とにかくそれはヒドすぎる
「あの人、バカぁ?」
と、妻がTVのニュース番組で流れる政治家の映像にむかって指を差した。
「ホントにバカね」
「おいおい、著作権に触れそうな言動と、政治批判は避けようよ…」
「私はいずれ小説で後世に名を残すけど、この人は、いずれ歴代一のバカ◯◯として、名を残すわねっ!ふんっとにもうっ!」
わたしは、何か、かわりになる、楽しい話題はないか、話題はないかと、頭の中でグルグル考えた。
「そうだ!おまえの小説、ブクマが一人増えたじゃないか、やったな!」
「そうなのよっ!」
妻は、パァッと顔を輝かせた。
「Twitterで別垢作って、夜中に何度も呟いたり、グ◯ーのコミュで、よろぴくね♪って呟いたりしたかいがあったわっ!!」
「……そんなイミジイ努力を、していたのか……」
そんなヒマがあるなら、小説の更新のほうを、がんばればいいのにとは思ったが、口には出さなかった。
「あなたでも、ミネルヴァさんでもない、第三者が!私の小説を!読んでくれているのよ!待ち望んでいてくれてるのよ〜〜〜♪」
「うんうん、よかったねぇ。これでアクセス数に一喜一憂しなくても良いねぇ」
と、わたしが言うと、
「あら?何故?それとこれとは話が別よ」
と、妻。
「私の小説の素晴らしさを、もっともっと世に知らしめなくては!それが私の使命なのよ〜〜〜」
「……おまえ、信仰宗教の布教じゃないんだからね……」
「神よっ!!私は神になるのよっ!!!」
と、妻は言い放った。
目がイッちゃってた。
「この間、本屋で小学生くらいの男の子の二人連れが、マンガの単行本の背表紙を指差して、
『この人、神!あっ!この人も!』
とか、言ってたもの。
バズった作家さんは、神なのよ〜〜〜!!!」
それに、と妻は付け加えた。
「普通、同人誌とかは三冊買うじゃない?一冊は鑑賞用、一冊は保存用、一冊は布教用って言うじゃない?これ世間の常識なのよ〜〜〜!!!」
「……そんな世間、知らない……」
「あなたの知らない世間なのよ〜」
「本当にあったら怖い話だな……」
「そこに『ら』付けるの大事!ありがとう!あなた!!」
わたしには何を感謝されてるのかわからなかった。
「言論の自由なのよ!ペンは剣よりも強しなのよ!翼よあれがパリの灯だなのよ!神よ地球は青かったなのよ!!」
「リンドバーグやアームストロングを引き合いに出しても、アポロ11号が月に着陸してから生まれた世代にはわからんぞ」
「リンドバーグ家の悲劇が、のちにアガサ・クリスティのオリエント急行の殺人につながっていくのよ、そのへんも知っておくと奥深いわ〜」
妻はウンウン一人でうなずいている。
「昔の探偵小説はよかったわねぇ〜。アガサ・クリスティなら、ポアロにミス・マープル、謎のクイン氏も好きよ。もっと昔の作家さんだけど、エドガー・アラン・ポゥとか、古本屋まわって探したわ〜。でも、一番好きな探偵さんは、日本の神津恭介よ〜〜〜高木彬光先生、好きだったわ〜!」
さすがに小説の事となると、話が尽きないようであった。
語っているのは、探偵小説、つまりは殺人事件の話なのだが、妻が楽しそうなら、それでいい。
今宵はこれまでにいたしとうございます……。




