ヤった
ヤッてしまった。
欲に任せて突っ走りすぎてしまった。
とてつもなく気持ちよかった……じゃない。
賢者タイムになってから押し掛けてくる後悔。
思わず頭を抱えてしまう。
俺の隣で幸せそうに眠る長い髪の女の子。
白い肌がキラリと輝く。
「……」
頬を抓るがちゃんと痛い。
どうやら夢でもないらしい。
変な汗が出てくる。
いや、マジで笑えない。
何がやばいのか。
時間を遡ること数時間前のこと。
夕方。
妹の結華が家に友達を連れてきた。
長いポニーテールを生やす女の子。
身長は高めで、くびれは細め。
スタイル抜群だ。
何かのスポーツをやっているのだろう。
筋肉があるように見える。
見えるだけなので実際は分からない。
そもそも制服を着ているので、筋肉自体そこまで無いかもしれない。
あくまでも推測だ。
「あ、お兄ちゃん。私の友達のえっちゃん。今日ウチに泊まることになったからよろしく」
「は。急になんだよ。聞いてないんだけど」
「いや、言ってないし」
「母さんに許可取ったのか?」
「流石にそれくらいはちゃんとするから私のこと舐めすぎね」
ほら、とスマホの画面を見せてくる。
表示されているのは母親とのトーク画面。
シロクマが「オッケー」という木看板を手に持っているスタンプを母親は送っている。
いや、軽すぎじゃないですかね。
「お兄さん初めまして。横原萌ッス」
「あ……。どうも、結華の兄の海です」
「海さんッスね。了解ッスよ」
「じゃあ、えっちゃん。私の部屋行こ」
「オッケー」
結華と萌は部屋へと向かう。
数十分くらい経過すると、結華がリビングへとやってくる。
テレビで観ていた動画を無理矢理止められる。
「んだよ。今いい所だったのに」
「そんなの知らないから」
なんか不機嫌に見えるがこれが通常運転。
一々気にしているとキリがないので、「怒ってるの」と聞いたりはしない。
スルーが1番。
きっと毎日女の子の日なんだろ。
知らないけど。
「ちょっと私出掛けるから。えっちゃんにちょっかい出さないでね。絶対だからね」
「あぁ。うん。分かったよ」
「てか、お兄ちゃんには無理か」
1人でうんうん頷きながら、出ていった。
こんな時間にどこへ行ったのだろう。
妹が着々と不良の道へ進んでいてお兄さんは心配です。
そんなことを思いながら、強制的に止められた動画を再生した。
「海さん! なんの動画見てるんスカ?」
「うおっ……。ビックリした。うーんと、ゲーム実況ですよ」
「ゲーム実況っスカ! 良いっスよね。自分もゲーム実況とか良く見たりするッスよ」
「ふーん。そうなんですね」
「なんか食い付き悪いッスね。あ、自分に敬語は不要ッスよ。年下なんで!」
ニコッと笑う。
「それよりも自分と楽しいことしないッスか? ゆーちゃんが居ないからこそ出来ることもあると思うんッスよね」
「……?」
「こっちッスよ。こっち!」
と、手を引かれ半ば強制みたいな形で連れて行かれた。
「海さんの部屋はどっちっスカ? ここっスカね?」
萌は軽く首を傾げる。
「まぁ、そこだけど」
「当たりッスね。自分こういう勘だけは妙に鋭いんスよ。不思議ッスよね」
そんなことを言いながら、当然のように部屋に入った。
「面白いもん何もないぞ」
「大丈夫ッスよ。面白いものはそこにちゃんとあるッス!」
萌が指を指すのは俺。
「出会ってそうそう玩具扱いか」
「間違っては無いッスけど。ちょっと違うッスよ。海さんの下ッス」
「は?」
「ここッス。この柔らかい棒ッス!」
萌は俺の陰部をズボンの上から慣れてない手つきで触った。
こうして今に至る。
隣で眠る萌を見つめ、小さなため息を吐く。
はっきり言うが、ヤッてしまった。
セックスだ、セックス。
夢にまで見たセックス。
気付いたら童貞卒業だ。
お赤飯ものなのだが、この卒業の仕方に限っては全くお赤飯ものじゃない。
相手が妹の友達だ。
知り合って一日目の妹の友達で童貞卒業。
赤飯じゃなくて血飯になるね。
笑えない。
まぁ、なんだ。
俺が童貞を捨てただけならそれで良い。
それも一種の経験として受け入れられる。
そもそも童貞を捨てられただけでも満足だ。
だが!
ヤッた時に萌の物からは血が出ていた。
破れていたのだ。
もう、何がとも言及しないけどさ。
破れたんだよ。
あー、もうめちゃくちゃだ。
とにかく。
妹の友達の処女を奪った。
しかも生。
外に出したとはいえ不味いものは不味い。
ただ襲ったわけじゃない。
むしろ誘われていた。
同意はあったから逮捕はされない……はずだし、怒られることはあっても殺されることは無いはず。
いや、待てよ。
相手は未成年。
俺は成人済。
殺されるとか、怒られるとかそれ以前の問題なのかもしれない。
あれ、逮捕されちゃう?
「……激しいッス」
はぁ。
どうすれば良いんだこれ。
焦りながらとりあえず萌を起こしたのだった。




