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第八話 火薬の錬金術師

「さて、戦後処理に取り掛かろうか」


 声に出して言ったけど、実はあんまりやることがないんだよね。魔石の回収と反省会、あとは武器を漁ったり。師匠はアンデッドだったから魔石はないし、そもそも師匠の魔石を取ろうとは思えない。


「あれ?師匠の仮面だ?」


 どうしようかと考えてボス部屋を見回すと、視界の端で何か光を反射するものが見えた。仮面。師匠の鬼の仮面。他の鎧と一緒に落ちていたはずなのに、俺の方に投げ出されたように落ちていた。


 この時の俺にはまるで師匠が「これも持っていけ」と言っているように思えた。師匠の仮面は二つのパーツからできていた。口だけを覆う部分と、口から上を覆う部分。この二つがカチッとくっつき、一つの仮面を作っていた。とりあえず腰に下げることにする。


「ありがとうございます、師匠。お守りにしますね」


 あ〜〜起きて早々しみじみしてしちゃった。よし!『並行思考』で人格を入れ替えて、気持ちリフレッシュしよう。


 ちなみに今俺が『並行思考』で分けてある人格は以下の通りだ。

・戦闘狂としての俺

・復讐者としての俺

・論理的な俺

・平常運転な俺

・その他の人格


 師匠とやり合っていた時は5人格シフトで足りたから今は5個しかないけど、やろうと思えば『その他の人格』をあと二回ぐらい分けられるはずだ。


 んー、でもやっぱりやることないな。ここの部屋に三ヶ月もいたんだ、そろそろ次に進まないとね。



 そうと決まれば早かった。あのあとゴジと俺はすぐにボス部屋を出発し、また洞窟を進んでいった。

 

 それから三日ぐらい何もない日が続き、ボス部屋から出て四日がすぎたとき洞窟の狭い道が一気に開けた。いつもなら気にも留めないが、この部屋には鉱石らしきものが散乱していて、奥の方にはテーブルに伏せている遺体があった。


「なんだ、この部屋?」

「グルル〜」


 ゴジがいかにも「分からないよ〜」みたいな感じで返してくれたけど、俺はゴジが生まれた時から一緒だから情報は期待はしてないんだよな。ま、とりあえずあの遺体を見てみるか。


 遺体は椅子に座り、木製のテーブルに伏せていて、手に何かを持っていた。魔石のようなもので、拾い上げると何かが刻まれているように見えた。


「なんか書いてあるけど埃をかぶっていて、読めねえ〜。って!痛えぇぇぇぇ!」


 何かが魔石に刻まれていて、埃で見えなかったからそれを払うと、今度は尋常じゃない頭痛とたくさんの情報が頭に流れ込んできた。ほとんどは記憶のような断片的もので、最後の方はメッセージみたいな文字が流れ込んできた。

 

 内容は、


『我の名はレオナルド・ダヴィンチと言う。第一回異世界召喚の勇者パーティー、錬金術師を務めていた。あまり文字数がないので単刀直入に説明する。

 我ら勇者は、元の世界の様々な時代から集められた優秀な人々だった。その中でも極めて賢く、強く、技量に優れているものが勇者パーティーを組んだ。

 

その目的はただ一つ、魔王を倒すこと。

 

 魔王は定期的に現れるらしく、今回の魔王は特に強かったらしい。そしてあまりにも強かったため、魔法という不思議な力で我らが召喚されたというわけだ。実際、とても強かった。しかし、本当の問題は我らが魔王を倒した後、女神側から受ける扱いが変わったことだ。我らを召喚した女神側は急に態度を変え、彼らから見て『邪魔』な人間はすぐに排除された。私もその1人でアイテムも何も持たされずにこの洞窟に飛ばされた。なんとか気合いでここまで生き延びた。しかしそれも、もう限界だ。なので、ここまで辿り着き、この魔石を手にしたものには我の持つ錬金術を全て教えよう。そして、願わくばあの女神を……ぶっ殺して欲しい。』




 とのことだ。

 

 レオナルド・ダヴィンチが出てきたのはマジで驚いた。しかも、人類の偉人達が他にも召喚されたらしい。なにそれ、F a○eシリーズですか?

 

 さっき手に入れた記憶も錬金術に関してのものばかりで、論理的な人格に処理させている。

 

 どうやら錬金術系のスキルツリーは存在するが、それがなくても使えるらしい。理由は錬金術には『言語』があるからだ。そもそも錬金術は錬成陣を描き、それを使って素材を合成したり、複製したりするのものだ。で、そのとき錬成陣に書く文字はそれぞれに意味があり、言語を成している。


 困ったことに、その言語は一人一人がオリジナル制作で、必要な文字数が膨大だ。このためレオナルドの時代には完成していた言語はひとつもなかった。しかし、錬金術ツリーがあれば、オリジナル言語を作るのが楽になるらしい。


「錬金術かぁ〜。やってみようかなぁ〜。でも、言語を考えな……あ!あるじゃないですか!ひとつ一つの文字に意味がある言語が!漢字ならこの世界にはまだないし、俺のオリジナルの錬金術言語になるんじゃね!それと俺の目当ての物が作れたら、最強になれるかもしれない!」


 この世界には漢字が存在しない。だったら俺が作ったことにして錬金術の言語にできるのでは?と考えた。レオナルドの記憶で、大体のやり方はわかった。ならば、あとは実践あるのみ!


 step1

 まずは魔石を砕き、水を加え、ペースト状にする。


 step2

 魔石ペーストで、錬成陣を描く

 俺の目当ての物を作るためには、物質合成の錬成陣を描く

 学校のノートに二重の円を描き、そこに漢字を書き込んでいく。

 炭・黄・硝・物・合・爆・黒・粉


 step3

 後は媒体を魔法陣に置いて、魔力を流すだけ。

 

 レオナルドの記憶の中で魔力の感覚や使い方がようやく分かった。これだけでも大収穫だがこの錬成が成功すれば、俺は人類最強の殺戮兵器が手に入る。察しがいい人は、漢字を見て俺が何を作ろうとしているのか分かったかもしれない。


「グル?」

「ん?これが何かって? ははは、人類最強の殺戮兵器…………『火薬』様だ」


 俺はその言葉と共に、採ってきた鉱物を錬成陣に乗せ、魔力を流した。

 瞬間、一瞬光ったと思ったら鉱物はみるみる形を変え、黒い粉になった。





 この小説をお読みくださりありがとうございます。


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