44勝手目 勝負の神様を祀る所の債務者
「ちょっと、ネリー! ひ、と、ま、え!」
「手を繋いでるダケ。皆シテル」
京都支部の新撰組を探すタメ、洋斗と電車でガタンゴトン。駅を一個ずつ降りて、周りの神社と寺を細かく周る。
洋斗はずっと疲れた顔をシテル。神社とか、寺の人にコンニチハして、新撰組の話をすると怒られるからダ。
次は稲荷伏見ってトコへ行く。洋斗がフラフラして歩くから、何処か行きそうで心配になる。
電車の切符を買って、ホームに行く時もお酒を飲んだ時みたいに歩く。迷子も困るし、線路に落ちたら大変。
ダカラ、洋斗の手を握った。ネリーは洋斗と手を繋げて嬉しいし、洋斗を見失わない。イッセキニチョーって奴ダネ。
デモ洋斗は、恥ずかしがってすぐに離そうとスル。他の人も手を繋いでいるのに、ネリー達だけ恥ずかしいの、オカシイ。
「ボクが恥ずかしいの! ネリーと並んでると学生に見られるんだもん……もう25歳なのにさぁ……」
洋斗は手を解いて、時間通りに来た電車に乗る。子供扱いなんてしてないのに……。
タシカにネリーと洋斗、身長に差がアル。
洋斗は159cm、ネリーは175cm。スイスでもチョット大きい方だったケド、ネリーはそんなの気にしない。どんなサイズも洋斗は洋斗。
電車内の暖房で揺れる髪の毛、フワフワしてる。わたあめを作ってる時に出て来る糸みたいなのに似ていて、とても柔らかそう。
デモ、電車だから触ったら怒る。ワカッテルんだケド、手が止まらないヨ! ダメだとわかってるのに触っちゃっタ。
フワフワした髪の毛が手のひらを幸せにする。ネリーの気持ちもフワフワになる。
「はぁ……もぉお……! 頭を撫でたりするから、子供扱いされちゃうんだよぉ?」
「だってカワイイ。洋も、樺恋も祈もカワイイ!」
「ボクの事、女の子だと思ってる……?」
洋斗はプンとほっぺた膨らましたケド、あんまり怒らなかっタ。ちょっと気持ちよさそうにして、顎を撫でられる猫みたいな顔シテル。
嬉しいのに、反対の事言う。洋と同じ。兄妹してそっくり!
2人のやり取りとかを思い出して笑うとネ、洋斗はそんなに似てるかなって言いながら、鏡を見たりスル。
洋斗もオトーサンとオカーサンが居なくて、オジーチャンとオバーチャンも死んじゃったカラ、家族居なくて寂しい言ってた。
年末にネリーが大阪の家族のとこ帰る時も、寂しそうにいってらっしゃいって言われた。
だから洋斗、きっと洋と兄妹で嬉しい。ずっと、血の繋がりがある人が欲しいって思ってたハズ。
毎日ドタバタしてても、洋斗は寂しい顔しなくなった。ネリーは未来の嫁とシテ、それがとてもウレシイ。
「ヨカタネ」
「ネリーが何考えてたかわからないんだけど……」
「呪いとか怖い。ダケド、皆で居るの、お腹いっぱいご飯食べた後みたいにシアワセ」
洋斗、口を半開きにしてちょっと黙る。でもすぐ照れ臭そうに、ニヘって目を細くして笑った。
「ネリーは沢山食べるから、まだまだ足りないんじゃない?」
「ンー。あとは洋斗がネリーのモノになれば……ア。そういえば、また洋斗宛てにオンナノヒトから手紙が来てた。モテモテダナ」
突然思い出した。神霊庁に送られた手紙は屯所に転送されて来る。その中に洋斗の事を気にしてたオンナの職員から元気? みたいな内容の手紙が来てたの、ネリー覚えてる。
洋斗、神霊本庁に居たトキにモテモテだった。優しいとか、キクラゲ……違う、えっと、あ。気配りできるから、モテモテ。
曖昧にしてハッキリしないから、皆その気になる。ソユトコも洋と似てる。
「お付き合いとかよくわかんないからなぁ……洋さんの事もあるし、ちゃんとお断りしないと……」
「エ! ネリーもオコトワリ!?」
「ネリーは仕事も家も一緒じゃないかぁ! うぁあ、話してたら駅通り過ぎちゃったぁ……」
洋斗は焦ったようだけど、次の駅で降りて、その周辺を回ろうと言って外を眺めてる。
家も仕事も同じ。ンー……ネリーはオコトワリ、大丈夫ソウ?
