苦い思い出
「幸せになってください」
僕と、という言葉を忘れたのではないかと一瞬思った。
だが、それは彼からの最後の言葉だ。
たまたま行ったセミナーに、たまたま遅れ、マンツーマンでレクチャーしてくれた。
その時、話の成り行きでメールアドレスを教えたのが始まりだった。
運命を感じ、浮かれていた私だが、幸せな時間は長くは続かなかった。
彼と一緒に参加したイベントで、意気投合した友人達の一人。
そんな関係の彼女に、寝取られた。
トンビに油揚げをさらわれる、とはこのことか、と思ったが、なんのことはない、よくある話。
それは仕方がないにしても、自分自身が嫉妬に駆られ、醜い人間に成り下がってしまった。
女性としても人間としても酷い言葉を吐いてしまった。
自分が一番なりたくない人間になってしまっていた。
そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ。




