竹のペンシルロケット発射準備
「いや、それを集めろと言われましても探したいのはやまやまですが、存在しないものは何処の場所を探しても見つからないので出来ないです。」
流石に何でもやるとは言ったけど、無理なことを引き受ける訳にはいかない。
「いえ、存在はしますし、場所も分かっております。案内には私の娘、月夜輝夜をつけますので道案内はご安心ください。少し採取は難しいですが、神兎なら何とかなると思ってます。」
「神兎殿、採取は日本に行った後になります。まずは無事に日本に帰ってはいかがでしょう。見たことも聞いたこともないものを探すのはご不安でしょうが、やってみないとできるかどうかなんて分からないでしょう。」
「そこまで言われれば、分かりました。神兎颯、蓬莱のの珠の枝、火鼠の皮衣、龍の髭、入手してみせます。」
「よくぞ決断してくれた。さすが男の子じゃのー。良い男に育つは。なぁ、其方、妾と付き合ってみとうないか?」
かなりの美人な輝夜様にそう言われる。嬉しいことは嬉しいし、こんな人に好いて貰えるのなら大変光栄なことだろう。でも……。
「輝夜様のお気持ちは大変嬉しいです。僕には好きな人が、想いを伝えて繋がった大切な人がいますので、大変申し訳ないですがお付き合い出来ません。」
座りながら、頭を下げる。もはや土下座している感じになってるな。
「良い良い、戯れに言ってみただけじゃ、が、もし心変わりする様であれば、私の娘に伝えくれると言い」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
輝夜様やジイから、色々な注意事項やこと後行動することを聞き、いよいよ竹型ペンシルロケットを打ち出すことになった。
初めて、地表に出たが本当にそこは、月だった。クレーターがあり、月の砂がある。いや、月に砂があれば月の砂だから、敢えて言うほどのものでもないのだが……。
一番感動したのは、蒼く大きく見える星が見えたことだ。綺麗な星だ満月のお月様も綺麗だが、青く輝く星は初めてみる。あれが……
「あれが地球でございます。神兎殿。綺麗でございましょう」
「はい」
千尋ちゃんにも見せてあげたい、素晴らしい光景だ。
「さっ、では竹ロケットに乗って下さい。」
僕はうちでの小槌で叩かれて、小さくなった。蟻と同じくらいの大きさになってしまった。ふと誰かが僕を間違えて踏んでしまうとそれだけで無くなってしまう。竹ペンシルロケットに乗り込む。
「では、皆さん準備をお願いします」
「「「はい」」」
ウサギたちが竹のペンシルロケットを中心に囲んでいる。その後ろにもうちでの小槌を持った兎がいる。
「巨大化」
後ろの兎が前の兎をうちでの小槌で叩く、叩く、叩く。
どんどんどんと大きくなっていく。
「杵隊、エネルギー充填」
巨大化した兎隊が竹ペンシルロケットの周りに置いてある臼に杵を振り落とし、どんどんと餅をついていく。
「エネルギー充填率30パーセント」
「さぁ、もう少し張り切って餅をつきなさい」
「「「はい」」」
トントントントン、小刻みに杵が振られ、餅がどんどん形を成していく。
「エネルギー充填率98、99、100。エネルギー充填完了です。」
「了解、では輝夜様発射の合図を」
「では、打ち上げる。5.4.3.2.1.発射。」
臼から竹ペンシルロケットに淡く輝くエネルギーが注がれて、発射される。
点火され、竹のペンシルロケットの下5段がポンポンポンと離脱し発射されていく。
「輝夜様、じぃ、他の兎のみんなありがとう。僕は地球へ好きな人のとこへ帰ります。みんなのことは、忘れません。またお会いしましょう。」
竹ペンシルロケットの中で、誰にも聞こえない中、神兎は感謝の言葉を呟いた。