表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/90

私、再デビューするわっ!

 

 るんるんるん、と妻が踊っている。


 いつもの茶の間、座卓(テーブル)をはさんだ向こう側で、妻は踊っているのであった。


 糖尿病を重症化させて一時は生命の危機にも直面した妻であったが、一年以上に及ぶリハビリというか、食生活の改善で、驚くべき変化を遂げたのであった。


 なんとっ!体重が13キロも減ったのである!


 四十を過ぎたころから、どんなダイエットに励んでも、一向に落ちる気配のなかった体重が、療養で半年ほどで13キロも落ち、今もまだその体重をキープしているのである。


 体重が落ちた分、左膝の痛みが軽減されたらしく、茶の間で踊る姿も軽快だ。


「くるんくるん、くるる〜ん」


 と、ステップをターンで締めくくって、妻は、両手を横に広げ、決めポーズをとった。


 パチパチパチと、わたしは小さく拍手した。


「ひさしぶりに見たなぁ、おまえのダンス。そんなにーー嬉しかったのかい?」


「ふふん、私がどれだけこの日を待ち侘びていたと思うの?」


 ちっちっちっ、と、妻は右手の人差し指を振った。


「苦節一年半、今日のお昼はようやく外食ができるのよっ!回るお寿司を、ぐいぐい食べることができるのよっ!」


「……あくまで、ほどほどに食べるんだよ?」


「ああ、長かった…食前にインスリンをお腹に打たなきゃならないせいで、外食いっさいりーむーな毎日、そのむなしさといったら…」


「そうだね、つらかったよね、あんなに大好きだった回るお寿司も食べられなくて……テイクアウトでは、食べてたけど……」


「聞けば、回るお寿司界も、私が外食から離れてる間に色々あったみたいねん」


「ああーーいつも行く店も、注文した品しかレーンに流さなくなったそうだーー」


「あなたにも、本当に辛い思いをさせたわね、私に合わせて一切外食をしないでいてくれるなんて…」


「なんの苦労でもないさ、おまえが作ってくれる料理を毎日食べられたんだから……おかげでわたしも5キロほど痩せたよ。先日の健康診断の結果も、良好だったし」


「あなたは5キロ痩せただけだから、ズボンのベルトの穴を調節すれば済む問題だけど、私ときたら!夏服のどれもこれもがダブダブになって着られないのよ!まったく、困っちゃう!」


 困っちゃう!と、言いつつも、妻はどこか嬉しげに見えたりするのは、わたしの気のせいであろうか?


「とにかく、今日は、回るお寿司、再デビューの日ーーっ!!」


 妻は拳を天高く掲げた。


 わたしはうんうん頷いた。涙が出そうだった。

 

 健康面では段々に良くなってきていた妻だったが、メンタルがすっかりやられてしまって、陰陰滅々と、部屋に閉じこもりがちになり、わたしが無理に連れ出す朝の散歩でも、季節の変化などにわたしが感嘆の言葉を述べても、「そうね」としか返してくれず、黙々と歩き続けることが続いた。


 それが、いま、わたしの目の前で、るんるんるんと踊り、我が生涯に一片の悔いなしとばかりに拳を高々と掲げているのだ。本当に、嬉しい。長い冬がやっと明けた気分だ。


「しからば、いざゆかん、決戦の地へ!」


 と、妻が叫ぶ。


「応よ!」

 

 と、わたしが返す。


 やっとわたしたちに、平穏な生活が戻りつつあるのだ。


 それが証拠に、妻は、昨日、一昨日、先一昨日と、異次元転移小説と、18禁BL小説を更新している。


 長い中断を経て、そちらも再デビューというわけだ。めでたい。


 妻の新たな門出、よかったら読んでやってほしい。できたら、ブックマークもしてやってほしい。なんならいいねもしてやってほしい。なんなら感想も欲しいし、レビューも欲しい。


 一皮むけた妻の書く小説は、夫のわたしの欲目抜きで、面白い!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