楽しいのが続くならイッカ! って、洋斗のモチモチほっぺたをツンツンする。
「ちゅっちゅかないでぇ!」
「ヘンな声」
洋斗はヤだって言わないカラ、ネリーは思うままに遊んでヤル。
◇
JR藤森駅で降りてみる。ネリーと話してたら目的の稲荷駅を通り越してしまった。
1駅ずつ降りるのは効率が悪いかもしれない。
けど、沢山いる神霊庁職員の中から新撰組に所属してるって言う人を探さなきゃいけないんだよ? この方法しか浮かばないもん。
「うーん。この藤森神社って所に行こうか?」
「洋斗にオマカセ。漢字たくさんで、頭疲れタヨ」
「そっかぁ。ならそこへ行こう? それとも少し休憩する?」
「ソコ行ってから、ナンカ食べたい」
藤森神社を選んだ理由は特にない。目についたのと、なんとなく。ボクのなくとなくはちょっと役に立つから、今回も信じてみることにした。
ナビでは徒歩4分で到着するとあるから、気兼ねなく行けるのもいいしね。近くには大学もあるみたいだし、賑わってる場所なんだなぁと町並みを見ながら歩いた。
あっという間に藤森神社前。鳥居の近くにある黄色いイチョウの木が秋の京都を魅せてくれる。
やっと京都ぽぉい……とネリーと写真を撮ったりしてみる。
観光って楽しいなぁ。半分仕事で来てるし、明日は不穏で堪らないけれど、こういう息抜きも大切だよねぇ。
ネリーとピースなんかして並んで写真を撮っていたら、神社の奥が騒がしい。
秋の京都だもん観光客だってたくさんいるよねぇ……なぁんて呑気にしていたら、浅葱色の袴を着た男の人がダァ――ッと走って来る?
「うあ――! 悪い、悪いって! やべぇ!」
土方くんくらい背が高くて、スポーツをしてそうな黒髪の短髪。メガネをかけて、首元には水色っぽい手拭いを巻いている。年齢はボクくらいかな?
その人がボクらを見つけてホッとした様子で走ってくる。何、誰、怖いぃ!
「文人――! この督促状はなんや!」
後ろには紫色に薄い紫で花のような模様が入った、その男性にそっくりなおじさんが赤い封筒や黄色の封筒を持って追いかけている。
えぇ……ここ神社だよぉ? 神職の人が騒いでいいの?
なんて呆然としてたらね、若いメガネの男の人がボクに馴れ馴れしく肩を組んで来た。
「誰ッ」
すぐに口を手で塞がれた。
ボクばっかりこんな目に遭う! ネリーはボクを離してと男の人をポカポカ叩くけど、ちっとも離してくれない。
「頼むわ、オレと友達のフリしてくれ! マジマジマジ、頼む頼む頼む! オレは谷文人だから、文人って慣れ慣れしい感じでさ、遊びに来たんですって言え言え言え!」
谷文人と名乗る男性の手に力が入る。腕が首も締めるから、従わないと殺されちゃう?
激しく縦に首を振ると、頼むぜってやっと手を解かれた。
「文人くん! 待たせてゴメンネ! ヒサシブリ!」
ボクは棒読みだけど、出来るだけ馴れ馴れしくしてみた。ぎこちないからすぐバレそう。
だけどね、ネリーが文人くんにハイタッチとかして見せる。ネリーのコミュニュケーション能力の高さに助けられ、メガネのおじさんは息を切らしながら挨拶してきた。
それもね、本当の友達に挨拶するみたいにだよ? 怒ってて逃げられて、こんな嘘みたいな偶然ありえないよ!?
それでも信じちゃうんだもん……ボクらは友達を演じきるしかないよ。
「文人ぉ、帰ってきたら話があるからな」
「うぃーす! さぁせん!」
「ほな、失礼しますわ……」
ボクらには深々とお辞儀をして、穏やかな口調で元来た道を戻って行く。
文人くんはおじさんの影が小さくなると、ハァと大きくて長いため息をついてボクとネリーの肩を叩いた。
「めっちゃ助かった! あざすあざすあざす! 家帰りたくねぇもんだからさ、テキトーに付き合って貰えん?」
「えぇ……?」
正直嫌だなぁ。なんか失礼っぽそうだし、訳ありっぽそうだし。
おじさんが持っていたのは督促状だったし。絶対碌な人じゃないよ。
「オマエ、神霊庁の新撰組カ? 答えたらテキトーにゴハン食うの手伝ってヤル」
はぁああ、ネリーは容赦がない。躊躇うとかしらないんだよ。
「ん? あぁ! そうそうそう! 京都支部の新撰組はオレオレオレ! って事は――」
「ネリーは原田ネリー。洋がオマエをブットバシに来た!」
話が早くて助からない。対立してるっていうのにね、ネリーは遠慮なく聞いてしまうんだよ。ボクには安らぎが無いのぉ?
「あ、そう。なんでもいいから早く行こうぜ。親父に見られたらめんどっちいの」
「あの! 何で怒られてたんですか!?」
そして文人くんはケロッとしてるし。ボクはだんだん腹がたってきて、思うままにセリフを吐いた。
すると文人くんは言いづらそうにして話すんだ。
「いやぁ……競馬で負けちまってさぁ。借金ヤバくて? オレん家、勝負の神を祀ってる神社だから説得力ねぇってなるじゃん? で、親父カンカンってコト」
頰をぽりぽり掻いて苦笑い。ほらね、碌な人じゃない。
新撰組を見つけたのはいいけどさ、新撰組の価値が下がる気がするや。




