第2話 beginning
-エリシア SIDE-
「……さま。 …じょうさま。
お嬢様!」
!? 執事の声で目が覚める。いつの間にか気を失っていたようだ。
つーか、どこだここ?
目が覚めたのはいいが、まだ意識がはっきりしない
えっと、確か私は…。
「おねえちゃーーーーーん!!!!!!!」
うわぁ!?びっくりした!
急な大声に完全に意識がはっきりする。
「お嬢様は移動中に首を切られ暗殺されかけたんです!思い出せましたか!?」
そうだ。私は首を切られて…。
ちょっと待て。なんで生きてるんだ?
そう思い下に視線を向けると私の首には管が通っており、管とつながった機械で血液を巡回させていた。
「今、お嬢様の生命を維持させるため処置を施してもらいました。バーク先生、ありがとうございます。」
「いやいや、こちらとしても研究が進展してありがたい限りです。」
この白く長いひげを生やしたメガネの男は、バーク先生。ハーヌルン帝国国立病院の院長だ。
前々から斬首後の生命維持などについて研究していたとは聞いていたが…。
そう思った時、私は急に抱き着かれた。
「お姉ちゃん…。生きててよかった…。」
私を抱きながら涙を流す彼女の名は、ミサ・アクレアーヌ。
私の義妹である。
私とミサは、他人から見てもわからないほど瓜二つで、どうやらお父様が私の影武者として拾ってきたらしい。
見た目で違うところとしては、ミサにはデカいアホ毛があって、びっくりするほどに胸がないことくらい。
そんな妹に抱き着かれている私は、妹の温かさと胸がない分よく聞こえる心音に身をゆだね、
半分寝かけていた。
ミサって謎の母性があるんだよね。あー、昇天しそう
なんて癒されていると、私の心情を察した執事にミサから引きはがされる
―ちぇっ。もっとこの優越感に浸ってたかったのにー
そう言おうとしたとき、私は気づいてしまった。
声でねーじゃん
え?これからどうすんの?つーか、このままここで管生活とか死んでも嫌だぞ
「安心してください!お嬢様。ちゃんと対処法はあります」
執事がそういうと、後ろからバーク先生が謎の極小サイズの機械を持ってきた。
「この機械は、ちょうどのどのあたりに付けて声を出そうとすると、機械が脳波を読み込んで自動的に声を出してくれる優れものだ!
名付けて、コエガデル~ン☆」
…。
一瞬場の空気が凍った気がするけどそれは置いておいて、この機械から出る声って、やっぱり今までの声とかじゃなくて、変なロボットの声みたいになるのかしら?
執事に何とか伝われと口パクで伝えてみた。
「あー、はいはい。あ、バーク先生すいません。この機械から出る声って…。」
いや、なんで伝わるんだよ。こいつ超能力者?
「10年以上お嬢様についているんです。これくらいわかって当然でしょう。」
あー、やっぱこの執事は頼もしい。で、質問の答えは?
「一応エリシア様の声をサンプリングしてあるので、声には特に問題ないかと…。」
「では、1度何かしゃべらせてもらえませんか?」
「あ、サンプル音声があるので、流せてみますね。」
『CYKA BLYAT!!』
「うん、完璧ですね。」
おいちょっと待て。サンプル音声になんてもん入れてくれとんじゃ。
しばき倒したろか
「そして声のほかにもう一つ。今は管を機会につないで血液循環をしていますが、さすがにこのままだと不便でしょう。
なのでお嬢様の体内のみで循環できるように、この小型の人工心臓を後頭部に埋め込みます」
そう言って取り出したのは、超小型のゴムで覆われた機械。
「しばらくは後頭部での振動が気になるかもしれませんが、しばらくしたらなれますので。」
まあ、このまま管生活よりはましだろう。
私は執事に同意の視線を送り、半日にわたる手術が開始した。
「わーすごい!声が出るわ!!」
喉元と後頭部に違和感はあるが、しゃべれるようになったことがうれしすぎる。
「よかったね!お姉ちゃん」
「ええ。ありがとう。二人には本当に迷惑をかけたわ。」
「いいえ。お嬢様を守れなかった私の責任です。」
「いやいや、実際今生きて生きてるんだし、大丈夫よ。」
「いやですが、国民の皆様に不安を与えてしまったのも…。」
「そうなったときの、影武者である私じゃないですか。」
そう言いミサは執事に近づく。
「国民の皆様には、殺されたのは身代わりと説明し、政治はお姉ちゃんがやって、表に出るときは私が出れば完璧です。」
「なるほど。わかりました。それでは、今後の方針としては、お嬢様の死をごまかし、国民の不安を減らす。そんな感じでOKですね?」
「OK~」
「了解です!」
こうして私、お嬢様の生首生活が今始まった。
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