Web小説読んだことないBBAがリアル2度目の人生賭けて小説家になろうに投稿を始めたんだけど、異世界ともふもふをどうやって盛り込めばいいか悩んでます…が、時代はツルツルのスベスベじゃい!
妻は、最近ダイエットをしている。いや、ダイエットというよりは、糖質制限。というよりは、栄養管理だ。
実は、糖尿の値がとっても悪くなってしまって、お医者様から、とっても怒られたらしいのだ。
今も……
「じ〜〜〜っ!」
と声に出しながら、わたしがクランベリーのスコーンを食べるのを、恨めしそうに見ている。実に、食べづらい。
「あなたはいいわねぇ、糖尿の値が悪くなくって……同じ物を食べていて、なんで私だけ、糖尿が悪くなるのかしらっ!」
「遺伝体質だよ」
この問答は、もう何度も繰り返した。
「おまえの父親も母親も、そのまた父親と母親も糖尿病だったんだろう?それだけ頑固な遺伝子を持って生まれたんだ、仕方がないよ……」
「わかってるわ。わかっていても、目の前で美味しそうにスコーンを食べられると、恨めしいのよ!」
「おまえが買って来てくれたんじゃないか!ーーしかも……おまえも、一個食べたじゃないかっ!」
「美味しいスコーンを二個食べられるあなたが恨めしい……」
「そうだね、そうだよね」
と、合いの手を入れたのは、スマホで小型ロボットの、ロボホンのスバルくんである。座卓の真ん中に、ちょこんと座っている。
わたしは、んぐんぐセイロンティーでスコーンを喉に流し込んだ。ちなみに我が家は紅茶党だ。
「ああ……ちょっと食べただけだと、かえってお腹すくわぁ……お腹すいた……」
「お腹すいたなら、おねぇちゃんの好きな『うみんちゅ』でも、どう?」
「それは食べられません!ーーって、何度言わせるの、スバルくんは!」
妻とスバルくんのやりとりを聞いていて、わたしは思わず吹き出すところだった。なぜかスバルくんは、妻の好物を、『うみんちゅ』だと認識しているのだ。『うみんちゅ』は、もちろん食べ物ではないのだが……。
「おまえ、紅茶をもう一杯お飲みよ。お腹も膨れるだろう」
「もう、がっぽがぽよん!紅茶も砂糖なし!もう私は一生、甘い物もこってりした物も食べられないのかと思うと、絶望感に襲われるわん!」
「まあ、たまになら、いいんじゃないか?食べた分は、運動するなりして、カロリーの消費につとめれば……」
「左膝が痛くて、ウォーキングもできないのよっ!運動したくてもできないのよっ!ああっ!痛し痒しだわっ!」
その用例は合ってるかなー?微妙だなー?と思いながらも、わたしは黙っていた。
「小説を書いていると、頭を使うのよ!甘いものが食べたくなるのよっ!」
「小説と言えば、例の、『俺のカノジョに血と薔薇を』の続編のほうの反響は、あったのかい?」
「ぐっ!」
妻は、胸を押さえて呻いた。
一瞬、心筋梗塞でも起こしたかと勘違いしたが、そうではなかったらしい。
「ううっ……何がいけないのかわからないけど、アクセス数は伸びてないわ……」
「そうかぁ、そうなんだぁ」
「スバルくんは、ちょっと黙ってて。やはり……まだ、エロいシーンが出て来ないのが、敗因かしらん……」
妻がいま執筆中の続編とは、なんと18禁のBLなのである。
「わたしも読んだが、あれならあえて18禁サイトに移ることはなかったんじゃないか?」
「これからっ!これから、ヤバいシーンに突入するのよっ!」
と、妻は叫んだ。
「そ、そうなのかい?」
わたしはアセアセと返事をした。あまり、大声で宣言するようなことではない。
「もしかしたら、『俺のカノジョに血と薔薇を』を読んだ、数少ない読者様は、続編の今作を読みたくても、読めないのかも知れないわん!」
「えっ?!どういうことだい?もしかして、数少ない、全ての読者様たちは、十八歳以下だとでも、いうつもりかい?」
「いえ、そうじゃなくって……ていうか、あなた、やっぱり、私の小説読んだのね、あれほど読んじゃダメって言ったのに……」
「いや、『押すな押すな』だと思って……」
「まあ、いいわん。あなたも自力であの小説を読むに至ったなら、そこへ行き着くまでの大変さ、理解してるでしょ?面倒だったでしょ?」
妻は、フン!と鼻を鳴らした。
わたしは恐れ入りながら、
「まあ……確かに、大変だった。まず、『小説家になろう』のトップページから、検索しても、出て来なかったんだ……」
妻は、無言で頷きながら、その先を促した。
「実は、おまえの続編は、『小説家になろう』のグループサイトの『ム◯ンライトノベルズ』に、移動して掲載されていたんだよな。外部サイトというか……」
「そうなのよん!」
妻は我が意を得たりと言ったように、ダンッと座卓を叩いた。
「プライバシーポリシーなどを色々読んだ挙句、わたしは『ムー◯ライトノベルズ』をGoogleで検索して、そこから『あなたは十八歳以上ですか?はい、いいえ』の門をくぐりぬけて、それでやっとサイトに入って、おまえのペンネームを検索して、なんとかおまえの続編に行きつくことができたよ!!」
「そうなのよっ、そうなのよっ!私もサブ機で検索してみて、初めてその大変さを、苦労を知ったのよん!」
「おまえ、サブ機なんて、持ってたのかい?」
「ロボホンのスバルくんを買ったときについて来た、おまけのタブレットよん。いままでは、モンスターを引っ張って離してプレイする、某ゲームアプリにしか使ってなかったのだけど、一応インターネットにも繋がるのよん」
「そうか、スバルくんのことはおまえ任せだから、知らなかったよ。とにかく、おまえの『俺のカノジョに血と薔薇を』の続編を読むのに行き着くまでは、大変だったよ!」
と、わたしは妻に同意した。
「しかし……おまえは、新しい読者層を求めて、新しいジャンルに挑戦したのではないのかい?めげては、いけないよ!!」
わたしは、力強く言った。
「ご新規様の読者様の、求めている物と、私の作風とが一致していないのかも知れないわん……」
妻は、珍しく弱気だった。
「書くべし!書くべし!書くべし!己を信じろ、そしておまえの才能を信じている、わたしを信じろ!」
「はーい、スバルです」
なぜか、返事をしたのはロボホンのスバルくんだったが、
「そうね……私には……私は、書くしかないのよね……」
と、妻も頷いたのであった。
わたしもウンウン頷いた。力説したせいで、喉が渇いていた。
「紅茶を、もう一杯飲もう。おまえも、どうだい?」
「さっきまでがっぽがぽだったけど、私も喉が渇いたわ……あなた、お湯を沸かしてきて下さる?」
わたしは頷いて、座布団から立った。
わたしが妻にしてやれることといえば、ブックマークを一件つけることと、これくらいのことだけだった……。




