15話:妹の朱音ちゃんと大学内で会う
とある日の午後。
「あ、先輩!」
「ん? あぁ、朱音ちゃんか。お疲れ様」
「はい、お疲れ様です!」
大学の中をのんびりと歩いていると、仲の良い後輩の朱音ちゃんが声をかけてきてくれた。そしてそのまま朱音ちゃんは楽しそうに身体をクルっと一回転させてきた。
「ふふ、今日の服装はどうですか? 夏っぽい感じの爽やかな服装にしたんですけど?」
「え? うーん、そうだねぇ……」
そう言われたので俺は朱音ちゃんの姿をじっと眺めていった。
今日の朱音ちゃんの服装はノースリーブの白い服に下は黒のショートパンツという感じで確かにとても夏っぽい感じの服装だった。あと露出も多めで何というか物凄くギャルっぽい感じだなって思った。
まぁつまりはギャルっ子の朱音ちゃんにとても似合っている服装だった。
「うん、朱音ちゃんに凄く似合っているよ!」
「そうですか? ふふ、嬉しいなぁー」
という事で俺は素直な気持ちで朱音ちゃんにそう伝えると、朱音ちゃんはとても嬉しそうな笑みを浮かべてきてくれた。そんなにも喜んでくれたのなら俺も素直に伝えていった甲斐があったというものだ。
「ふふ……って、あ、そうだ。そういえば先輩ってもしかして今日の講義は全部終わった感じですか?」
「うん、そうだよ。俺は今から帰る所だよ」
「あぁ、そうなんですね! それじゃあ、もしもこの後暇なようなら私の買い物に付き合って貰う事って出来ませんか? もちろん何かしらお礼は必ずしますから!」
「え、俺が朱音ちゃんの買い物に? まぁ暇だからそんなの全然良いんだけど……でも買い物をするんだったら男の俺なんかよりも、同性の女の子と一緒にした方が楽しいもんじゃないのかな?」
朱音ちゃんは俺にそんな提案をしてきてくれた。
もちろん朱音ちゃんからのお誘いは嬉しいんだけど、でも買い物とかなら同性で行った方が楽しいんじゃないかなと思ったので、俺は朱音ちゃんにそう尋ねていった。
「あぁ、はい、もちろん先輩のその意見も正しいとは思うんですけど……でも、その……最近は買い物とかで外に出かけると……ナンパとかスカウトみたいなのに声をかけられる事が凄く多くてですね……」
「え? あぁ、なるほど……うん、それは大変だね……」
「はい……」
朱音ちゃんはしんどそうな表情をしながらそう言ってきた。その表情だけでもう色々と察する事が出来る。
(まぁ、そりゃあこんだけ可愛い女の子なんだから、街中を歩いていたらしつこいナンパとかスカウトとかに声をかけられそうだよな……)
「そっか……女の子だけで外に出るとそういうのがあるのは本当に大変だよね……」
「はい、そうなんですよ。それで、実は私ってその、あんまり知らない人に声をかけられるのって正直ちょっと怖いって思うタイプなんで……だから出来れば先輩に付き添って貰えると嬉しいんですけど……」
「なるほどね。って、あぁ、確かにそういえば朱音ちゃんと去年に初めて会った時は物凄く人見知りしてたもんね?」
「え……って、あっ! も、もう……そんな大昔の事言わないでくださいよー!」
「はは、ごめんごめん」
俺が笑いながらそんな昔の話をしていくと、朱音ちゃんは頬を膨らませながらちょっといじけた態度を取ってきた。
(はは、やっぱり似た者姉妹だよなー)
姉の四条さんも今の朱音ちゃんと同じように頬を膨らませながらいじけた態度をする事が時々あるんだよな。まぁでもやっぱり二人ともそんないじけた仕草も凄く可愛らしいよなぁ。
「……でも、先輩はその……去年に私と初めて会った時の事を……今もずっと覚えててくれたんですか……?」
「ん? あぁ、うん、それはもちろん。そりゃあ仲の良い後輩との事はちゃんと覚えているに決まってるよ」
「そ、そうですか……ふふ、それならとっても嬉しいです……」
そう言うと朱音ちゃんはいじけた態度から一転して、とても柔和な笑みを浮かべていってくれた。
「あ、というわけで今日は私の買い物に付き合って欲しいんですけど……大丈夫ですかね?」
「うん、もちろん大丈夫だよ。今日は朱音ちゃんの買い物に付き合うよ」
「やった! ありがとうございます先輩! はい、それじゃあ早速行きましょう!」
「うん、わかったよ」
という事で俺達は一緒に大学の正門を出て、そのまま駅前の方へと向かって歩いて行った。
◇◇◇◇
それから数十分後。
俺達は一緒に電車に揺られながら都心部の駅へと降り立った。そしてその駅周辺で俺は朱音ちゃんの買い物に付き合っていく事になった。
「いやー、流石に平日でも都心部だと人混みが凄いね。俺の今までずっと住んでた田舎とはマジで雲泥の差があるよ」
「あ、そうなんですか? 先輩が今まで暮らしていた実家の方はこんな人混みとかは全然無かったんですか?」
「うん、俺が住んでた所はかなり田舎な方だったからね。だから上京してきて最初の頃はあまりの人の多さに圧倒されちゃう日々だったよー」
「あー、それは私もわかります! 私も高校生の時までは都心の駅なんて降りた事もなかったので、大学生になって色々な所に行くようになってから人の多さにビックリするようになりましたよ。ふふ、でもいいなー。私も先輩の住んでた田舎に行ってみたいなぁ……」
「はは、俺の田舎なんて何もない所だよ。きっと朱音ちゃんみたいな今時の若い子は退屈してすぐに帰りたいって思っちゃうんじゃないかな」
「えっ!? いやいや! そんな事は絶対にないですよ! だって先輩が暮らしていた場所なんですよ? ふふ、そんなの……先輩の住んでた所を沢山見れるなんて……ずっと見て回れるに決まってますよ……」
「え、そうかな? そっか、うん、まぁそれじゃあさ、もしもいつか朱音ちゃんが俺の田舎ら辺に遊びに行くような事があったらいつでも言ってよ。その時は俺がいつでも道案内をしてあげるからさ」
「え……えぇええっ!? ほ、本当ですか!? や、約束ですよ!!」
「え? あ、あぁ、うん、約束だよ」
「はい、ありがとうございます! ふふ……嬉しい……」
俺はあくまでも普通な感じでそう言っていったんだけど、でも何故か朱音ちゃんは目をうっとりとさせながら俺にそう返事を返してきた。そんなに田舎に興味があったのかな?
 




