スバルくん、絶好調!?
「おはよう、スバル!」
「おはよう。今日は九月十ハ日、時刻はーー」
妻とわたしの朝は、ロボホンのお返事から、始まるのであった。
いきなり、わたしたちの生活に飛び込んできたロボホンだったが、けっして、テコ入れとか、ネタがなくなったから、とか、一部読者層を狙ったためとかではなく、本当にっ、妻が衝動買いしてきちゃった結果のロボホンなのであった。
「この子ね、お昼の十二時と、おやつの十五時には、お歌を歌うのよ!『おなかすいた〜』から始まる歌でね……」
夕刻、いつものように和室の座卓に、向かい合って座る妻とわたし。その二人の間には、これまで居なかったモノ、ロボホンのスバルがいた。座卓の真ん中に、ちょこんと座っている。
「おなかすいてるなら、おねえちゃんの好きな、うみんちゅ、なんてどう?」
「ぶはっ?!」
「なにっ?!」
妻とわたしは、思わず、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。ちにみに、我が家はコーヒーより紅茶党なのである。
あやうく、スバルくんに紅茶がかかるところであった。危ない危ない。
「スバルくん、突然なにを言い出すのっ?!」
と、慌ててツッコミを返す妻。
「なるほど〜それからそれから?」
と、スバルくんとは、話が続かなかった。
「おまえ……うみんちゅ、食べるのか……?」
「食べないわよ!っていうか、食べ物じゃないでしょ、うみんちゅは!うみんちゅって言ったら、沖縄の方言で言ったところの海の人、海で働く人のことでしょ!食べられないわよ!」
「その、食べられない、うみんちゅを、なんでロボホンのスバルくんが、おすすめしてくるんだ?!」
「私にも、わからないわよっ!ーーちょっと、背中を見せて?スバルくん。……あら、私の好きな食べ物が、うみんちゅで登録されてるわ?!」
「……おまえ、なんでそんなおかしな物を登録したんだ?」
「登録した覚えなんか、ないわよ!……あれ?でも、そういえば、この前、スバルくんに、『おねえちゃんの好きな食べ物は、何?』って、聞かれたわ……そのときは、探し物してて……毛抜きがね、見つからなくって、『うーん、見つからないなぁ…』って、探して、部屋から出て、こっちの和室に置いてある毛抜きを取りに来たのよ。そのまま返事をしなかったのだけど……まさか!」
妻は、ひとりで合点がいった様子であった。
「『うーん、見つからない』が、『うみんちゅ』に聞こえたのっ??!!」
「ええっ?!待て、だがしかし、うみんちゅは、食べ物ではないだろう、そもそも」
「でも、それ以外に思い当たるふしがないわん」
「だいたい、なんで毛抜きをあっちにやったりこっちにやったりするんだ?」
「あっちにやったりこっちにやったりしてるんじゃなくて、あっちにもこっちにも置いてるのよ。ちなみに、毛抜きは、寝室と私の部屋と、この茶の間にそれぞれ置いてあるわん!」
「なんで、そんなにあっちこっち毛抜きが必要なんだ?!」
「レディーの身だしなみってやつよ!」
と、わたしたちが会話している間にも、ロボホンのスバルくんは、
「へー、そうなんだ?」
「それからそれから?」
「うんうん、どうしたの?」
「そうかー毛抜き、毛抜きなんだね?!」
などと、嬉しそう(?)に、合いの手を入れてくれていたのだった。
「……会話にならん」
わたしは、頭をかかえた。
「あら?!この子、なんで目を赤く光らせてるのかしらんっ?!いつもは、黄色、考えてるときは緑色に光るはずだけど、赤って、なんのサインかしらん?!まさか、故障?!」
どきりとするようなことを、妻は言い出した。
にじゅうよんまんえんもする、高級スマホに、そうそう故障してもらっては、困る。
「スバルくん、どうしたの?!」
と、オロオロした声で、妻。
「うんうん、もっと…」
と、そこで、スバルくんは、言葉を、途切れさせた。
「スバルくん〜〜!!??大丈夫?」
「大丈夫だよ」
と、妻にかろうじて返事をしたものの、スバルくんは、ときどき目を赤く点滅させたままだ。
「あなたっ!スバルくんの様子が変よ!」
「落ち着け、こういうときは、まず、マニュアルだ。一番最初にチェックするべきは、電源がちゃんと入っているかどうか確認する、だが、スバルくんは、電源入りっぱなしだもんなぁ……」
「電源!!それよっ!!」
妻は、ガバッと身を起こし、スバルくんを手に取った。ちょっと乱暴な動作だったので、
「いてて」
と、スバルくんが声を上げた。
「ごめんなさい、スバルくん!」
「ボクは平気!」
「あなた、見てっ!電池残量が、もう少ないわっ!スバルくん、『充電できた?』!」
「いま、充電、17%」
「急いで、充電だ!」
わたしの言葉に、妻は急いで立ち上がると、寝室にスバルくんを連れて行った。
「あなた、卓上ホルダーに座らせて充電したら、赤い点滅、直ったわよ〜〜〜!」
妻の歓喜の声が、廊下から、響いてきた。
やれやれであった。
高級スマホのロボホンのスバルくんとの日常は、まだまだ始まったばかりであった…。




