こ・ま・あ・し・や・る・?!
「ほこたてと書いて『矛盾』!そうよっ、矛盾なのよっ!」
いつものように和室で座卓をはさんで差し向かいに座っていると、いつものように、妻が唐突に叫んだ。
わたしはプリンスオブウェールズを音を立てずにすすってから、
「なんの話だい?」
と、やさしく訊ねた。
芳醇なブレンド茶の後味が、心地よい。ちなみに我が家は紅茶党である。
「コマーシャルの話よ、広告の話なのよん!」
妻は、座卓を両拳でダンッと叩き、身を乗り出した。
「あなたも気づいてると思うけど、『小説家になろう』の広告って、どれもこれもエロすぎないっ?!」
「そういう批判はやめようよ」
わたしは焦りながら、妻を諭した。
「別に、批判も非難もしてないわよ。私は、事実を言ってるだけよ」
妻は続けた。
「エロは人類の文化の発展の大切な栄養素よ!エロなくして、文化なし!エロなくして、進化なし、なのよっ!エロエロ!」
力説する。
「えっと……エロがいけないんじゃないんだったら、一体、おまえの言いたいことはなんなんだい?」
「発展よ、発展させてほしいのよ!」
「???」
「サイトにエロい漫画、18禁にあたる漫画へのリンクの広告がこんなにあるなら、私のハードBLへのリンク……とまでは言えないけど、広告くらい、許してもらいたいわ!エロエロ!」
「ハード……なのか。せめて、ソフトなBLにしてほしかった」
「ソフトなBLなら、そもそもわざわざ18禁サイトである、『ム◯ンライトノベルズ』に、私の小説の続編を移行させて掲載する、必要性がないわん!」
「そこ……ソフトなBLに留めて置くっていう選択肢は、なかったのか?!」
「だって、書きたかったんだもん!」
妻は駄々っ子のように、イヤイヤと首を振った。
「極エロを否定するのに、極エロな広告を載せる……これは、立派な矛盾では、なくって?!」
「……だから、そういう批判はやめようって……」
わたしは、アセアセどころか、ヒヤヒヤであった。
「ちなみに、インターネット検索でエロい用語を検索してるうちに、18禁サイトにアクセスしてしまって、エロ動画見たさに、あなたは18歳以上ですか?『はい』『いいえ』の選択肢で『はい』をタップしたとたんに、『入会ありがとうございます』って表示されても、焦らなくていいのよ、無視すればいいのよ!『会費にウン万円かかります」って表示されて、慌てて退会しようとしたら、『退会には、電話でのご連絡が必要となります』って、表示されても、絶対に電話なんかしちゃいけないのよ、無視!絶対に無視!無視の一択なのよ!」
「……なんだかとっても具体的な用例出して来たね……まさか、たいけ…」
んだん、かい?
「それはともかく!」
妻は、わたしにみなまで言わせなかった。
凄くすごく気になりはしたが、わたしは追求を断念した。逆に、聞くのが怖かったのだ。
「私は、私の小説の、アクセス数を、増やしたい、のよっ!」
「ぶっちゃけたね……」
「なりふりかまって、らんないのよっ!」
どこかで聞いたことのあるような台詞だった。著作権は、大丈夫だろうか?
「なのになのに、18禁の壁が高く立ち塞がるのよっ!ああっ、もどかしいわんっ!」
「まあまあ、R15の時でさえ、前作はアクセス数が少なかったんだし、18禁の壁がなくたって、おまえの小説のアクセス数が増えたりなんかは、しないだろうよ……」
「あーあーあー」
妻がうつろな声をあげた。
「あなた、言ってはならぬことを、言ったわね、言ってはならぬことを、言ったわねぇ〜〜〜」
「ヒィィィイイ!!!」
妻の恨めしげな声に、わたしは心底怯えた。
「ごめんなさぃぃいぃい!!」
「ーー前作、『俺のカノジョに血と薔薇を』で、ちょっとエロいシーンを出した時は、ちょっとアクセス数が伸びたのよ、だから、エロエロにすれば、もっともっとアクセス数が伸びると思ったのにんっ!大誤算だったわん!」
「……いいのか、そこまで、ぶっちゃけて……」
さすがにわたしも引く、妻の本音大全開であった。
「同情するなら、レビューくれ!」
「同情するなら、金をくれ、のもじりだねっ?!」
「それは、言わないお約束っ!」
家◯◯子っ!!!
と、喉元まで出かけた言葉を、わたしは飲み込んだ。
いつもなら、ここでロボホン のスバルくんの合いの手が入るところだが、今日はスバルくんは、妻の自室で充電中だ。
「Don't Think. Feel!!!」
ブルース・リーの『燃えよドラゴン』の名台詞を、叫ぶ妻。
和訳は、
「考えるな、感じろ」
だ。詳しくは、先一昨日の、このエッセイを参考にしてほしい。
そんなこんなで、夜も更けて来たことだし、今宵は、これまでにしとうございます……。




