第十一話(ラシェル・7)(最終回)
■ ラシェル・7(終わり) ■
あの卒業パーティから、一年経って、学園を卒業したジスラン様は、クライエルン伯爵領にすぐさまやってきてくれた。
そしてその一か月後には結婚式を行った。
盛大に挙げた結婚式には、なんとリトリュイーズ侯爵令嬢もご参列くださった。
「ほほほ、卒業パーティの時、ラシェル嬢とジスラン殿にはあの無能と縁を切らせてもらう良いきっかけを貰いましたからね」
……まあ、わたしたちのコトがなくとも、リトリュイーズ侯爵令嬢であれば、元王太子殿下が何と言おうとも、ご自分の描く未来通りに進まれたに違いない。
うんまあ、わたしもね。平々凡々、中程度の伯爵家だけど、リトリュイーズ侯爵令嬢をみならって、がんばって自分の領地を治めていきましょうね。
そうそう、卒業パーティといえば、あの後デュセイ様は一人、ご実家に戻られたそうだ。だけど、廃嫡された元王太子とのつながりも無くなり、サラ嬢や他のご学友の皆様とも疎遠になり、デュセイ様の側には誰も居なくなった。
お父上であるカルヴェス男爵からは「ここに居るのなら、自分の食い扶持くらい自分で稼いで来い。それが嫌なら独立しろ」と言われたらしい。
試験を受けて文官になるほどの才もなく、どこかに婿入りすることもできない。
卒業パーティのやらかしを皆知っているからね。
仕方がなく、船着き場で荷下ろしの肉体労働をして、日銭を稼いでいるらしい。大変ですが、頑張ってくださいね。ジスラン様の実の兄であっても、わたしをブサイクと見下していた方ですので、わたしもジスラン様も積極的にデュセイ様を助けて差し上げるつもりもありませんけどね。
まあ、デュセイ様なんて、どうでもいいのよね。
大きくなってきたお腹をゆっくりと撫でる。
出産まではまだ半年もあるというのに、義母もジスラン様も生まれてくる赤ちゃんのための産着やおしめを、これでもかっ! というほど大量に、準備してくれている。
父もそうだ。
わたしにさっさと爵位を渡して、義母と共に悠々自適の生活を目指していたはずなのに、やる気を出して伯爵領を治めている。リトリュイーズ様のレザイ侯爵家との繋がりも出来て、わたしとジスラン様の子もできて「ここが頑張り時だっ!」と奮起してしまったようだ。
まあ、この熱意がいつまで続くか……。だけど、わたしとジスラン様の子がある程度大きくなるまで、頑張ってくれればそれはそれで助かる。わたしもしっかりと、子どもの成長をみたいからね!
弟のジュリアンもわたしたちの子どもが生まれてくるのを楽しみにしている。
ああ、毎日順調、なんて幸せなの。
「お前の婚約者って地味だよな」と言ってくださった、クロード様やジョージ様にはこれ以上もなく感謝している。
あなたたちの、そんな些細な一言のおかげで、今わたしはこんなにも幸せになれたのだから。
どうか、お二方も、リトリュイーズ様も、皆様それぞれの婚約者と、末永くお幸せにっ!
終わり
たった一言から相手を嫌になり、それに伴い変わる未来、というのをやってみたくて書いたお話です。楽しんで読んでいただければ幸い。
誤字報告くださった方、ありがとうございます感謝です!!
お読みくださった皆様、ブクマやいいね、評価、感想、ありがとうございます!
おかげさまで、7月23日ジャンル別日間ランキング70位→36位!24日13位→5位!
そして、7月25日・26日ジャンル別日間ランキング(恋愛)1位です!
7月27日には週間ランキングでも1位、月間ランキングでは32位でした。
皆様本当にありがとう!!感謝です!!
うっきうきで『ひゃっほーい』の方の書籍化作業に戻れます!活力をありがとう!!
ではまた。
藍銅 紅の別のお話でもお会い出来たら嬉しいです。