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040 優秀な人材

 

 国営銀行の話はスグに決まった。

 翌日の昼には、例の大臣が銀行にやって来たのだ。

 が、銀行と言うモノが今一わからない大臣。

 王の命とあってやらない訳には行かない。

 多分に自分が進言もしたのだろうから尚更だ。

 その相談も兼ねての来訪だ。


 ソコで提案の一つから、商人ギルドの銀行部門から一人を出向と言う形で出す事に成った。

 その人選は、マリーがロイドに投げた。

 頭の切れる誰かを寄越せと、丸投げだ。


 程無く、盗賊の一人が銀行にやって来てマリーのマンツーマンの教育を受ける事となる。

 その男、モンテ・シアンと言った。

 中々に優秀な様だが、少し線が細い感じだ、幾度かマリーに泣かされているのを男は見てしまった。

 だが、シゴキのかいもあり、程無くイッパシのバンカーに成った。

 ……バンカーじゃ駄目じゃん、国営銀行に出向なのに銀行員じゃなきゃ。

 そんなこんなで数日。

 最後は涙の卒業試験。名残惜しとかじゃ無い、ただ意味の無い腹筋を延々とやらせただけ。

 そりゃ、泣くよ。

 そして蛍の光をマリーが唄って、旅立って行った。城の中にだから、スグそこなのだが。


 

 「これで、全部解決だな」

 男はモンテをマリーと一緒に見送って。


 「そうね、案外うまくいったわね」

 マリーもそれには頷いていた。


 「俺も王に近付いたか? 金融王か?」


 「何馬鹿な事を言っているの」

 マリーは男を一瞥し。

 「稼ぎも録に無いくせに」


 「イヤイヤ、銀行に保険だぜ」


 「そのお金は銀行と保険ギルドのモノよ」

 マリーは男を指差したその指を振り。

 「アンタには一銭も入らないはよ」

 そして、自分のカードを懐からチラリと見せて。

 「因みにだけど、私は給料が出てるけどね」

 ニヤリと笑う。

 「もちろんモンテもね」


 「そうなのか?」

 驚いた男。

 「まあ良い、俺には金貨100枚がある」

 チラリとカード見せて。


 「ナニよ」

 そして、更にニヤリと笑うマリー。

 「そんなはした金」

 フフン。

 「私もモンテもソレ以上よ」


 はした金って!

 「そんなに高給取りなのか?」


 「ロイドなんてもっとよ」

 両手を広げて天を押す仕草のマリー。

 「今や、アンダーライターとして超一流よ」

 そして、男をチラ見。

 「アンタは、リリーにも負けてるわよ」

 

 「貧乏なのはアランとエマとケイトと俺か……」


 フフンとマリー。

 「アランは執事として働いてるから給料も出てるし……エマとケイトはメイドね、三人とも、ボディーガード兼だから、良い稼ぎらしいわ」


 「ルイ家にそんな金が?」


 「そりゃ、潰れ掛けのギルドはもう無いのだし、ウハウハでしょう」


 ソレはそうか。

 その上に。

 「盗賊ギルドはこの間、大金を稼いでいたし……稼いで無いのは俺とジュリアとコツメだけか?」


 「その二人は子供じゃない」

 男を笑い飛ばしたマリー。

 「アンタが小遣いをあげなきゃね」


 くそー、失敗した。

 最初にインセンティブを決めとけば良かった。


 唸る男にマリーが一言。

 「仕事……すれば?」


 


 嫌な現実に凹まされた男は、マリーと別れて仕方なくロイドの所へと向かった。

 仕事を無心するだなんて、情けない事だ。


 

 保険ギルドの入り口の立派な看板と、その扉の横に新しく旗も増えている。

 ベルベットのような高級感の有る生地にカラスとネズミが刺繍されていた。

 なぜに、カラスとネズミ?

 

 よく分からないうちに中に入り、リリーに声を掛ける。

 ロイドは接客中らしい、待たされた。

 アポ無しのいきなりでは仕方ないのか。

 俺の奴隷の癖に、身分の違いをわからせてやろうか?

 だが、その前に格差の違いを痛いほどに味わったのだが……。 


 そのリリーの座るカウンターの端に止まり木が有りソコにカラスが止まっていた。

 その下にはネズミまでが丸く成り寝ている。


 「コレは?」

 男はそれを指差してリリーに尋ねた。


 「マスコットです」

 リリーはニコヤカに返す。

 「通信の為なのですが、そのままカラスがここに居ては変なので理由を着けました」

 旗を指差して。

 「ネズミには保険が掛けられているのでカラスも襲わない……そんな、意味合いの象徴です」

 

 「だから貴方も保険を……か」

 ロイドめ、やっぱりなんか癪に触るヤツだな。


 「稼いで居るらしいな」

 男はチラリとリリーを見た。


 「お陰さまで、忙しくさせて頂いております」

 ニコニコとリリー。


 嫌味が営業スマイルに蹴飛ばされた。

 

 「お待たせしました」

 そして、ロイド登場。

 颯爽とだ!


