第4話 Grave robber 後編
-トワ SIDE-
その日は月が輝いていた。
星空はキラキラと輝き、その光を反射する。
その反射しているものが湖とかだったら綺麗だっただろうに…。
まぶしい月明りを反射する2.3台の重機
その横には、数十名の兵士とお嬢様を抱えた私。
「それでは~今から私の死体掘り返し大作戦を開始しま~す♪」
帰りたい…。
「ちょっとー!あんた指示役なんだからもっとちゃんとしなさいよ!」
「あの、一つお伺いしたいんですけど、今何時かご存じですか?」
「え?朝の4時くらいでしょ?」
「いや、もっと早く開始できなかったんですか!?深夜どころか、日の出もいい時間帯ですよ!?」
「仕方ないでしょー!私の美体を置くために部屋の整理をしてたんだから!」
「それにしても遅すぎるでしょ!?傍から見たら『おはよう!朝4時に何してるんだい?』とか言われますよ!?」
「大丈夫よ!私も普段これくらいの時間起きてるし。」
「それはお嬢様だけでしょ!?私でも寝てますよ!見てください!あの待機してる兵士たちの顔!眠すぎて死にそうな顔してますよ!!ってか、普段こんな時間まで何してるんですか!?」
「ごちゃごちゃうるさいわね~。とりあえず始めるわよ!」
もうやだこの人
するとお嬢様は、自分が出せる最大の声を振り絞って兵士たちに問いかける。
「とりあえず!まずは棺桶が見えるまで重機で掘り起こすわよーー!!Xエネルギーの補充はできてるー?」
「はい!今日の作業で使用する分は補充できてます!」
『Xエネルギー』 最近発見された新しいエネルギーだ。
今まではほかの様々な国が燃料を石油に頼っていましたが、Xエネルギーの発見で、ほとんどの国がそのエネルギーを使用して急速な発展を遂げている。
最初は私たちの国では使用していなかったのですが、他国でXエネルギーを使用していない国が発展途上国レベルまで落ちたと聞いて、最近私たちの国にも取り入れた。
「とりあえず、棺桶を傷つけないように、慎重に掘り起こしなさ~い!」
「了解です!」
こうして作業が始まった。
重機が音を立てて動き出し、作業者の人たちがわざわざ埋めてくれた土を掘り返す。
こうしてみていると、めちゃくちゃ申し訳なくなってくる。
「う~ん。なんかすごい音してるけどどうしたの~…?」
「お、ミサ!起きてきちゃったの?」
「妹様、起きてしまわれたのですか…。」
こんな夜中に起こすのも申し訳ないと思い、起こさないでおいていたのだが…。
まあ、そりゃこんな音立ててたら起きてくるわな。
「で、何してるの?」
「今ね!この前埋めた死体掘り起こしてるの!」
「え!?なんで!?この前業者さんが埋めてくれたのに!!」
「そうなんだけどね、私埋めた後に良いこと思いついたの!」
「へー、どんなこと?」
妹様の顔がなんだか嫌な予感を感じたのか、少し引きつる。
「聞いて驚かないでよね!なんと!私の美体を部屋に飾ろうと思うの!」
「へっ、へ~。それはいい趣味だね…。」
おい姉。めちゃくちゃお前の妹ドン引きしてるぞ。
なにドヤ顔で固まっとんねん。
とりあえず、妹様の耳元でこそっと忠告する。
「あの、妹様?気分を悪くするようでしたら、お部屋に戻っていただいて構いませんが?」(ってか、戻ったほうがいいと思うんですが)
「いや、なんかこの状態のお姉ちゃんって、見てて面白いから付き添ってる」
おい姉。お前妹に娯楽扱いされてるぞ。
「エリシア様ー!!棺桶の表面見えてきました!」
「よし!じゃあ、ここからはスコップで掘っていきなさい。」
「了解しました!」
「ほら!執事もいってきなさい。」
「はい…かしこまりました。」
早く終わらせるためにも、掘り起こす作業には私も参加することになっている。
「執事さ~ん!兵士のみなさ~ん!がんばって!!」
あぁ、妹様は良いお方だなぁ。それに比べて姉は…。
そう思うとなんだか涙が出てきた。
そうして、私たちは黙々と作業を進める。
すると、隣で作業していた一人の兵士が私に話しかけてきた。
「いや~執事さんも大変ですね~」
「そうですね~。お嬢様はいつも発想がおかしいので…。」
「ははは、まあ、私たちも兵士という立場故、命令があったらすぐ出動しないといけないので。」
「あー…。いつもすいませんね…。」
「あーそんなそんな!執事さんが謝ることもないです!それに、あの方は、戦闘などの時はかなり的確で頼もしい指示を出してくれるので、こちらとしてもかなり助かっています。」
「まあ、お嬢様はああ見えてねはしっかりしてますからね~」(あれはただお嬢様のSっ気が発動してるだけでは…?)
「おっ!?いい感じに掘り起こせたんじゃないか?」
「そうですね!みなさん!棺ごと持ち上げて地上に上げますよー!!」
「「おおおおおおおおおお!!!!」」
最後に待っている一番大変な作業。全員が最大限の力を振り絞って棺を持ち上げる
こんな大勢で持ってるのに、腕が折れそうなほど重い。
腕がプルプルと痙攣しだす。
しかし…。
「皆さん!一人でも手を放してしまったら、ここにいる全員が棺につぶされます!最後まであきらめないで!
最後にひと踏ん張りです!棺桶を地上に上げろーーー!!!!」
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」」
こうして、作業が終了した。
掘り起こした部分は、重機がすべて埋めなおしてくれた。
いま、私たちは、お嬢様の部屋にいた。
「バーク先生。ホルマリンの準備、ありがとうございます。」
「いえいえ、これくらい掘り起こしに比べたら楽勝ですよ。とりあえず、お嬢様の体がぎりぎり入るくらいの強化ガラス張りの水槽を持ってきましたので、そこに体を入れてもぎりぎり溢れない量のホルマリンを入れておいたので、これで大丈夫かと…。あと、蓋に関しては、この後がちがちに固定しますので、倒れてもこぼれる心配はありません。」
「お~、なんと良い設備」
「本当にありがとうございます!」
「それでは、さっそく体を入れてみましょう。」
バーク先生と二人で体を持ち上げ、水槽に入れる。
「わー、本当に溢れない!」
「そうでしょう!しかも、色の薄いホルマリンを使用したので、体も観賞し放題です。」
「ありがと!先生!」
グッと親指を立てるバーク先生。
もしかして先生もやばい人…?
「とりあえず、時間も時間ですし、今日は解散しましょうか!」
時計を見ると、7時を超えていた。
「それでは皆さん、今からはがっつり睡眠をとって、明日からの生活に支障が出ないようにしましょう」
「そうね。それじゃあ、おつかれさまでした~!」
「「おつかれさまでした~!」」
「では、解散!!」
こうして、お嬢様の死体掘り起こし大作戦は幕を下ろした。
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