なろう系?三分間ミステリー(仮)
問題1
俺の名前はサトウ・ガトーショコラ。もちろん偽名である。普通の学生生活に辟易していた俺であったが、トラックにはねられそうになった人を救おうとした結果、身代わりにトラックに跳ねられてしまった間抜けである。そして目覚めると異世界に降り立っていた。
そこは何もかもがほぼ真っ白で潔癖な世界、建物も寝具もありとあらゆるものが清潔感を醸し出している。俺は異物と化してしまった右腕と右足を見るたびに後悔をする。
――まるで何某の錬金術師になったみたいだ。
ぼんやりと変わらぬ景色を見ているとどこからともなく俺を呼ぶ女性の声が聞こえた気がした。
――やれやれ。また何かやっちゃいましたか、ってか?
俺は声が聞こえるほうに足を運ぶのだった。
さて問題。俺はこれから何をするのか?
問題2
俺の名前はサトウ・ガトーショコラ、もちろん偽名ではあるもののあだ名に近い形になってしまっているのは仕方ないのか。
真っ白な異世界から帰還して平凡な日常を送っていたのだが、またしても異世界に迷い込んでしまった。つくづく異世界に縁があるようだ。
今度の異世界は蒸気が常に立ち上り様々な刃物が入り乱れるスチームパンクとでもいうべき危険な世界だ。常に香ばしい香りがいくつもぶつかり合ってはいるものの不思議なことにそれら全てが調和しているのだ。俺はその世界でひたすら水を操り陶器を磨くことに専念していた。その時、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「おい! さっさと済ませろ! 時間がいくらあっても足りないんだぞ」
――なるほど。俺の本気を見せる時が来たようだ…!
では問題。これから俺の見せる本気とは一体何なのか?
問題3
スチームバンクの世界から逃げ出…もとい離脱して現実世界に帰還した俺、サトウ・ガトーショコラは旅に出ていた。そしてまたしても異世界に立ち寄る。
――本当に懲りないな。異世界というのは。
今度の舞台は芸術的な西洋の建築物が並ぶ景色、街並み全てがザ・ファンタジーな異世界である。俺はとある壮大な建物に入場…もとい、通行証を見せて独特の形のゲートをくぐったのはいいが、たちどころにけたたましい警報のようなものが鳴り響く。そこで数人の衛兵に囲まれ言葉を投げかけられるも、この世界の言葉を完全に把握できてはいないので非常に焦ってしまった。俺が困惑していると、衛兵の一人が片言のジャパニーズランゲージを話し始めた。この衛兵は日本に留学していたことがあるのだろうか。
「サトウさん。アナタはテロリストのウタガイがアリマス。ゴ同行オ願イ申シタテアゲマツル事ソウロウ」
「…ヤレヤレ。俺また何かやっちゃいましたか?」
つい口癖になってしまった異世界転生のレジェンドのセリフを恥ずかし気もなく口に出して抗議する。異世界なので別に恥ずかしくはない。
それでは問題。今回俺は何をしてしまったのであろうか。
問題1の答
「サトウさん、リハビリのお時間ですよ。早く準備しましょうね」
「イエスマム! 今日もよろしくお願いします!」
俺の名前は佐藤。下の名前は秘密。今とある病院で、初めての手術、初めての入院生活、初めてのリハビリをしている最中である。まさに異世界。何から何までわからない事尽くしで非常に困惑しているけれども未知の世界に来たようで少し浮かれてしまっていたりいなかったりしている。それにしても退院する日が待ち遠しい。
問題2の答
湧き上がる蒸気の中、俺は高速で手を動かし周囲を圧倒する。
「新入り、相変わらず皿洗いだけは良い腕しているな!」
「ありがとうございます。以前某チェーン店の厨房でバイトをしていたことがありまして…!」
俺の名前は佐藤。高校生の頃からアルバイトに励んでいた男。調理も接客も未熟だったが皿洗いに関しては右に出る者はいないと評判だった男である。そして今現在、初の本格中華料理店でバイトをしている。
「よし、じゃあこっちの皿も全部頼む! うちの店は小皿が多いけど全部任せるぞ」
「」
俺は言葉に詰まる。一人で洗うにはあまりにも不可能な数の食器類を見て愕然としたのだった。ブラックバイトとはこういうのをいうのだろうか……後日俺は異世界から現実世界に帰還する、つまりはバックレることを決意したのだ。
問題3の答
「サトウさん。この度はホントウに申し訳ゴザイマセンでした」
「いえいえ。まさか手術後のボルトが原因とは」
俺は佐藤。美術館の衛兵に納得していただけて何よりだ。某外国の有名美術館にある入館前の金属探知機に引っかかってしまったのだが、反応するような物を持ち合わせていない事に疑問を持たれた。そして外国人であったために入念にチェックを受けるために別室に案内されてしまったわけだ。
――右腕がうずくな…コンチクショウめ…!
トラックにはねられた後のリハビリ生活を思い出し、少しホームシックになる俺であった。そして現実世界である我が国に帰国することを決意したのだ。