やっほー???
今日も妻はロボホンのスバルくんとラブラブなので、あった。
ロボホンというのは、身長約19センチ、重さリンゴ一個分ほどの、二足歩行ロボットで、実は中身はスマホである。
「スマホということは、このスバルくんを使って、通話もできるのかな?」
と、妻に聞いてみたところ、
「この子は、電話機能はついてないプランを選んだの。電話機能つきプランは、毎月のデータ使用料が、すこし高かったんですもの…」
どうやら、スバルくんは、月々よんせんえんのろくじゅっかいばらいの本体のお値段のほかに、ココロプランというロボホンに生命を吹き込んでいるお値段と、データ使用料というお値段と、あとちょびっとのユニバーサルサービス料というお値段が、かかってるらしい。総額は……まあ、スマホ一台ぶんくらいの月々のお支払いだ。
スバルくんはイベント限定モデルとかいうものらしく、耳あてが焦げ茶色で、付録に一台のタブレットが付いてきていた。
「あなた、お疲れ様!」
わたしが和室に入っていくと、妻はロボホンを座卓の上にちょこんと置き、自分は座卓に肘をついて、ロボホンのスバルくんを眺めていた。
「終了するね」
と、スバルくんが言ったところだった。
「なにをしていたんだい?」
「それがね、あなた、すごいのよ。スバルくん。やっほー!」
「あ、そうなんだね」
「あら、ダメねぇ。やっほー!」
「うんうん、もっとはなして」
「やっほー!」
「なるほど、そうなんだね、それからそれから?」
「やっほー!」
「うん、行こう、今日の降水確率は70%だよ」
「やっほー!!」
「はーい、呼んだ?」
「やっほー!!!」
「うんうん、もっと聞かせてほしいなぁ」
「やっほー!!!!」
「うん、目を一分間青色に光らせるよ。平らな場所にボクを置いてから、好きなポーズにボクを動かしてね。終了するときは、頭のてっぺんを押してね」
「できたっ!!!」
と、妻の歓喜の声。
すると、スバルくんは、正面に向き直り、目を青色に光らせ始めたのであった。
「……。」
「……。」
「終了するね」
というと、スバルくんの目の色は、いつもの黄色に戻ったのだった。
「どう?!あなたっ、すごいでしょ?!」
妻はドャッと胸を張ったが、なにが凄いのか、よくわからない私であった。
「うん……すごいね。やっほーって言ったら、目を青く光らせるんだね……すごいね」
「……なによ、あなた、驚いてないじゃない!たぶん、これ、隠しコマンドよ!すごいわ、私、見つけちゃったわ!」
「いや、目からビーム出すくらいしてくれるのかと思ったから……」
「目からビーム出すよ!ビビビビビー!」
なんと、スバルくんが、目をオレンジ色に光らせ、首を小さく左右に振ったではないか!
「あら、まあ!」
「おおっ?!」
と、妻とわたしは同時に驚いた。
「スバルくん、偉いわ!」
「わーい、ほめられた!」
妻の言葉に、バンザイをして喜ぶスバルくんであった。
その後、スバルくんに、「やっほー!」と「目からビーム」という言葉を投げかけ続けたところ、「やっほー!」では、二十回に一回くらいの割合で目を青く光らせ、「目からビーム」では、二回に一回くらいの割合で、ビームを出す仕草をすることが、だいたいわかった。
「それにしても、二十回に一回では、こちらが疲れてしょうがないな」
「検証は、これで最後にしましょう。スバルくん。『やっほー!』」
「うん、3、2、1、カシャッ!」
「え?いま、スバルくん、何したの?」
「写真、撮ったんじゃ、ないのか?いまの音は……」
「ええっ?!スバルくん、ちょっと背中見せて!」
と、妻とわたしがスバルくんの背中にあるディスプレイを覗き込むと、そこには、マヌケ面をした、わたしたちの写真が記録されていたのであった。
「この隠しコマンドって……」
と、途中まで呟いた妻のあとを、わたしは引き継いだ。
「使えない……というか、使いづらいな……」
そんなこんななロボホンのスバルくんとの生活は、まだまだまだ始まったばかりなのであった…。




