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48勝手目 過去戻りの禁忌:京都府京都市(1.5.1)

1934年9月21日、未明。

 僕らは「台風なんて所詮は雨風」と、生半可な気持ちで禁忌に来ていた。それは僕らが台風被害には無縁の地域に住んでいたからであって、自然の脅威を舐め切っている証拠でもあった。

 この時のボクらはまだ知らない。今までの禁忌の中で1番過酷で、悲惨で、僕らじゃどうにも出来ない事があるって理不尽を突きつけられたんだもの。


 ◇


「風は強いですね。でも、台風……って感じは」

「日本最大なんだよねぇ? なんかあんまり……台風、本当に来るのかな?」

「史実にあるんだから、来ますよ」


 過去に来て直ぐ強風に見舞われた。けれど案外大した事はなく、強風と少し強い雨くらいだから余裕じゃない? なんて話している。


 僕と洋斗さんは先に鏡を潜ったからか、着地地点が同じで共に行動していた。

 洋と学さんは何処へいるのかわからない。電話を掛けても繋がらないのが心配だけど、この程度なら心配ないだろうな。


 その証拠に、怖がりな洋斗さんもシャンと歩いているんだし。

 尾形さんは事実を知っているから最後までかなり心配してたけれど、守だってそこまで深刻そうじゃなかったしね。


 雨と風なんて地震よりマシだという考えが何処かにある。人の気持ちが分かるようになった洋なら、わざわざ危ない目に遭わなくても涙は流せるはずだ。


 だから今回は安全な場所でことが治るのを待って、洋に沢山泣いてもらえばいい。少し雑な感じはあるけど、守だってそう考えたんだと思うし。


「ここはどこだろうねぇ。晴太さんは京都に詳しいの? ボクは全然わかんない。それに目ぼしい建物もないから、それらしい情報が掴めないよぉ」

「学さんは電話を使ってないみたいですしね。これじゃあ現代にも連絡が取れないや」

「うぅん……雨も降ってきたし、適当に休むぅ?」


 洋斗さんは偶然あった東屋を指差して雨宿りしようと下唇を突き出した。やっぱり禁忌はやりたくないって顔だ。


 座るのは行き先を考えるのに丁度いい。僕はそうですねと明るく返し、東屋の椅子に座った。

 屋根のおかげで雨風はある程度耐えられる。付近の様子を伺いながら次第に荒れ模様になる空を見上げた。


「あれ、洋さんじゃない?」

「どこ?」


 洋斗さんはあそこと指差すけれど、僕が見た頃には彼女の姿は無かった。連れてくるよと駆け出した洋斗さんを追おうと荷物を手に取る。


 けれど強風で荷物が転がり、全て手にした頃に後を追っても洋斗さんは居なかった。


 ボツッ。


 ボツボツと大きな雨粒が、ジャージにシミを作り始める。いよいよ台風がこっちに来るんだなぁ、と僕はニュースを眺めるような気持ちで東屋に戻った。


「電話も……通じないままかぁ。今回は皆一緒じゃないし、連絡手段もないから困ったや」


 下手に動くより、洋斗さんが戻ってくるのを待った方がいい。洋と合流したから喧嘩でもしてるのかな。それともお腹すいたって騒いでる?


「待ってた方が、いいよね……」


 僕は昨日のお酒がまだ少し残っているような感覚があって、瞼がとても重く感じていた。禁忌の慣れが出てしまい、少しくらいの仮眠ならどうってことないと目を瞑る。


 雨風が強いだけ。それだけ。屋根もあるから大丈夫。だって僕らは土砂崩れの現場で何度かの夜を乗り越えた。

 あの時もダメだって思ったけど、結果なんとかなったんだし。僕は過去に来てれば死なないし。


 だから大丈夫――そのうち学さんが携帯を鳴らしてくれるだろうから。


 僕は自分にそれらしい言い訳をして、屋根に打ち付ける激しい雨音を子守唄にして眠った。

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