 「稼いでるらしいな」

 男の再びの攻撃、今度の目標は本命だ。


 「ボチボチと勉強させて頂いております」

 ニヤリ返すロイド。


 関西商人か! イヤ、この返しはわざとだ……完全に返り討ちだ。


 「しかし、本当に忙しい」

 その言葉にリリーも頷いた。


 「今度、国営銀行も出来るぞ」

 フンと鼻を鳴らした男。


 「その話は聞きました」

 ロイドも頷き。

 「ソコで、相談なのですが。人員を増やしたいのです」


 「新規採用か?」

 男は小首を傾げた。

 「募集を掛ければ良いのでは?」

 好きにすれば良いと思う。

 ってか、俺に相談じゃ無くて、ルイ家かマリーだろうにとも思う男だ。


 「出来れば、ゾンビでお願いしたいのです」

 それでもロイドは男に頭を下げた。

 「普通の人間ですと、休みが必要ですので……その点、ゾンビなら不眠不休で24時間働けます」


 ウワー。

 「ブラックだ」

 男は少し腰が引ける思いだった。

 「昔のコマーシャルにあったヤツだ」

 24時間♪働けますか♪……ってヤツだ。


 「何ですか? ソレは」

 首を捻ったロイド。


 ソレは君の事だ。と、ジト目で返す男。


 そして……。

 「あれ?」

 男はふと思う。

 「マリーは寝ているぞ」

 顎にも手を当てて。

 「歩き過ぎると疲れて居るみたいだし」


 「ソレは眠いです、もちろん疲れます」

 ロイドも頷いて。

 「ですが、そのまま動き続ける事が出来るのです……ソコが重要です」


 「寝ないでも?」


 「眠いだけです」


 「疲れても?」


 「疲れるだけです」

 頷き問題有りませんとロイド。


 「ブラックだ……」

 バブル戦士って、もしかしてゾンビだったのか?


 「で、相談なのですが。盗賊ギルドの地下に眠っている者を起こして頂きたいのです」


 「今、居る盗賊じゃ駄目なのか?」


 「今、起きている者は、その殆どが肉体派ですので」

 

 成る程、ソレはそうか、あの時にゾンビにしたのは挑んで来て返り討ちにしたヤツ等ばかりだったし。

 頭脳派の連中は逃げた方で、そのまま地下室か。


 「私からもお願いします」

 リリーだ。

 「私の妹達も、ソコにおりますので」


 「もしかして錬金術師?」


 「はい、卵ですが」

 ニコニコと。


 「わかった、マリーに相談してみる」




 男達はトラックの中にいた。

 目的地は盗賊ギルドの地下室だ。

 

 「本当に大丈夫なのか?」

 男はマリーを見て。


 「大丈夫よ、魔王に成った所でたかが知れてるわ」

 笑ったマリー。

 「それに、アンタが大丈夫かどうかよりも、優秀な人材の方が大事よ」


 うわ、言いきった。

 

 「でも……」

 言い淀むマリー。


 お!

 やっぱり心配してくれているのか?


 「アンタは王様が憎く無いの?」


 違うのか……。

 「別に……」


 「アンタを殺そうとしたヤツでしょう?」


 「そうだな」

 間違いない。

 「今は生きているし、憎いと言う感情は無いな。しかし、チャンスが有るなら殺してやる、それがこの異世界の法なのだろ? 目には目を歯には歯を……法に乗っ取り同じ事を返すだけだ」

 コレは大事な事だ。

 「借りたモノは返す」


 ジット男を見詰めるマリー。

 何かを考え、そして最後に頷いた。

 「今は、その方が有難いわね」

 そのまま見詰め続けた。



 そして、地下室。

 側にはマリーとロイド。

 後ろにはセオドア。

 頭目も居る。

 ジュリアとコツメは外でゴーレム達と遊んでいた。


 「さて、始めようか」

 死体が床に綺麗に寝かされている、その前で男はロイドに尋ねた。

 「順番は有るか?」

 今回の依頼はロイドからだから、頭目では無くてロイドに聞いたのだ。


 「でわ、この者からお願いします」

 ロイドが死体の間を歩き、指を差す。


 男はソコまで行って呪文。

 ゾンビがむくりと動き出す。


 「次は彼を」


 呪文。


 半分程を起こしたところから少し気分が良く成ってきたと感じた男。。

 調子も出てきた。

 次から次へと呪文を唱える。

 そして、最後の一人を起こした時、頭の中でプツリと音がした。

 「フハハハハハー」

 両手を天にかがげて。

 「我は魔王成り」

 仁王立ち。

 「この世界の王にして征服者だ!」


 「狭い地下室の世界だけ、だけどね」

 と、マリーが良い匂いの、例のアレを男に嗅がせた。

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