顔で朝食を頬張っている。

 沖田の目の前に座る祈は食べるのも忘れる程2人を見比べ、気づいた事を口に出していく。


「ここまで似てると兄妹ってより双子じゃん……洋斗はお兄ちゃん感ねぇし」

「学がお兄ちゃんぶってるだけで、本物のお兄ちゃんはこんな感じなんじゃない? ま、アンタのうるさいお兄ちゃんアピールも今日でおしまいね」

「ハァ!? ぽっと出にお兄ちゃんキャラ乗っ取られてたまるかよ!」


 騒がしいやつだ。そもそも従兄弟なのにあれだけ豪語出来るのがすごい。


 お兄ちゃんってのはなぁと言って、1人2本ずつ置かれたウィンナーを1本ずつ俺と沖田の皿に置く。


「お兄ちゃんってのは、好きなモンでも下の兄弟に愛情を持って譲ってやる生き物なんだよ」

「随分と薄い理論ね」


 ドヤ顔で腰に手を当て仰け反っては豪快に笑う。騒がしいし、頼んでない。俺達の事何歳だと思っているんだ。

 しかし、隣に座る沖田は年甲斐もなく喜ぶ。


「このウィンナー美味いからもっと食べたかったんだよね! なぁ、土方のも寄越せよ」

「洋さんばっかりズルい!」

「ちんちくりんはお兄ちゃんなんだから我慢しろよな! 土方、絶対このちんちくりんにはあげるなよ!」


 学のせいでまた争いが……。別にやるのは構わないし、どっちにやってもいいんだが、なんせ1本しかない。

 幼くも醜い、そして成人を超えた大人2人の攻防の末、洋斗がウィンナーにフォークを突き立てた。


「やったァ!」

「大人気ナイね。あげたらいいノニ」

「ネリーだっていつもボクやボスのおかず取るでしょッ! 洋さんに勝つことに意味があるんだいっ」

「秀喜はご飯タベナイモン」


 洋斗にくっついてところ構わずハグや口付けをするネリーでさえ呆れる様よ。


 ネリーは朝から用事があると言って旅館を出た伊東の分の朝食まで食べている。

 底知れぬ食欲と胃袋の大きさには全員が圧倒された。


 食い過ぎだと言っても、ネリーとっては適量なのだろう。


 沖田は負けたのが悔しいのか、席を立って全員の膳の残り具合を見渡している。

 学と祈、ネリーは勿論無い。目をつけたのは晴太の膳だ。お目当ての物は手付かずで2本残っている。


「晴太くんのウィンナーちょうだい!」

「その言い方良くない!」


 学の言う通り、沖田のなんでもない一言は純粋で真っ直ぐな下心を持つ晴太の心を荒ぶらせた。

 味噌汁に口をつけていたために、含んでいた汁を霧を吹くように噴き出す。顔を真っ赤にして咽せ、咳き込む。


 そして口に手を当てながら、たまらんという顔で朝から叫んだ。


「どっちもいいよ!」


 よくないだろ。沖田は2本とも掻っ攫うが、晴太のどっちもはそういう意味じゃない。


 わざわざ空いている晴太の隣の席に座ってやるんだから、わかっていてやっているのかと疑いたくなる。

 

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