114 プロローグへと続くエピローグ
薄暗く狭く窓も無い、石で囲われた部屋。
唯一の灯りは、床からの光の光線で描かれた魔方陣。
その真ん中に、片膝を付いた男が、入り口の分厚い木製のドアの側に立っている槍を携えた兵士にユックリと顔を向けた。
男と目が合ったその兵士は、顎を落とし驚愕の表情で、声にならない叫びを残して、左手で支えていた槍を構えようとしたのか? 握り直そうとしたのか? そのどちらでもなくただ慌てたのか? 槍を落とし、床を叩くその音がスターターピストルの号砲がわりかと、部屋を飛び出して走って行った。
床の槍がカラカラと音をたてて、穂先で男を指し示す。
既に魔方陣は消えていた。
男は大きく首を左右に振った。
今の槍の男には覚えが有った。
大臣を人質に国を売ろうとした奴だ。
その槍の男はもう死んでいた……筈。
男は自分の居る場所を確認した。
自分の今の成りも確認する。
そして……気付いた。
「河津の野郎……時間まで戻っているじゃないか!」
いや、まあ考えればそうか。
あの時、ヤツは男達を殺した。
元の世界に戻る為には死が必要条件だったのかも知れない。
そう考えると、奴が殺して歩いていた者達は、元の世界に戻していたのかも知れない。
もしそうなら……ヤツは魔王では無く救世主の方か?
……。
まあいい。
また出会うだろうから、その時に聞いてみよう。
男は考えるのを辞めた。
そうだ……。
そうなのだ。
今を理解した男は眉間にシワを寄せて……頷いた。
俺は、もう一度この異世界を旅するのだ。
記憶と経験と言う……チートを持ってだ!
そして、考える男。
だがそれを生かすなら、極力は同じ行動をせねば為らない。
違う事……変化は未來も変える事に為る。
その変えるべき場所を見極めるのだ!
この世界で生き抜く為にも。
俺に関わる仲間の為にもだ。
そう心で決心した時。
先ほどの兵士と合わせて数人が、男を取り囲み両腕を担ぎ上げて、部屋の外へ、廊下へと引きずり出した。
前回と同じにだった。
兵士達の息遣い、生暖かさ、辺りに響く喧騒と足音。それらが懐かしさと共に、男の決意と覚悟を確実に押し上げていく。
始まりだ。
今一度の物語だ。
引き摺られる男の顔は暗くて見にくいだろうが、それでもよく見ればわかるだろう。
微かに微笑んでいた。
プロローグへ続く。
シュレディンガーのネクロマンサー
たぶん……完
もしかしたら……続く
取り敢えずの完結です。
最後まで読んでくれた方……長い間のお付き合い、有り難う御座いました。
この話は最初にも書きましたが……以前の作品のやり直しです。
以前に指摘されていた文章の書き方を直して見たのだけど……読みやすく成ったのだろうか?
とても不安な作者です。
最終……74点。
物語を変えずに直したのは、文章だけなのだから……。
低い点数に成るのはわかっていたけど……こんなものなのか。
……。
それとも……まだまだ文章が悪い?
それが答えなのだろうか?
次はどうしようか?
余計に悩みが増えた気がする作者です。
喜右衛門




